ナフサ不足問題について

その他

現在、ホルムズ海峡が封鎖されたことで原油の輸入が困難となり、特にナフサの供給が激減したことで大きな問題となっています。
ナフサはプラスチックや合成樹脂など様々な製品の基礎材料であり、現在供給不足に伴い国内での価格が暴騰しているのです。
ナフサ不足問題の概要について、解説します。

ナフサ不足の影響

ナフサというのは原油を蒸留する際に取り出される沸点が30〜180℃程度の軽質油のことで、粗製ガソリンとも呼ばれますが、燃料のガソリンとは全く別のものです。
ナフサはエネルギーとして燃やすためではなく、石油化学工業の原料となって現代文明のあらゆるプラスチック製品に姿を変えます。

ナフサが原料となるもので特に身近なのは自動車のバンパーや内装材などの部品、家電の筐体、注射器や透析回路、点滴バッグなどの医療機器です。
レジ袋やごみ袋、ラップ、洗剤、ポリ容器、パイプ、食品容器、ペットボトルなどにもナフサの供給不足が起こっています。

特に深刻なのが建設や塗装の現場で、シンナーもナフサを原料としているのですがメーカーで出荷を制限したり値上げしたりしているのです。
フリマサイトでは、16リットル入りの一斗缶が通常は5,000円前後ですが、現在は2万円以上の価格で転売されているケースもあります。

断熱材や樹脂サッシ、防水シートなどもナフサを原料としていて、断熱材は40%の値上げ、塩ビ管は1kgあたり30円以上値上げされているのです。
戸建て住宅の建築費も値上げされていますが、建材メーカーでも在庫に影響が出ているところが増えているため、建築自体が難しくなる可能性もあります。

様々な分野で不足することで最終的に家計の負担が増し、試算によると年間2.3~3.5万円の負担増となるのです。
ガソリンの高騰も問題となっていますが、ナフサ不足はガソリン不足と原因は同じでも問題の本質は大きく異なります。

エネルギー価格の上昇は、消費者であれば節約はするものの高くても買うという選択肢自体はあるでしょう。
しかし、ナフサ不足によって特定の素材が欠けてしまえば、製品自体が完成しないためそもそも買うという選択肢が消えてしまいます。

実際にTOTOではナフサから作られている溶剤が不足したため、4月13日から住宅向けのユニットバスの受注を停止しているのです。
ナフサ不足が起こった構造的な問題は日本が中東の原油に依存し過ぎていたことで、今までは95%以上を中東から輸入していました。

特にアラブ首長国連邦とサウジアラビアからそれぞれ40%前後を輸入していたため、日本にはホルムズ海峡を通過して運ばれていたのです。
輸入ナフサも中東からの輸入が74%、国産ナフサの原料も中東からの原油がほとんどだったため、実質としては80%以上を中東に依存していたということになります。

また、備蓄の非対称性も致命的な欠陥となっていて、昨年末の日本の石油は国家と民間の合計で254日分の備蓄があったのです。
しかしナフサには備蓄制度がなかったため、民間に約20日分の備蓄があっただけに留まっていて、非対称であったことが混乱を加速させています。

ナフサは石油化学の期間となる材料であり、供給が滞ってしまえば素材産業のすべてが影響を受けることになるのです。
エネルギー不足とは違って代替品への切り替えも短期間ではできないため、有事に備えて国家が備蓄を主導していかなくてはいけません。

また、平時から調達先を多様化させることも、業界と政府が協力して本腰を入れ議論しておくべきでしょう。

ナフサ不足問題の二次被害

ナフサ不足問題がすでに顕在化しているのですが、今後問題が解決されないまま進んでいくとどのような二次被害が起こると予想されるか、解説します。

まずインフレの質的変化が起こり、今までのようにエネルギー価格上昇に伴うコストプッシュ型インフレから製品不足による需給ひっ迫型インフレに変化するでしょう。
値段は上がるものの製品自体がある状態とは違い、製品そのものがないためお金を出しても入手できないという事態に陥ってしまいます。

特に住宅や自動車の製造ができずに納期が遅延すると個人消費に直接影響を与え、マインドが冷え込んで内需全体を圧迫することになるのです。
ゴミ袋や食品保存袋などはポリエチレンでできていますが、5月下旬からは30$以上値上げされることが見込まれています。

食品トレーの発泡ポリスチレンシートは4月下旬から1kgあたり120円値上がりすると見込まれるなど、食品関連コストが上昇してスーパーでの値上がりを招くのです。
企業の業績にも二重に影響することになり、素材メーカーは原材料の高騰に苦しんで加工メーカーは生産量の減少が問題となります。

特に、中小企業はコスト転嫁が難しい立ち位置にあるため、収益も圧縮されてしまうでしょう。
今回起こっている混乱を一時的な不運として考え、時間が経てば回復するものと考えるのではなく、日本は産業構造そのものの設計を見直す必要があります。

脱中東と脱ナフサを加速させることは、環境対策だけではなく生存戦略として投資の優先度が高いものとなるのです。
バイオプラスチックや植物由来原料、合成燃料に転換することで、今回のような問題は起こりにくくなります。

他国のホルムズ海峡由来の原油への依存度は、韓国で68%、中国では45%なのに対して殷洪は非常に高くなっているのです。
日本の依存の強さは、他の先進国に先んじて転換していく必要があることを示しています。

また、サプライチェーンを可視化することも急務であり、自社の取引があるサプライヤーだけではなく二次、三次でのサプライヤーも把握することでリスク耐性ができるのです。
政策においては、ナフサを原油と同じく国家で備蓄する対象になるよう制度を設計する必要があります。

現在の20日分の在庫というのは地政学リスクが常態化する中で、見過ごすことはできないでしょう。
ホルムズ海峡が封鎖されている現状がいつ収束するかというのは外交や軍事に関わることで、企業や個人の努力では改善できません。

しかし、危機に瀕した現状を日本の産業構造の脆弱性を克服できる転換点にはできるため、浮き彫りになった問題点を改善する方法を話し合うべきです。

まとめ

現在、ホルムスカイ境の封鎖に伴ってナフサ不足問題が起こっており、日常に使われる石油製品や工業製品などの原材料不足、製品不足が起こっています。
レジ袋やごみ袋などの不足や価格の高騰は家計に大きく影響を及ぼし、製品不足によってTOTOはユニットバスの受注を停止するなどの影響も出ているのです。
問題となるのは原油の中東依存の割合が高すぎることなので、今後依存を減らすよう改善することが求められます。