経営者が認知症・・・事業承継の問題

経営戦略

中小企業を中心に、後継者不足に悩む企業が増えています。
そのせいで経営者がなかなか引退できず、高齢化してしまうという問題が生じており、その関係で高齢者が認知症になるという不安が生じています。
ここでは、経営者が認知症になった場合の、事業承継における問題について考えてみましょう。

認知症は他人ごとではない

自らが創業者である経営者の中には、自分が認知症になるわけがない、と考えている人が良く見受けられます。
しかし、認知症というのは決して他人ごとではないのです。

最近、団塊の世代といわれた人々の多くが定年を迎えることとなり、労働者人口が大きく減少することとなりましたが、その団塊の世代が75歳以上になる頃には、およそ5人に1人が認知症になるといわれています。

その数字を聞いて、自分は大丈夫といえる人に根拠があるとしたら、認知症は精力的に活動している人はなりにくい、というイメージでしょう。
しかし、実際にはそんなことはありません。

認知症は、精力的に活動している場合は脳に刺激が与えられるため、なりにくいと思っている人が多いのですが、実際には症状が進行しにくいというだけです。
たとえ、刺激の多い生活を送っている人であっても、認知症になるときはなるのです。

認知症は、初期症状としては物忘れが多くなる、精密な動作が難しくなるなど、ただの加齢の影響だと思われがちです。
そのため、初期症状では気づきにくく、気がついたら症状が進行してしまうのです。

症状が進行してくると、冷静な判断ができなくなったり、記憶のつながりが途切れてしまったりすることもあります。
例えば、お風呂に入りながらパソコン作業をするのが当然のように思えたりもするのです。

その状態で、事業の経営をするというのは無理があるでしょう。
しかし、認知症になってから事業承継をするというのも、様々な問題があるのです。

事業承継は認知症になる前から準備を

認知症となってから事業承継を進めようと思った場合、スムーズに進めることができるのはあらかじめ後継者が決まっている場合だけでしょう。
さらに、その事業承継が間違いなく自分の意思だと証明するのも難しくなるため、他にも承継を希望する人がいた場合はトラブルにもなりかねません。

そうなることを防ぐためには、認知症となる前に後継者を定めるか、それが無理な場合は任意後見制度や家族信託などの準備をしておく必要があります。
どちらも、認知症となってしまうとできないので、早めに準備をしておく必要があります。

任意後見制度は、自分が信頼する第三者に後見人となってもらい、財産の管理などを任せるという制度です。
また、家族信託はその任意後見人として家族を指定し、より多くの権限を与えるものです。
いずれも、認知症となる前に契約を結んでおく必要があります。

一方、認知症となってから似たような制度を利用したい場合は、成年後見制度というものがあります。
しかし、成年後見制度の場合は後見人を裁判所が定めるので、信頼できる相手に依頼するというわけにはいきません。
また、財産の維持が目的となるので、事業に関わる判断をすることはないでしょう。

もしも事業承継の準備を全くしないままで認知症となってしまった場合は、従業員や顧客、取引先などに多大な迷惑をかけることとなるでしょう。
そうならないように、常に認知症となった場合の備えをしておく必要がありますね。

まとめ

事業承継は、経営者が認知症となってしまった場合は非常に難しいものとなります。
認知症となった場合、正常な判断をして事業承継をしているのかどうかの判断が難しく、また事業承継に必要な情報などが思い出せなくなることもあるからです。
認知症は、誰もがなる可能性のあるものです。
自分が認知症となってしまっても困ることがないように、事業承継の対策を早めに行っておきましょう。