大手牛丼チェーンの1つである松屋フーズが2025年12月に、「六厘舎」を運営する松富士を買収したことは、外食業界に衝撃を与えました。
同じく大手牛丼チェーンの吉野家も、10年前からラーメン屋の買収を進めているのですが、なぜ牛丼チェーンはラーメン屋を買収するのでしょうか?
具体的な理由について、解説します。
牛丼チェーンの厳しい現状
現在、牛丼チェーンの御三家といわれているのがゼンショーフーズの運営するすき家、吉野家ホールディングスの子会社が運営する吉野家、松屋フーズの運営する松屋です。
しかし、かつては牛丼ひとすじといわれた吉野家でも、現在は牛丼以外のメニューが豊富に揃っています。
すき家も同様にバラエティに富んだメニューもあり、松屋はとんかつやカレー、回転寿司、ラーメン事業、カフェ、パスタなど幅広く展開しているのです。
そして2025年12月に、松屋が松富士を91億円で買収したことが外食業界で大きな話題となり、静かに波紋が広がりました。
既に吉野家ホールディングスは2016年から、有名チェーンのラーメン店を次々と傘下に収めているのです。
今回、松屋は吉野家に遅れること10年、同じようにラーメン店を買収することとなったのですが、なぜ大手牛丼チェーンがラーメン屋を買収するのか疑問に思われています。
牛丼チェーンがラーメンに手を出しているのはなぜかというと、近年牛丼に使用する材料が高騰しているため、牛丼に依存した経営を避けるという思惑があるのです。
牛丼の主な材料である米と牛肉は近年著しく高騰しており、外食の値上がりランキングでも牛丼は過去5年で25.1%の値上がり、上位3位にランクインしています。
吉野家と松屋では、それぞれ牛丼、牛めしの値段を2020年から100円以上値上げしており、500円の壁を超えてしまえば客離れにつながるでしょう。
牛肉は輸入に頼っている以上、世界各国の社会事情や政治などの影響を受けやすく、トランプ政権の緊急輸入制限による関税引き上げも影響しています。
しかし、ラーメンであれば値上がり率は牛丼のおよそ半分と緩やかで、牛丼とは違ってラーメンは1000円の壁もすでに突破している店が多いのです。
また、牛丼よりもトッピングの種類が豊富なので利益や単価をプラスしやすいというのが、ラーメンを買収する大きなメリットとなります。
牛丼は米に牛肉を乗せただけのように見えますが、味がいつでも同じになるように鍋などもデジタル化が進んでいるのです。
また、仕入れに関してもAIを利用することで無駄を削減するなどの工夫をしているため、現在の価格を実現しています。
なお、松屋フーズは業態が多角化しているためラーメンを買収する必要性があるのか疑問に思うかもしれませんが、実はほとんどの業態が米と肉に依存しているのです。
手広く見えて実は経営リスクの分散ができていないため、全く異なる業態のラーメンを2番手、3番手の経営の柱にしようと考えて買収に踏み切りました。
先んじてラーメン店を買収している吉野家ホールディングスではかなり上向きの経営目標を掲げていますが、決して荒唐無稽ではなく現実味を増しています。
松屋も、同業種で成功している例を見ている以上、同様の戦略に踏み切るのは決して悪い手段とは言えないでしょう。
ちなみに、すき家を運営するゼンショーホールディングスは外食産業だけでもファミリーレストランや回転寿司、コーヒー店、ハンバーガーショップなど手広く運営しています。
スーパーマーケットチェーンや介護サービスなども手掛けており、ラーメン店を買収するまでもなく多くの柱があるのです。
今後の松屋の展開は?
松屋は今回の買収に91億円を支払ったのですが、M&Aの相場と比べるとかなり高額になっているといわれています。
松屋フーズでは自社でもラーメン店を立ち上げているのですが、あまりにぎわっているとは言いがたいようなので、ラーメン業界に新規参入するのはかなり難しいのでしょう。
自社のラーメン店を伸ばすよりも、既に有名なラーメン店を買収した方がより早く集客につながると踏んだため、今回高額になってでも買収を進めたのかもしれません。
また、既にラーメン店を買収して業績を伸ばしている吉野家に遅れを取らないため、急いで買収したという見方もあるでしょう。
しかし、六厘舎の創業者である三田氏は「松屋のような会社を作りたい」という思いを抱いており、松屋とも深い縁があります。
松屋フーズの元社長、現在取締役の緑川氏が、松富士の各店舗で指導している様子も、Xにて投稿されていたのです。
つけ麺文化を広めた三田氏は緑川氏に教えを受けている立場だったため、松富士が松屋に買収されたのは必然ともいえます。
松屋は吉野家に10年遅れで牛丼以外の道を模索し始めたのですが、松屋が有利な点としては新規出店の余地があるという点でしょう。
松富士は首都圏以外にほとんど出店していないため、まだ海外への進出はなく大阪にも2店舗しか出店していません。
工場が埼玉県所沢市にあるため、既存店の足場を固めつつ松屋の物流を生かすことができれば全国に出店することも可能となるでしょう。
また、松屋の物件は吉野家と比べて広いところが多いため、松屋からラーメン店へと転換することも難しくありません。
しかし、松富士の懸念点として利益率が約4%となっており、吉野家のラーメン事業の利益率10.8%と比べて低いのです。
売上自体はかなり増えているものの、2023年には赤字に転落しており安定しているとは言いがたい面もあります。
課題となるのは、売り上げの急成長に伴う利益確保と、経営の安定性を増すという点になるでしょう。
お互いの強みを生かすようにして様々な点を改良していくことができれば、すぐに改善できると思われます。
ラーメン店には現在M&A案件が相次いでいる中、松屋フーズは松富士を擁したことでどれほどの相乗効果を発揮して、課題を解決していけるのでしょうか。
まとめ
松屋フーズが松富士を買収した背景には、吉野家が先んじてラーメン店を買収し売り上げを伸ばすことに成功している、という成功例があるということも考えられます。
また、松屋フーズでは独自のラーメン店を開業しているものの、成功しているとは言いがたく伸び悩んでいることから、買収によって巻き返しを図ったとも考えられるでしょう。
今後、松屋フーズは松富士との相乗効果がどれほどになるのか、期待が高まります。


