中小企業の経営者は、迫りくるコロナ融資の返済期限とあきらめ倒産…

その他のリスク

新型コロナウイルスの流行により、経営に大きなダメージを受けた企業は多いでしょう。
そういった中小企業を助けるため、コロナ融資と言われる無利子・無担保融資が用意されたのですが、まだ感染拡大が続く中で返済期限が迫りつつあります。
あきらめ倒産も増えている現在の状況について、解説します。

コロナ融資後の倒産状況

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、売り上げを大きく落とした企業は少なくありません。
そういった企業を対象として始まったのが、ゼロゼロ融資と言われるものです。

これは、コロナ禍によって売り上げが減少した企業を対象として、実質無利子・無担保の融資をするというものです。
当初は日本政策金融公庫や商工組合中央金庫など政府系金融機関で融資していたのですが、利用件数の増大によって対応が間に合わなくなったことから民間金融機関でも受け付けるようになりました。

日本政策金融公庫の場合は、条件を満たすことで個人事業主や零細企業であれば最大6千万円、中小企業には最大3億円まで実質無利子での融資を行います。
もし返済が滞った場合は、元本の8割、もしくは全額を信用保証協会が肩代わりしてくれます。

信用保証協会は、政府の財源を裏付けとしています。
また、利子については各都道府県が補給します。
設備資金は最長20年、運転資金は最長15年借りることができ、最も長い場合は最初の5年間元本の返済が免除となります。

ゼロゼロ融資は、2022年9月末に受付を終了しました。
それまでの融資実績は42兆円になり、来春から企業の返済が本格的に始まる見込みなのですが、融資を受けてからすでに倒産している企業は少なくありません。

融資を受けてから倒産したコロナ融資後倒産の件数は、2020年7月からは毎月2件ほどのペースでした。
しかし、2021年に入ってからはそのペースがかなり早くなり、10件以上倒産した月も珍しくありません。

2021年8月には、累計倒産件数が100件を超えました。
そして、2022年2月までの累計では200件を超え、210件となったのです。
2022年4月から9月の間では、202件が倒産しました。

倒産した企業の内訳をみると、小売業や製造業、卸売業などが多く、特に飲食店の倒産件数が半数近くを占めています。
それに伴い、製造業や卸売業も食品関係の企業が倒産したケースが多くなっています。

倒産した企業はなぜ、あきらめたのか

多くの中小企業が倒産したことで、その企業が利用したゼロゼロ融資の返済は絶望的になるでしょう。
その場合は信用保証協会が肩代わりすることになるのですが、公的機関であり財源は政府なので、結局は公的な負担となるのです。

企業の中には、資金繰りがどうしても上手くいかず、やむなく倒産してしまったところももちろんあります。
しかし、これ以上負債を増やす前にと諦めて倒産してしまったところもあるのです。

なぜ諦めてしまったのかと言えば、まずは長く続くコロナ禍があります。
一時的に収束しかけたかと思えば再び流行し、新種も発見されるなど終わりが見えないコロナ禍の中、無理をしてまで続ける意義を見出せなくなった企業も多いでしょう。

感染拡大については、様々な対策が行われてきました。
緊急事態宣言を何度も行い人流抑制を行い、ワクチンの接種もかなり進みはしたものの、根本的な解決には至らなかったのです。

それに加えて、物価高も企業に大きなダメージを与えています。
2022年に入ってから続く円安、海外から輸入される資源やエネルギーの高騰、更に木材なども高騰して、財務内容が悪化した企業はかなり多いでしょう。

原材料費が高騰したとしても、それを製品価格に反映できるとは限りません。
下請けの企業は、原材料費が上がったから製品価格も上げて欲しいと親会社に請求することはできないのです。

そして、物価高について政府は何らかの対策をしているのでしょうか?
ゼロゼロ融資を受けた企業は、追加で融資を受けるというのが難しい状態です。
民間金融機関に融資を申し込んだとしても、状況が好転する未来が見えなければ意味はないでしょう。

中小企業庁では、中小企業を対象として従業員規模に応じて原油価格・物価高騰等緊急対策枠の融資を最大4000万円まで行っています。
しかし、これはゼロゼロ融資と同じく借金でしかないため、いずれは返済しなくてはいけません。

ゼロゼロ融資で借りられるだけ借りていて、さらにこの中小企業庁からの融資を受けたとしても、それで利益が出なければ返済することはできません。
現状が打破されない限り、利益を出すのが難しい企業は多いのです。

政府は、雇用調整助成金なども定めて企業の経営を助けようとはしています。
しかし、コロナ禍が続く中で物価の高騰、円安などが重なったことで、多くの企業は今後の見通しが立たなくなっているのです。

そして、現状ではコロナ融資の返済が始まったとしても、返済できるめどが立ちません。
その結果、企業はこれ以上負債を膨らませないようにと倒産の道を選ぶのです。
こういった倒産が、あきらめ型倒産と言われます。

企業の倒産は、その企業だけに影響するものではありません。
取引先も売掛金の回収や売り上げの低下などにつながるため、連鎖倒産する可能性があります。

すでに受けた融資については、返済できなければ焦げ付いてしまうだけです。
その状況で経営を続けることはできないため、負債が増えないうちに倒産の道を選ぶというのは、決して間違いではありません。

政府としては、融資した資金を無事に返済してもらいたいのであれば、更なる助力をしていく必要があります。
中小企業の倒産を食い止めるため、融資を増やす以外のてこ入れについて考えていくべきでしょう。

まとめ

コロナ対策として行われたゼロゼロ融資は、倒産の危機にあった中小企業にとっては大きな助けとなったでしょう。
しかし、予想に反して状況が好転しなかったことで、倒産する道を選ばざるを得なくなったところも多いのです。
コロナ禍以外にも、物価高や円安などが重なったことも原因でしょう。
これから返済期限が近付くにつれて、倒産する企業はさらに増えるのではないかと予想されます。