思考と心の多様性を受け入れてこそ組織の力は高まる

経営戦略

現在、日本の企業が組織の力を高めるために必要なものの1つに、思考と心の多様性を受け入れることが挙げられます。
そのために覚えておくべきこととして、ダイバーシティとインクルージョンという考え方があります。
これがどのようなもので、企業にどう生かすべきかを解説します。

ダイバーシティとインクルージョン

最近は、ダイバーシティという言葉を聞くことが増えています。
ダイバーシティというのは、多様性という意味です。
この多様性というのは、様々な事柄に関して使われるものです。

集団においては、人によって年齢や性別、趣味嗜好などに違いがあります。
また、異なる宗教を信仰していることもあるでしょう。
グローバルな視点では、国籍や人種が異なることもあります。

こういった属性の違いがある中で、属性が多種多様に入り混じって人が集まっている状態を、ダイバーシティといいます。
例えば、20代のアメリカ人男性と30代の日本人女性が同じ集団に属しているような状態です。

元々ダイバーシティという言葉が主に使われるのは、雇用機会均等についての説明や、人権問題に言及するときなどでした。
しかし、今は経営戦略の一環としてこの言葉が使われるようになっています。

経営戦略においては、画一的な人材ではなく多様な人材を登用して活用する、という意味で用いられています。
人材に多様性があると、組織の生産性や競争力を高めることにつながるとされているのです。

一方、ダイバーシティと合わせてインクルージョンという言葉もよく聞くようになりました。
これは、日本語にすると「受容」という意味になります。

インクルージョンは、価値観や能力が異なる人々を受け入れて、ともに成長していくことを言います。
多様な人材が集まる中で、共存共栄をしていくことをそういっているのです。

どの国でも、企業が多様性を受け入れることに取り組む際の行動はいくつかの段階に分かれています。
最初の段階が、属性の多様性を認めることです。

そうして、次に行うのが属性の違いによる格差、あるいは差別をなくしていくことです。
アメリカにおいては、人種問題を取り除くことが第一でした。
日本の場合、女性が活躍できる社会を実現することです。

また、多様性というのは目に見えることばかりではありません。
知識や経験、能力などは視覚化するのが難しいものですが、人によって違いがあるのは確かでしょう。

そういった違いによる多様な能力、知識を結びつけることで、生産性の向上やイノベーション創出につなげていくことが求められるのです。
日本では、現在そう言った動きがみられる企業が増えてきています。

しかし、これだけではイノベーションの原動力にはなりません。
多様性を原動力とするには、さらに社員の個々の内面の多様性をお互いに理解して、尊重しあえるような組織風土が必要とされるのです。

内面の多様性とは?

人はそれぞれ、内面に異なる感情や思考を持っています。
それは非常に複雑であり、多種多様なものです。
中には、自分で自覚していない側面がある方もいるでしょう。

例えば、どのような時に喜びを感じるか、あるいは人生の中で最も大切にしたいものは何か、どういったことに怒りを感じるかといった違いがあります。
また、それに加えてなぜそのように感じるようになったか、その背景にも違いがあるでしょう。

海外の先進的な企業では、社員それぞれの情熱や想像力を重要視しています。
お互いの「知」がぶつかり合うこともあるでしょう。
しかし、その対立で気を付けなくてはならないのが、感情的な対立をしないことです。
感情によって対立しても、そこからイノベーションは創出できないのです。

人と組織のパフォーマンスを高めるために必要なのが、仕事とは無関係に思えるような自分の内面を自分で開示して、それをチームメンバーとの会話によって共有していくことが大切なのです。

チームメンバーと自分、それぞれの人間性について理解しあうことで、ストレスを感じることや負の感情を抱いてしまうような機会が減少し、心理的な安全が高まります。
そうすることで、知的な解決が増えていき、激しい意見のぶつかりがいがあったとしてもそのせいで負の感情が生まれるという可能性が少なくなるのです。

インクルージョンの本質は、内面の多様性が重要であることをしっかりと認識して、お互いにその多様性を受容できるように努力していくことです。
海外の企業では、この点を守っているからこそイノベーションが創出されやすいのです。

例えば、グーグルではインクルージョンを推し進めるために「アンコンシャス・バイアストレーニング」を行っています。
これは、無意識の偏見を取り除くために現場のマネージャーが講師となって行っているトレーニングです。

人は、誰でも無意識のうちに、物事を見る際にバイアスがかかります。
その人の性別や立場などを理由として、自分の考えを制約してしまうことがあるのです。
グーグルでは、ユーザーファーストを掲げているのですから、ユーザーのニーズを把握する必要があります。
そのためには、自分のバイアスに気が付かなくてはならないのです。

これに気づき、乗り越えることで相手のニーズをきめ細かく感知できるようになるでしょう。
その他にも、組織内において心理的安全性を確保できるよう、様々な面での調査を行ったり、オフサイトミーティングで多くの時間を自己紹介に費やしたりもしています。

日本人は、特にコミュニケーション下手な側面があるので、このオフサイトミーティングは行うべきでしょう。
特に、多くの人が苦手とするのは、自分の考えや感情を率直に他人へと伝える自己開示です。

日本人は、アメリカなどと比較して多様性が少ないせいでダイバーシティやインクルージョンが企業で進められないと思われがちです。
しかし、アンコンシャス・バイアスを取り除いて日本を見ると、実は多様性に満ちているのです。

日本の企業で働く人は、自分にとって一番大切なものが何か、自分の価値観やビジョンを明らかにしていくプロセスが重要です。
これはダイバーシティに関してではなく、自己実現のためにも重要なのです。

まとめ

ダイバーシティとそれに伴うインクルージョンは、多くの国の組織で重要視されているものです。
日本では、ダイバーシティという言葉は広く認識されるようになっていますが、それをイノベーション創出につなげられている例はまだそれほど多くありません。
多様性を活かすインクルージョンを実現するには、働く人1人1人のトレーニングが大切です。
まずは、アンコンシャス・バイアスに気づいて乗り越えることから始めましょう。