自家消費型太陽光発電は企業にとってメリットはあるのか

経営戦略

近年、多くの家庭や企業では、太陽光発電を導入しています。
かつては売電で注目されていた太陽光発電ですが、今は自家消費型太陽光発電が増えています。
企業にとって、自家消費型太陽光発電を導入することはメリットがあるのでしょうか?
企業にとってのメリットについて、解説します。

自家消費型太陽光発電

太陽光発電は、ソーラーパネルを設置して発電するものです。
一般家庭でも、屋根にソーラーパネルを設置するところは増えています。
そして、企業でも設置しているところが増えているのです。

企業が設置する場合、設置場所は自社ビルの屋上や自社工場、もしくは事業所の屋根などが多いでしょう。
大規模な発電を行う場合は、専用の用地を確保して設置することもあります。

以前は、売電を目的として設置していることが多かったのですが、今は売電よりも自家消費を目的に設置することが増えています。
発電した電力を全て自社の事業者や工場で消費する場合は、自家消費型太陽光発電と呼ばれます。

企業にとってのコスト面でのメリット

自家消費型太陽光発電の導入を検討している企業の中には、「導入することにメリットがあるのか」と悩んでいるところもあるでしょう。
考えられるメリットはいくつかありますが、その中でもまずは分かりやすいコスト面でのメリットから解説します。

まず、電気料金を節約できます。
電気料金には、契約電力による基本料金と、電気使用量に料金単価をかけた電気量料金、そして再生可能エネルギー促進賦課金、通称再エネ賦課金と燃料調整費があります。

この中で、基本料金の削減は難しいでしょう。
契約電力を下げると、いざという時に電力が足りなくなることがあるからです。
削減できるのは、主に電気量料金と再エネ賦課金です。
ちなみに、高圧電力は契約プランではなく、消費電力量に応じてプランが変更されます。

例えば、東京電力の場合は契約電力500kW未満の高圧電力Aの料金プランの電力量料金は、1kWhあたり夏期が17円37銭、その他季は16円24銭です。
年間で580,000kWhを使用した場合、年間の電気量料金はおおよそ9,583,050円です。

自家消費型太陽光発電を設置して、毎月10,000kWh、年間で120,000kWhを発電した場合、東京電力に支払うことになる電力量料金は460,000kWh分で7,600,350円となり、導入前よりも1,982,700円安くなります。

また、再エネ賦課金は現在3.36円なので、これも自家消費している電力量の120,000kWh分、403,200円安くなります。
つまり、年間で合計2,385,900円安くなるのです。

再エネ賦課金は、年々高くなっています。
スタートした2012年の単価は0.22円だったのですが、2015年には1.58円、2016年からは2.25円と2円台になり、2021年には3.36円と、とうとう3円台まで上がってしまいました。

2030年がピークとなると予想されているため、今後も更に高くなっていく可能性があります。
これは、太陽光発電の売電の買い取りに用いられています。

電力量料金に加えて、この分も節約できるのです。
電気料金などの固定費の削減は、多くの企業が取り組んでいるポイントです。
それを削減できるというのは、大きなメリットではないでしょうか。

ただし、コスト面でいえばデメリットもあることに留意してください。
今から設置する場合はもちろんですが、今まで売電用に設置していた企業が自家消費型に切り替える場合でも、売電用の逆潮流回路を外したり逆電力継電器を設置したりといった工事が必要なので、全くのノーコストというわけにはいきません。

自家消費型太陽光発電は、節税になる点もメリットです。
中小企業の場合は、中小企業経営強化税制が適用されるため、発電システムを新規取得して指定された事業に利用した場合は、100%即時償却か取得価額の10%、もしくは7%が法人税から控除されます。

また、中小企業投資促進税制も受けることができます。
この場合は、特別償却として導入初年度に取得費用の30%を償却するか、もしくは資本金3,000万円以下の企業に限り、取得価額の7%を法人税から控除するかを選ぶことができます。

太陽光発電設備が300万円以上の場合は、生産性向上特別措置法が適用されて建屋の固定資産税を3年間ゼロ、もしくは2分の1に軽減できます。
このように、税制面でも多くのメリットがあるのです。

コスト面以外でのメリット

自家消費型太陽光発電にはコスト面以外でもメリットがあります。
そちらを重視する企業も多いでしょう。
コスト面以外のメリットとして、CO2を削減することに繋がるため、企業の評価が高くなるということが挙げられます。

太陽光発電では、CO2を排出することがほとんどありません。
電力会社の場合は火力発電が多いため、その分CO2も輩出するのです。
太陽光発電を導入することは、CO2削減にもつながるのです。

現在はSDGsへの関心が高まっていますが、その中には環境に関するものも含まれています。
SDGsに取り組む企業は評価が高くなるのです。
その点で、企業価値を高める効果もあると言えるでしょう。

また、自家消費型太陽光発電はBCP対策にも効果的です。
BCPは、災害やテロに備える取り組みのことです。
万が一災害などによる大規模停電が起こっても、事業活動を継続して早期復旧ができるようにするのです。

台風や地震などで停電してしまい、事業を継続するのが難しくなった経験がある企業も多いでしょう。
そういった時も、安心して事業を続けることができます。

停電は、一時的なものばかりとは限りません。
送電設備の破損などが伴った場合は、短くても数日、長ければ数週間は停電が続くこともあります。
太陽光発電を導入していれば、その中でいち早く事業を再開できるでしょう。

太陽光パネルを屋上に設置すると、太陽光パネルと屋根の間には隙間が生じます。
それによって、屋根に断熱性が生じるというのもメリットといえるでしょう。
建物の構造によってその効果は異なるのですが、夏場の室温はおおよそ3~5℃ほど抑えることができると言われているのです。

このように、導入することで多くのメリットがあります。
導入に関しては、補助金を受けられるケースもありますので、事前に要件などを確認してみてください。

まとめ

太陽光発電設備を導入して自家消費することには、多くのメリットがあります。
特に、今は省エネや環境保護の関心が高まっているため、企業としても導入することで金銭面以上のメリットがあると考えられるのです。
導入する際は、税制優遇を受けられるか、補助金を利用できるかという点を確認してみましょう。
もしかしたら、メリットがより大きなものとなるかもしれません。