バイトテロ対策を考える

事業運営リスク

最近では、SNSが普及したことでコメントだけではなく、様々な画像や動画を不特定多数へと気軽に配信できるようになりました。
その中で増えているのが、アルバイトによる不適切な投稿、いわゆるバイトテロです。
企業は、バイトテロに対してどのような対策をするべきでしょうか?

バイトテロとは

時折、ニュースなどに登場しているバイトテロという話題ですが、これはどのようなものなのでしょうか?
まずはバイトテロについて知っておきましょう。

バイトテロは、主にコンビニエンスストアや飲食店などで起こります。
深夜、あるいは閉店後など、人がいない時間帯にアルバイトが不適切な行為をして、それを画像や動画でSNSなどを通じて配信する、というものです。

例えば、コンビニでは廃棄予定の食品を床に落とし、それをまた棚に戻してみたり、口に含んで吐き出してみたり、といった行為が目立ちます。
ひどい時には、服を脱いで商品ケースに入る画像などもあります。

飲食店でも、同様に食品を粗末に扱って、それをあたかも客に出しているかのように見せる様子を写真や画像に収め、配信しています。
これらの問題は、本人に悪気が無いという点です。

この行為をしている本人としては、これから捨てるものだから多少遊んでも問題はないだろう、これから清掃するから問題ないだろうという考えで行っています。
そこには、別に店を貶めようという悪意は含まれていません。

しかし、その画像を見ている方としては、この店では落としたものを売っているのではないか、もしくはゴミ箱に入れたものを拾って調理しているのではないか、といったイメージを植え付けられてしまいます。
実際に、そのせいで閉店に追い込まれた店舗もあります。

バイトテロという概念が広まり、これが悪いことだと分かったにもかかわらず、未だに同様のニュースが流れることがあります。
これは、承認欲求を満たしたいという人がいるからです。

SNSなどで投稿していても、よほどのことがない限りはそれを見る人というのはごくわずかです。
実際の友人だけということも多いでしょう。
しかし、それでは満足できない人が、多くの人に注目されたいと考えるのです。

しかし、よほどのことがない限り、注目されたいからといってそうなるものではありません。
ではどうするかというと、他の人がなかなか撮れないような画像を撮って投稿しようと思うのです。
その際にターゲットとなるのが、バイト先のお店なのです。

バイト先にある、捨てるものを使って遊ぶというのは、店員にしかできません。
これまでのバイトテロのニュースを聞いたことがあっても、実行する人は実行します。
それは、その人がやりすぎたせいであって、自分は加減をするから大丈夫という安易な考えと、本質を理解しないまま行うからです。

もちろん、大半の人はきちんと理解しているからやりません。
しかし、それを理解しない人は、これなら目立つのではないか、という考えから、バイトテロに及ぶこととなります。

バイトテロというのは、注目されるキーワードです。
ですから、その写真が投稿された直後はその人のSNSに注目が集まり、承認欲求も満たされるでしょう。
しかしその代償として待っているのは、被害を受けた企業からの損害賠償や世間からの非難です。

バイトテロというのは、アルバイトの立場の従業員が起こします。
それは、何かあっても首になる程度だろうからという軽い考えで行うからです。
バイトテロを防ぐために、企業が行うべき対策を考えてみましょう。

有効な対策は?

バイトテロを防ぐ為に有効な対策とは、どういったものでしょうか?
また、すでにバイトテロが起こってしまった場合には、どのような対処をするべきでしょうか。

まず、バイトテロを防ぐ為に有効なのが、従業員の持つ意識を変えることです。
多くの店舗では、アルバイトに対する教育というのは業務を進める上で必要なことだけとなっていて、社員教育のように研修などを行ってはいません。

しかし、アルバイトでも社員と同様に研修などを行うことで、その企業の一員であるという意識が芽生えます。
その意識があれば、あえて自分からその企業の不利益になるようなことをしようとは思わないでしょう。

また、バイト先をクビになりたくないと思わせるためには、単純な方法ですが賃金を高くするというのも有効です。
バイトテロを行うとクビになるというのは誰もが承知しているので、条件がいいバイト先ならクビになりたいとは思わないでしょう。

職場の人間関係を良好に保つことも、バイトテロの対策になります。
仲のいい人がいれば、その人の迷惑になるようなことはしないようにと思うでしょう。
特に店長に対して好印象を持っていれば、迷惑になるバイトテロなどは起こさなくなるはずです。

後は、一般常識をきちんと教えておくことが大切です。
バイトテロといわれる行為は、一般常識から考えて不適切といわれる行動ばかりです。
これが悪いことだというのをしっかりと教えることでも、十分に対策となり得ます。

実際にバイトテロが起こってしまった企業の対応として、「くら寿司」の対応が注目を集めています。
くら寿司では、2019年2月にバイトテロが発生したのですが、それに対しての迅速な対応を行っています。

くら寿司で起こったのは、魚を一旦ごみ箱に捨ててから、その魚を拾ってまな板に乗せるという動画の投稿です。
あたかも、ゴミ箱から拾った魚を調理して客に提供しているかのような動画であったため、不快な思いをした人も多いでしょう。

このバイトテロに対して、くら寿司では該当する従業員を特定し、ヒアリングを行って事実関係を確認した後、その従業員を懲戒解雇しました。
それだけではなく、刑事および民事訴訟の準備を始めています。

これは、自社が被った損害だけではなく、多発する不適切行動の投稿に対して一石を投じるためという目的もあり、軽い気持ちで行ったことが大事になってしまうというのを全国的に知らしめるための措置としています。

それだけではなく、今後は全従業員を対象とした勉強会を定期的に開催して、バイトテロだけではなく顧客情報の保護などについても同時に研修していく方針を示しています。
バイトテロについては、実際に起こったバイトテロとその顛末についても説明していくとしています。

また、今後バイトテロができないように、厨房へとスマートフォンや携帯を持ち込めないように、従業員に金属探知機を使用した検査を行うとしています。
ここまで徹底した対策を行ったことについて、ネット上では肯定的な意見が増えています。

バイトテロというのは、どうしても本人に罪の意識が薄いため、これくらい徹底しなければ再発を防止するのが難しいかもしれません。
とはいえ、常に全従業員を見張っていることはできないので、やはり有効となるのは従業員それぞれの意識を改革して、バイトテロを起こそうという気持ちを持たせないことでしょう。

そのためには、企業としてもアルバイトを軽く扱わず、きちんと教育をしていくことが大切になります。
企業と従業員、双方の意識を変えていき、バイトテロが起こらないようにしていきましょう。

まとめ

バイトテロというのは、それを起こす人にとっては軽い気持ちでしかなく、罪の意識すらも持っていない事が多いのですが、それによって企業が受けるダメージは時として深刻なものになりかねません。
バイトテロを防ぐには、物理的な対策よりも意識改革が重要となります。
従業員が、自主的にバイトテロをするべきではないと思えるように、企業もしっかりと研修などを行って教育していきましょう。