社員の健康管理は会社の責任

日本の企業では、社員の健康については「自己管理」という考え方が一般的とされてきました。
しかし、昨今社会問題となっている、残業の多さや労働時間の長さによる精神的な病気や自殺の増加に伴い、社員の健康管理責任は会社にあるという考え方に変化してきました。
企業には、どのような事が求められるのでしょうか?

なぜ、社員の健康管理が会社の責任となったのか?

社員の健康管理について、自己責任から会社の責任となったのは、どのような経緯によるのでしょうか?
会社の責任となった経緯から確認してみましょう。

労働に関しての基本的な事項について定めた、労働契約法という法律が2008年に施行されました。
これは、労働において発生する裁判などの判例に根拠を持たせるような内容がまとめられているのですが、位置づけとしては民法特別法にあたり、違反したからといって罰則などはありません。

しかし、裁判において、この法律に背いていると判断された場合は、敗訴となる可能性が高いため、基本的には守らざるを得ないものとなります。
つまりは、これまで裁判官の判断に任されていた部分が明文化され、法律になったということになります。

この中で、企業の安全配慮義務についての記載があります。
企業は、従業員が働く上で生命や身体の安全を確保できるよう配慮する義務がある、という事が明文化されているので、社員の健康管理を行う義務があるということになるのです。

この法律が制定された背景には、過剰なノルマや残業、休日出勤などによる長時間労働によって、体調を崩して自殺や過労死をする会社員が増えてきたことがあります。
本人が自覚していないケースも多く、気がついたら精神的に限界となることも多いため、こうした法律によって会社が従業員の健康に配慮することを求めているのです。

しかし、会社にとっても悪いことばかりではありません。
今の時代、社員が自殺などした場合にはブラック企業のレッテルを貼られてしまい、裁判に負けた場合はその悪評がずっとつきまといます。
この法律を守ることで、そうしたリスクを回避することができるのです。

また、社員の体調が悪くなると仕事の効率も落ちてしまいます。
しかし、社員の体調を管理することで生産性の向上ができれば、今よりも多くの仕事をこなすことができるようになるでしょう。

健康管理のために何をするべきか?

社員の健康管理といっても、全社員の生活を四六時中見張って健康指導をするわけではありません。
それでは、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか?

会社が行うべきは、まず定期的な健康診断です。
それによって病気の兆候を早期に発見することで、早期治療が可能となります。
また、病気を予防することにもつながるため、健康診断は必ず実施しましょう。

会社でも座りっぱなしになると病気につながるため、体を動かす機会を作るためのレクリエーション企画なども考えるといいでしょう。
軽い運動がいつでもできる休憩スペースを用意するのも効果的です。

メンタル面の健康を守るためには、まず残業や長時間労働を減らすことが大切です。
どうしても残業が減らせない場合は、仕事量を見直す必要もあるでしょう。
社員のストレスにすぐ気づけるように、気軽に利用できる相談窓口を設置するのも問題の早期発見に役立ちます。

ストレスチェックは一定以上の規模の企業には義務となっていますが、義務ではなくても実施するようにしましょう。
福利厚生の一環として、スポーツジムなどを利用できるようにするのも効果的です。

健康は、損なってからでは対処するのに時間がかかります。
まず、健康を損なわないようにあらかじめ対処することから始めていきましょう。

まとめ

現在では、社員の健康管理は会社の義務であり、経営上でも重要な課題とされています。
その内容は労働契約法に明文化されていて、破っても罰則はないものの、裁判となった時には著しく不利となるため、きちんと順守するようにしましょう。
健康管理は、何かがあってから対処するのではなく、あらかじめ予防しておく方が効率的なので、問題が起こる前に対策しておきましょう。