福祉・医療事業:第7次医療法の改正による理事や監事の責任

平成28年9月1日より施行された第7次医療法の改正で、医療法人の理事と監事の責任について明文化されています。定款に焦点を当てた改正となっていますので、今一度内容を確認しておくようにしましょう。


理事会の職務について
理事会の職務は、医療法人の業務遂行、理事の職務の執行の監督、理事長の選任及び解職です。
理事の職務の執行の監督に関して、利益相反行為についての規定がされています。理事は、自己又は第三者のための医療法人との取引、医療法人の事業の部類に属する取引といった、競業及び利益相反取引を行う場合、理事会で取引について重要な事実を開示し承認を受ける必要があります。

・医療法人の事業の部類に属する取引とは?
競業避止取引とも呼ばれていますが、理事が行う取引と医療法人事業が競業する場合を指しています。
本来であれば理事がわざわざ他の医療法人の売上のために働くことはないでしょうから、例えばメディカル・サービス法人の取締役であるケースなどが該当します。

・医療法人との取引とは?
具体的なケースとして、理事が医療法人の使用する土地と建物の所有者であり、それを医療法人に売却することは利益相反に該当します。理事会の承認を得て報告する必要がありますので注意しましょう。
理事の責任について
家族を理事に就任させている医療法人も少なくはありません。医療法人の多くは理事会を家族で占めているというケースもあります。その一方で、第三者の医師を理事にしているケースもあります。
これまで医療法人や院長などが訴訟の対象となるケースは、医療事故や医療過誤によるものが多く見られていました。しかし第7次医療法の改正により、理事が第三者から経営者責任を問われることが明文化されています。
経営者の責任とは
例えば理事会の開催を多くが家族で占めた経営なのだからと開催しなかった場合、第三者から訴訟されれば定款に従って理事会が開催され議事録が作成されていたのか経営者としての責任を問われることになります。
理事会は過去に遡って開催することはできません。医療法や定款に従って理事会が開催されていなければ裁判になった場合には不利です。
家族を理事に入れることは訴訟に巻き込むリスクを抱えることにもなるため、医療法人で勤務する医師や従業員を就任という形も増えるかもしれません。
しかし勤務する医師や従業員が全くの第三者であれば、人間関係を円滑にしておかないと理事を辞めたあとに訴訟を起こされる可能性も否定できないかもしれません。
監事の責任も明確化
責任が明確にされているのは理事だけではなく監事も同様です。監事は家族や顧問税理士といった利害関係のある人が就任できないことから、友人などに頼むことが多かったでしょう。
しかし監事は決算書の確認業務のみで印鑑は院長に預けたまま、理事会にも出席していないという場合、第三者に訴訟を起こされれば責任追及されます。
理事や監事の責任について理解しておくこと
このように医療法人の抱えるリスクは、第7次医療法の改正によって厳しいものになっています。病院を経営している場合には、これらのことを踏まえてリスク対策を行っておくようにしましょう。