福祉・医療事業:福祉施設においての賠償問題を考える

近年日本は少子高齢化が進み、それに伴って社会福祉を取り巻く環境が大きく変化しています。
社会福祉法人である施設の担う役割も今後はさらに大きくなることが予想され、運営リスクも高まる傾向にあるでしょう。このような状況で損害補償の役割が重要度を増している状況です。


施設で起きる事故の種類
老人施設で起きる事故は、その7割が転倒・転落によるものです。それに合わせて誤嚥による事故の割合も高い傾向です。
他にも人や物との接触、衝突による創傷、介助中の圧迫による打撲や骨折、入浴中の火傷などの事故も起きています。
施設での事故はどの場所で起きる?
事故が起きる場所は、多くが居室ですがベッドから降りる時やトイレへ向かう時に転倒や転落してしまうケースが多く、設備体制を整備することが事故を防止することに繋がります。
また、居室以外でも、トイレ、食堂、廊下、玄関、浴室などで事故が発生しています。
事故が起きれば全て施設の責任?
高齢者は一般的に転倒しやすいため、事故が起きたから全て施設が責任を負う必要があるとは限りません。
誤嚥事故と同じように、利用者側に過失はなかったのか、または利用者が罹患していた疾病が事故に影響したかどうかを検討することになります。
利用者の状況についての申告は正しく行われていたか
また、車椅子や杖、見守り体制などについて家族が同意していたかもポイントになります。
施設利用者の状態を最も知っているのはやはり家族ですので、介助方法は家族の判断を反映させていることもあります。その場合には利用者側の過失と判断される可能性もあります。
例えば施設を利用する際、自宅や他の施設で転倒した事実がある場合には、家族から正しく申告が行われていたかを確認することになります。

・既往症による転倒のしやすさがポイントに
年齢よりも疾患や既往症などで転倒しやすい要素についての申告は行われていたかがポイントになるでしょう。
脳疾患などを患っている場合には、年齢以上に転倒が起きやすい状況ですが、申告が正しく行われていなければ利用者側に一定の過失が認められることになります。

・利用者側の要因分を控除して賠償するケースもある
また、治療が長期化する骨粗鬆症などの既往症などの有無も確認が必要です。
賠償責任を認めても、利用者側に何らかの要因があり治療期間が延びたという場合には、その影響分は控除した上での賠償を行うことになるでしょう。
転倒事故は一気に重篤な状態を招くことも
高齢者が転倒事故を起こしてしまうと、一気に骨折してしまい重傷化することが多くなります。
歩行が可能だった人でもたちまち寝たきり状態となってしまい、他の疾患を誘発して重篤な状態になる可能性も否定できません。
いざ事故が起きた時のための備えを
賠償責任の有無についての判断は、徹底した原因調査が必要です。転倒した原因次第で賠償責任の有無は異なりますし、責任があったとしても重さも異なります。
もしも事故が発生してしまった時、近くにいるスタッフが落ち着いて対応することができるように日常から訓練や研修などを実践することも必要です。
フローチャートやマニュアルなどを作成しておき、迅速に対応できるようにしておきましょう。