コロナ渦で借入金返済、元本返済の据え置き期間が過ぎて中小企業の資金繰りは?

その他のリスク

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの企業が資金繰りを悪化させました。
その対策として、借入金の返済や元本返済には据置期間が設けられています。
しかし、その期間が過ぎてしまうと、中小企業の資金繰りはどうなってしまうのでしょうか?
今後の資金繰りの見通しについて、解説します。

コロナ禍による据置期間

新型コロナウイルスの感染拡大によって、飲食店は休業を余儀なくされ、東京都をはじめとした大都市で緊急事態宣言が出されるなど、人々の行動には大きな制限が課されることになりました。

そんな中で、売上を伸ばした企業もあります。
お取り寄せやおうち時間の活用、需要が増大したマスクの製造など、この時代にマッチしたサービスを提供できた企業は逆境をばねにして大きく発展することができました。

しかし、そういった企業はごく一部です。
それ以外の企業は、売上も落ち込んで一気に資金繰りが悪化してしまうことも珍しくありません。

今まで売り上げが好調だったのに、コロナ禍によっていきなり10分の1まで落ち込んだ、という企業もあります。
そういった企業は、資金調達のために借入金を増やすことも多かったのです。

政府でも、この事態は重く受け止めています。
その対策として、借入金の返済、もしくは元本返済に据置期間を設けました。
すべての借入金が対象ではありませんが、一定期間返済ができなくてもいい、などのルールを制定したのです。

例えば、日本政策金融公庫では新型コロナウイルスの感染拡大によって売り上げの減少などがみられた事業者に対しては、新型コロナウイルス感染症特別貸付という制度を用意しました。
一定の条件に該当する事業者に対して、据置期間を設けて貸し付けを行うのです。

融資限度額は6億円で、利率は基準利率です。
返済期間は用途によって異なり、運転資金であれば15年以内、設備資金であれば20年以内となっています。

そして、それぞれ5年間の据置期間が設けられているのです。
その期間、元本の返済は不要となります。
また、最初の3年間は利子が補給されるため金利負担は実質的になくなるのです。

この他には、商工中金による危機対応融資というものもあります。
返済期間や据置期間は上記と同様で、金利が当初3年間、基準金利から0.9%引かれた割合となるのです。
既往債務がある場合、借り換えも可能です。

セーフティネット貸付の要件緩和も行われました。
これは、元々3年間の据置期間があり、運転資金は8年以内、設備資金は15年以内という返済期限が定められている貸付です。

緩和された点は、本来であれば一時的に売り上げの減少など業況が悪化していて中期的には回復・発展すると思われる中小企業者を対象としていたのが、コロナ禍では数値要件に関わらず今後影響を受けると思われる事業者も含めて、融資対象としています。

また、日本政策金融公庫への申し込みが殺到したことで、民間金融機関でも実質無利子・無担保のうえ最大5年の据置期間があり、保険料も減免される融資を行っています。
この制度では、融資金額が基本6,000万円以内、返済期間は10年間となっています。

中小企業の今後の資金繰り

新型コロナウイルスの感染拡大は落ち着きを見せていますが、変異株やオミクロン株なども発見されているため、今後も予断を許さない状況といえるでしょう。
そんな中、据置期間が終了した場合の中小企業の資金繰りはどうなるのでしょうか?

2020年度の資金調達額は、前年度比で1.6倍となる約139兆円でした。
これの目的は、業績悪化に伴う外部資金の調達や、配当額や人件費を削減して内部資金を確保することなどがあります。

起業の収益は、昨年より回復しているところが多くなっているのですが、コロナ禍以前の水準まで戻っているかといえば、ほとんどはそこまで回復していないのです。
あくまでも、最悪よりはましという状態です。

オミクロン株の感染者はまだちらほらとしかいないのですが、今後の動き次第では再び感染者が増大して緊急事態宣言が出され、人々の消費も鈍くなる可能性は十分にあるでしょう。

また、世界的な半導体不足の影響で、ゲーム機やパソコン、車などの製造が困難になって、売上を落としているところもあります。
そういった企業も、据置期間が過ぎると厳しくなるでしょう。

資金繰りを悪化させないために

資金繰りを悪化させないためには、まず業績を改善して売り上げを伸ばすことが考えられます。
また、不足した場合は財産の処分や別途借り入れを行うなどの対策が必要です。
では、借りた資金は将来に備えて残しておくべきなのでしょうか?

それは、あまりいい方法とは言えません。
ただ残しておくために借りても、無駄になってしまうのです。
それよりは、将来のために使うようにしましょう。

例えば、その資金を設備投資に使って今後必要とされるものを開発すれば、売上を伸ばすことも可能です。
その資金で、将来に向けての準備を行うのです。

資金を増やすには、動かしておくのが一番です。
適切に運用すれば、資金はどんどんと増やすことが可能となるのです。
どう使うのが最も効果的なのか、よく検討した上で投資しましょう。

また、場合によっては補助金を受け取ることも可能です。
補助金は返済の必要がないので、条件さえ満たすことができれば問題なく受け取ることができます。

資金繰りに困ってしまった場合は、返済できなくなる前に日本政策金融公庫などの借入元に相談してみましょう。
そういった人が多ければ、何らかの救済措置等も用意されている可能性があります。

まとめ

中小企業は、それほど多くの資金を保有していることあまり多くありません。
そのため、新型コロナウイルス感染症特別貸付などの様に、資金を貸し付けてもらえる制度は非常に重要です。
据置期間があるとはいえ、返済が始まる前に何ヶ月分かの返済ができる資金を用意しておかなければ、その後はすぐに返済が滞ることになるかもしれません。
そうならないように、別の資金調達方法についてもよく考えておき、据置期間が過ぎたとしてもあわてないようにしましょう。