日本では再生可能エネルギーの普及を加速させるため、今まで大規模太陽光発電、メガソーラーに対して支援をしてきました。
しかし、2027年には支援制度を廃止する方針を固めたと報道され、メガソーラーの未来は大きく変わることになったのです。
メガソーラーの支援を廃止することになった理由について、解説します。
メガソーラー支援の廃止の理由
日本は2011年に発生した東日本大震災以降、原発依存からの脱却などの理由から再生可能エネルギーの導入が重要視されたのです。
特に技術的ハードルが比較的低い太陽光発電は大規模に行われ、メガソーラーを中心として政府でも設備投資の支援を行ってきました。
特に重要な制度がFIT(固定価格買取制度)で、買取価格が保証されているためメガソーラーへの新規参入のハードルが低くなったのです。
さらに設備導入補助金や税制優遇などもあり、高い収益性が見込める投資対象として多くの企業や投資ファンドが積極的に参入してきました。
しかし、近年になってメガソーラー開発には全国で反対運動が起こっており、政府としても社会的圧力が無視できないほど高まっているのです。
住民運動で懸念されている点としては大規模伐採で自然環境が破壊されるという点があり、実際に生態系のバランスが崩れて希少種が減少したという事例もあります。
また、斜面の伐採や地盤の改変などで土砂災害のリスクが増大することも懸念されており、観光地では景観の悪化や生活環境の変化も不安材料となっているのです。
住民に対する説明が不十分というケースもあり、トラブルの原因になりやすいというイメージも着いたため政府も支援がしづらくなってきました。
再生可能エネルギーの普及が優先されていたのは温室効果ガス削減を目指していたという背景もあったのですが、すでに増やす段階ではなく定着を進める段階に変化したのです。
政府内でも問題意識が共有されており、国のエネルギー基本計画や環境配慮ルールの強化などで方向性を示しています。
メガソーラーに依存した政策から、多様な形で再生可能エネルギーを導入する方向へと切り替えていく動きが見えているのです。
また、太陽光発電市場は成熟しており設備価格も10年前から大幅に低下しているため、国が補助しなくても事業化が可能となっています。
太陽光発電事業は国に支えられなくても自立できるようになっているため、支援の終了に踏み切ることとなったのです。
支援が廃止される影響について
メガソーラー支援が廃止された場合は、再エネ市場全体の構造転換も起こる大きな変化につながる可能性があるのですが、具体的にどのような影響があるのか解説します。
太陽光発電事業を行っている企業は、支援の廃止によって特に大きな影響を受けることになるでしょう。
メガソーラー事業はFITによる収益の保証や補助金などを前提として計画を立てているため、支援がなくなると採算モデルを再構築する必要があります。
特に山間部などに大規模開発をしてメガソーラーを設置した場合、支援がないと投資回収期間が長くなってしまうでしょう。
太陽光設備はすでに市場価格が低下していますが、産業用や中小規模の分散型発電であれば事業継続の余地は十分にあります。
企業は大規模発電に依存するのではなく、規模をより効率的にして立地を転換する必要などがあるのです。
電力会社はメガソーラーの急増に運用の変更が間に合わず、太陽光発電の不安定さによって需給バランスの調整が難しくなりました。
支援が廃止されたことで今後増加しづらくなった場合は、電力会社も安定して調整する事ができるようになるでしょう。
再エネの導入量と安定供給のバランスがとりやすくなり、既に容量がいっぱいになってきている地域もあったので容量問題も改善されるかもしれません。
地域住民にとっては、支援廃止によってメガソーラー開発を巡る地域トラブルが減少する可能性があるため、メリットは大きいでしょう。
今までにも多くのトラブルが起こって社会問題になっており、住民の不安をはじめとした様々な課題が顕在化してきました。
支援が廃止となれば大規模事業が成立しにくくなるため、安易な森林伐採や無秩序な開発が抑制される可能性があるのです。
制度の廃止によって地域の自然環境や観光資源が守られ、過去に生じたような対立構造は緩和されやすくなります。
また、自治体も独自のルールを定めて土地の利用を管理したり小規模型の分散エネルギーを推進したりすることが可能となり、地域の実情に合わせて進めることができるのです。
地方自治体は今まで、メガソーラー開発を主導する立場ではなくあくまでも許認可を出すかどうかの最終的な判断を行っていました。
しかし、支援廃止によって土地の利用に関する独自のルールを定め再エネの導入方針も主導的に設計できるようになるのです。
自治体には、森林・農地などの土地利用の優先順位の明確化や災害リスク評価の厳格化などが求められるようになります。
また、防災配慮型・分散型エネルギーの導入支援、地域新電力との連携による再エネの地産地消モデルの構築なども求められるでしょう。
FITに伴う再エネ賦課金は国民の電気料金に上乗せされる形で徴収されており、大型太陽光の導入を続ければこの賦課金は上昇し続けていました。
支援廃止は、中長期的には国民負担を抑制する方向に働くとみられていますが、再生エネルギーの導入が大きく滞った場合は電気料金が変動しやすくなるでしょう。
事業者と電力会社、地域住民、自治体、消費者のすべてに影響をもたらす重大な政策変更となります。
採算性の変化、開発リスクの低下など様々な影響が生じるので、今後は大規模中心から地域に根ざした分散型への転換が進むことになるでしょう。
まとめ
再生可能エネルギーの普及に大きく役立ってきたメガソーラーですが、今までメガソーラー事業者はFITによる安定した買取価格を事業の軸としていました。
しかし、支援制度が廃止となることで今後は事業の形態などにも変化が訪れることになると思われ、大規模よりも中小規模が必要とされるようになるでしょう。
地方自治体に求められる役割にも変化が起こるようになり、単なる許認可の最終判断者ではなく積極的な関与が求められるでしょう。

