企業の経営において、リスクは少なからず生じるものです。
しかし、昔と比べると今はそのリスクが多様化しています。
そして、その多様化のスピードは加速しつつあるのです。
企業を取り巻くリスクがどのように多様化しているのか、解説します。
昔と今の変化
そもそも、企業を取り巻く環境というのは、どのように変化してきたのでしょうか?
まずは、昔と今で変化してきた点について、解説します。
今となっては当たり前のものでも、昔はなかったものが多いのです。
まず、社会的に大きな変化をもたらしたものと言えば、インターネットの普及です。
現在はほとんどの人が当たり前に使用しているインターネットも、昔はありませんでした。
今では、どの企業でもインターネットを少なからず利用しているでしょう。
日本でインターネットが開始されたのは、1984年のことです。
しかし、当時はごく一部でしか使われず、一般ではほぼ普及していませんでした。
民間で使われ始めたのは、1994年頃からでしょう。
その後、Windows95が発売された1995年には、インターネットという言葉が一般的に知られるようになりました。
それでも、インターネットの人口普及率はまだ3%前後でした。
その後、Windows98が登場した1998年には、インターネット普及率も13%を超えていました。
そして、1999年にADSLが登場し、高速の回線が使い放題となったこともあり、20%以上が利用するようになったのです。
また、携帯電話でインターネットに接続できるようになったのもこの頃です。
企業でインターネットの導入が進められたのも、この時期でしょう。
ホームページを開設する企業も増え、今まで以上に多くの人に自社のことを知ってもらえるようになりました。
IT革命と言われた2000年になると、ネット銀行も登場しています。
行政やビジネスでのIT活用も加速し、内閣官房にはIT戦略本部も設置されました。
また、IT基本法も制定されています。
2003年には一般家庭向けの光回線も登場し、インターネット人口普及率も60%を超えました。
また、この年に個人情報保護法が成立しています。
今は欠かせないツールとなり、流行を生み出す元となっているSNSですが、その古参であるmixiが登場したのは2004年です。
現在主に使われている、FacebookやTwitterなどのSNSが日本語版サービスを開始したのは、それから4年遅れの2008年です。
その後も多くのサービスが展開され、インターネットを利用する人も増えました。
2013年には、80%を超えています。
ちなみに、iPhoneが日本で発売されたのは2008年で、これがスマートフォン普及のきっかけとなりました。
このようにインターネットが普及しましたが、同時にパソコンも企業の事業経営において重要な役割を持つようになります。
パソコンも、全く使用していない会社はほとんどないでしょう。
パソコンを使用するようになったことで、多くの作業はパソコンに切り替わりました。
文書の作成はもちろん、経理などの計算も表計算ソフトや会計ソフトを使用することが多くなっています。
また、製図などはそれまで手書きだったものが、CADソフトを使用するようになったところも多いでしょう。
紙ベースだった書類も、データによる保管に切り替えている企業が増えています。
パソコンの導入により、効率化もかなり進みました。
インターネットの普及に伴って、データの送受信も瞬時に行えるようになり、海外との取引もスムーズになったでしょう。
こうして便利になった反面、多くのリスクも生み出す原因にもなっています。
急速に多様化するリスク
インターネットやパソコンの普及が進み、企業を取り巻く環境は大きく変化しました。
また、以前と比較して企業責任も厳格になっています。
その変化に伴って、企業リスクも変化し、多様化しているのです。
例えば、以前からあるリスクとしては政治や経済等に関係する戦略リスク、資金調達や与信などの財務リスク、自然災害や事故によって起こるハザードリスク、そして人為的ミスや法務などによるオペレーショナルリスクがあります。
リスクの分類としてはその4つになるのですが、内容に様々な点が追加されています。
例えば、戦略リスクでは風評に関して、以前であればメディアの報道にだけ注意していれば良かったのです。
しかし、今は個人もSNSで情報を発信できるため、個人による風評も注意しなくてはいけません。
財務リスクについては、高度経済成長期から変化した点として貸し倒れなどを心配しなくてはいけなくなりました。
また、資金調達も以前より困難となっているでしょう。
ハザードリスクでは、現在その真っただ中にいる新型コロナウイルスの感染拡大への対策が注目されます。
この対策を怠ってしまうと、多くの非難を浴びる可能性があり戦略リスクにも繋がります。
ハザードリスクにはもう一つ、大きな変化があります。
それは、サイバー攻撃です。
ハッキングやウイルス攻撃などを受ける可能性があるため、その対策が必要となります。
それを怠ると、取引先などへも影響を及ぼし、自社のシステムダウンにもつながるなど被害が拡大する可能性が高いでしょう。
また、高性能で複雑になった機械は操作ミスや誤作動などの危険性も伴います。
オペレーショナルリスクでは、特に労務面でハラスメント等のリスクが増えています。
現在、セクハラだけではなくパワハラ、アルハラ、モラハラなど、多くのハラスメントがあります。
それを知らないと、何気ない言動でハラスメントとなり、訴えられる可能性もあるのです。
その他、超過労働による労働災害、メンタルヘルス不調なども注目されています。
特に、過労死となると働き方に問題がなかったか、会社からはどのような命令が出されていたかなどを詳しく調べられるでしょう。
例え問題がなくても、そういった調査が入ったという時点で企業イメージはマイナスになります。
このように、昔と比較して多くのリスクが登場しています。
そして、今後はさらに多様なリスクが発生するようになると考えられているのです。
そういった時、企業が生き残るためにはあらかじめリスクを想定し、その対策をしなくてはならないでしょう。
まとめ
企業経営において、リスクの対策は必須です。
リスクが多様化してきた現在では、全てに対策を練るのは非常に困難でしょう。
そして、今後はリスクの多様化もさらに加速し、より多くのリスクが生じると思われます。
その中で無事に経営をしていくには、リスクの分析や把握、そして自社に起こり得るリスクへの対策をしておかなくてはいけません。
すべてのリスクではなく、怒る可能性の高いリスクから対策していきましょう。