高市政権のもとで、長年の財政規律の方針を大きく転換して強い経済を実現するためのロードマップとなる「骨太の方針2026」が閣議決定されたのです。
改革の基本方針や経済財政運営などが起点から異例となる展開をたどり、従来の方針から大きく変化しているのです。
骨太の方針2026について、詳しく解説します。
骨太の方針2026の全体像
「骨太の方針2026」は、正式名称を「経済財政運営と改革の基本方針2026 『責任ある積極財政』元年 ~日本の挑戦を起動する!~」というものです。
今回の骨太の方針は単独の文書ではなく、同時に閣議決定された2つの戦略と一体不可分な「3本の柱」として構成されています。
冒頭で触れられている問題意識は日本の潜在成長率、つまり経済が持つ本来成長できる力が先進国諸国と比べて長年の投資不足が原因で低迷しているという点です。
そして、世界では市場に任せるだけでは解決で着ない課題があれば官民が連携して、大規模で長期的な財政支出を伴う産業政策が主流になっていることも述べています。
経済財政運営そのものの大きな転換となる点についての認識が、骨太の方針2026の考え方の根本となっているのです。
そして、3本の柱は骨太の方針だけではなく、同日に閣議決定された「日本成長戦略」と「地域未来戦略」がセットになっています。
骨太の方針2026の1本目の柱となるのは、国全体のお金と経済運営の基本方針についてです。
1本目の柱から続く2本目の柱となるのは日本成長戦略で、どの産業分野をどう伸ばすかを定めた産業方針となります。
3本目の柱は地域未来戦略であり、成長の果実を地方でどのように具体化、実行するかを定めた地方創生方針です。
3本の柱を通じて政府は官民の資金を呼び込み、長年のデフレや投資不足によって停滞していた日本の潜在成長率を根本から引き上げることを狙っています。
最大の焦点となるのは財政運営目標の歴史的大転換で、今までの日本の財政運営はプライマリーバランスの黒字化が絶対的なブレーキとして機能してきたのです。
プライマリーバランスは毎年度の歳入と歳出のバランスを示したもので、従来であれば単年度の黒字化を最優先してきました。
しかし、従来の仕組みでは予算に一律のシーリングがかかってしまい長期投資が停滞していたため、骨太の方針2026では根本から見直すことになったのです。
2026年からは政府債務残高の安定的低下を中核目標に設定し、GDPを大きくして借金の比率を下げて単年度の赤字は複数年で管理することになりました。
方針転換をすることになったため、単年度の黒字化時期を機械的に追い求める必要はなくなるのです。
経済の規模を示す名目GDPを成長させることで相対的に国債の重みを減らしていくという、攻めの財政へとシフトしたことになります。
PB、GDP、純利払い費、財政収支等が債務残高対GDP比に与える寄与を分析して、財政の持続可能性の確保に取り組むようにするというのも新たな方針です。
特に注目されるべき点は純利払い費も含まれていることで、純利払い費というのはネットの利払い費のことをいいます。
ネットの利払い費とは、政府や企業などが支払う総利息から保有している金融資産などで得られる受取利息を差し引いた、正味の利子負担額のことです。
日本政府の利払い負担はG7諸国の中で最も軽いのですが、今後注目されるようになれば負担に変化があるかもしれません。
ちなみに、令和九年度の通年国債発行額については「市場の信認確保に配意しつつ」とあるため、財務省は緊縮を推進しようとするでしょう。
予算づくりのルールも変化
「責任ある積極財政」を具体化するため、従来の在英単年度主義だった予算づくりのルールにもメスが入れられました。
まず、各省庁が予算を要求する際の一律のシーリングを設けない、「強く豊かな日本」投資枠という新しい投資枠が創設されたのです。
新たな投資枠の創設によって民間企業は「来年以降も国から継続して予算が出る」という長期的な見通しを持てるようになり、官民の連携した大規模な投資がしやすくなります。
また、従来は当初予算を低く抑えて秋や冬に巨額の補正予算を組むことで帳尻を合わせる、歪んだ財政が常態化していたことは有名です。
2026年の方針では、補正予算は本当に緊急性の高いものだけに限定して当初予算を中心とした健全な予算編成への回帰を明記しています。
2027年度から2040年度までの長期的な中長期経済財政計画も策定され、AI、半導体、GXなど17の戦略分野に累計で370兆円規模の官民投資を目指すことになるでしょう。
暮らしと社会保障に関しては、少子高齢化に対応するために持続可能な社会保障制度への抜本改革も掲げられています。
今後増大していくと思われる現役世代の保険料負担上昇を抑制するため、2027年度の社会保障負担率を2025年度比で増やさない方針が示されたのです。
高齢者の窓口負担の見直しも掲げられ、年齢だけではなく所得や資産に応じた応能負担の原則を強化して負担の見直しを進めます。
最低賃金も引き上げに取り組む方針で、2030年代前半のできる限り早期に全国平均1,500円を達成するという目標を掲げたのです。
従来の方針と比べて財政規律はかなり緩和される点が多いのですが、財政規律の緩和は市場の信認を失うリスクを秘めています。
プライマリーバランスの単年度黒字化目標を凍結すると国債の乱発や金利急騰を招く懸念があるため、将来的な財政の健全化策が課題です。
また、成長投資が想定通り、あるいはさらに上の成果を出すことができれば問題ありませんが、想定通り成果を出せなければ巨額の借金が残る可能性も指摘されています。
まとめ
骨太の方針2026は同日に閣議決定された「日本成長戦略」「地域未来戦略」と併せた3本の柱として構成されていて、日本の潜在成長率を根本から引き揚げようとしているのです。
最大の焦点となるのはプライマリーバランスに関する方向転換で、単年度の黒字化より借金の比率を下げることを中核目標に掲げて攻めの財政にシフトしています。
成長投資にも力を入れて、持続可能な社会保障制度の抜本改革も掲げ、多くの点が変化するのです。


