消費者団体訴訟制度の関係法令が企業法務に与える影響とは?

消費者裁判手続特例法をご存知でしょうか?
経営者であれば、言葉くらいは知っておくべきことですが、関係法令も含めこれらの制度はまだ広く認知されていないように思います。
そこで今回は消費者団体訴訟制度、それに関係する消費者裁判手続特例法について解説させて頂きます。

消費者団体訴訟制度とは

消費者団体訴訟制度とは、内閣総理大臣によって認定された消費者団体が、実際の消費者に変わって事業者を訴訟できる制度です。
通常、民事訴訟というものは消費者本人が事業者を訴訟するものですが、実際は消費者と事業者の間で知り得る情報の質や量に大きな差があることや、訴訟には莫大なコストが発生するため小さな被害の場合にはコストに見合わないこと、個別にトラブルが解消されたとしても同様のトラブルがまた起こってしまうことなどの理由から、内閣総理大臣から認定された消費者団体のみに特別な権限を与えたものです。
消費者団体訴訟制度では、条件を満たした消費者団体が、不当行為を行なった事業者に対して、不特定多数の消費者を代表する形で、差し止めを要求(差し止め制度)することや、消費者の被害の集団的な回復を要求(被害回復)することができます。
また、このように内閣総理大臣に認定された消費者団体が消費者に変わって訴訟することができる法案は消費者裁判手続特例法と呼ばれています。
これらの訴訟は二段階型の訴訟になっており、一段階目は共通義務確認訴訟と呼ばれ、事業者が消費者の財産的被害に対して責任があるかどうかを決定します。ここで勝利すれば、第二段階に進みます。これは対象債権の確定手続きと呼ばれ、言葉の通り事業者が具体的に金銭の支払い義務があるかどうかを判断するものです。

【企業リスクをチェック】

消費者団体訴訟制度が企業法務に与える影響とは?

では、これらの制度は実際企業法務にどれほどの影響を与えるのでしょうか。
結論から言えば、現状大きな影響を与えてはいないでしょう。
この法案を見ると、圧倒的に消費者団体に得があり、利益を獲得するためだけに不必要な訴訟が増える、と懸念する頃もありますが、実際はそのような不必要な訴訟は厳しく取り締まられていることや、消費者団体と言ってもボランティアに近いものですから訴訟の資金が潤沢にある訳ではないため、現状大きなデメリットが企業にとってある訳ではないです。

消費者団体訴訟制度は、過激になりすぎる企業競争の中で、消費者を守るためにできたものだと考えられるため、逆に言えば消費者を考えたマーケティングを行っていれば企業にとって大きなデメリットはないでしょう。