医療の現場/勤務医の加重労働問題

近年、ブラック企業と呼ばれる企業が問題視されていますが、ブラック企業とは企業のコストを削減することを至上命題とすることで末端従業員に劣悪な労働環境で勤務させる企業のことです。
医療業界で働く医師は高給で勝ち組のイメージが強いかもしれませんが、そのような劣悪な環境の中で労働を強いられている勤務医師も多く存在します。


勤務医師の過重労働で成立する日本の医療業界
本当に勤務医師が過労死寸前まで酷使されていると言われているほどの労働環境にあるのかは、「労働政策研究・研修機構」が実施した調査結果を見るとわかります。
勤務医師の1週間の平均労働時間を見ると53.2時間となっており、週5日勤務なら1日10時間以上は働いていることになり、一般労働者の週平均労働時間は約38時間で1日7.6時間ですから2時間以上長いということになるでしょう。
過労死ラインを既に超えている医師が続出?
過労死することが危ぶまれる労働時間は月80時間以上の残業ですので、「1日8時間×月20日=月160時間」に残業80時間を合わせた240時間がギリギリのラインです。これを超えると過労死してしまう危険が高くなります。
月240時間ということは週60時間なので、医師の1週間の平均労働時間を見た場合、60時間以上働く医師は全体の約40.0%に達しており、既に10人に4人が過労死の危険性が高い状態にあると言えるでしょう。
若い男性医師が長時間労働を強いられている?
また、労働時間は年齢や性別も大きな差があり、男性医師の週平均労働時間は20歳代後半85時間、60歳代48時間で、若い医師が長時間労働の環境に置かれているようです。
さらに女性医師は同じ世代の男性医師より勤務時間が短い傾向が高く、20歳代後半の女性医師の週平均労働時間は78時間、60歳代女性医師は40時間です。
一般企業のように勤務体制が整備されない理由
医師は患者の求めがあると治療を行う義務があるので、一般企業の社員と同様な扱いはできません。
救急搬送や入院患者の急変など、夜間から翌早朝まで勤務が必要になり、やっと当直が明けた日もそのまま通常勤務となることは日常茶飯事で、連続30時間勤務や、丸2日間寝ずに仕事をするのは当たり前になっています。
休日もオンコールの当番であればいつ病院から呼び出しが来るかわかりませんので、ゆっくり休むこともできないでしょう。
さらに交替勤務前提の医師数がいないことで、交替で休日を取得することができないことが慣例化してしまっているようです。
このままでは過労死する医師が増える?
勤務医が過重労働で極度の疲労を感じ、突然死や自殺をしてしまうことは大変な問題ですので、医師の健康と医療の安全面を考えるのなら労働時間を制限することが重要です。
医師数は今後充足すると予測されていますが、この将来予測は医師が現状の過労死水準勤務を継続することが前提のもとなので過労死水準労働が改善されるわけではありません。
医師は人の命を助けるために働いているのに、重労働のせいで亡くなってしまうことは避けなくてはなりません。今医療業界で何が必要かを検討して行く必要があるでしょう。