従来の紙の保険証は2025年12月1日で廃止となり、今後はマイナンバーカードと一体化したマイナ保険証が必要となります。
現在は自治体の発行する資格確認書でも保険証の代わりとなりますが、マイナ保険証の手続をしていない人は不安になるでしょう。
紙の保険証が廃止されたことでどのような変化があるのか、解説します。
紙の保険証が廃止になったのはなぜ?
病院に行くとき、今までであれば紙やカード型の保険証を窓口に提出すれば、保険適用の治療を受けることができたでしょう。
しかし、2025年12月1日で今までの健康保険証は廃止となり、代わりにマイナンバーカードと紐づけたマイナ保険証が必要となります。
また、マイナンバーカードを持っていない人やまだ紐づけていない人は自治体が資格確認書を発行しているため、窓口で提示すれば保険診療を受けることができるのです。
しかし、資格確認書は暫定的な対応なので現在は最長5年以内となっており、以降は利用できなくなる可能性があります。
なぜ紙の保険証が廃止になったのかというと、今までであれば医療機関では医療保険の資格確認のため、非常に多くの手間や時間がかかっていたのです。
しかし、マイナ保険証になるとカードリーダーにかざせばオンラインで資格情報の照会ができるようになるため、とても簡単になります。
薬の処方履歴や健診結果などを基にした正確なデータを取得でき、診察や薬の処方に役立てることができるため、医療の質も向上するでしょう。
特に救急医療において患者の健康や医療データの活用ができるというのは大きなメリットで、顔認証によって本人確認もできるためなりすましも防ぐことができます。
保険や医療、介護などで発生するデータを全体的な基盤クラウドを通じて業務内容を外部化、共通化することができるため、医療DXも推進することができるでしょう。
医療DXによって、すべての国民が良質な医療、ケアを受けることができるようになり、社会や生活の形なども変化していきます。
マイナ保険証による医療DXの推進とは
総務省の発表では、2024年8月の時点でマイナンバーカードの申請は人口の8割以上になっているのです。
また、政府側でもマイナ保険証の普及を進める取り組みを強化しており、ポスターを掲示する病院や薬局に支援金を出しました。
また、2024年度の診療報酬改定の際は医療DX推進体制整備加算を新設しており、マイナ保険証の利用率に応じて医療機関に点数をプラスしているのです。
医療DXを推進するための具体的な施策は、マイナンバーカードと保険証の一体化を加速していくだけではありません。
他にも「全国医療情報プラットフォームの構築」と「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」という3つの施策があるのです。
プラットフォームの構築は、クラウド技術を活用して全国の医療関係者間で必要なデータを共有するために必要な仕組みとなっています。
利用することで、かかりつけの病院や薬局以外でもマイナ保険証の提示によってスムーズに全国の医療機関を利用できるのです。
また、電子カルテ情報の標準化は標準規格を定めて普及させる取り組みのことで、医療機関の間でデータの共有や交換をスムーズに行えるようになります。
安全性が高く効率的な規格を定めて実現できれば、診療の信頼性や正確性が向上し、診察にかかる時間も短縮できるようになるでしょう。
診療報酬改定DXは、2年ごとに実施される診療報酬改定の短期間での対応のため、ベンダーや医療機関に生じる業務負荷やコストを軽減する取り組みとなります。
実現した場合、医療従事者は本来の業務に集中することができ、システム改修の財務負担も軽減されて院内設備への投資が進み、手厚い医療サービスを実現できるでしょう。
現在は、マイナンバーカードの電子証明書をスマホに搭載するサービスも進められており、将来的にはマイナ保険証もスマホで利用できるようになります。
医療DXの推進は医療機関に多くのメリットがあるのですが、医療従事者の年齢層の違いによってデジタル格差が発生することも懸念されています。
医療DXの恩恵を受けるために必要となるのが、医療現場でのデジタル人材の教育、育成という点です。
また、昨今では医療機関を標的としてランサムウェア攻撃が行われることも増えているため、個人情報を守るための厳重なセキュリティ管理も必要となります。
医療DXが推進されて全国の医療情報プラットフォームが構築されるときは、信頼のおけるパートナーの選定などより厳重なセキュリティ管理が必須となるでしょう。
また、院内システムの整備も必要となるためコストの調達も課題の1つとなりますが、コストに関しては国による医療機関向けの各種補助金制度の拡充がカギとなります。
まだまだ多くの課題は残されているものの、無事にクリアすることができれば医療DXが一般的になって誰でも恩恵を受けられるようになるでしょう。
医療DXが推進されるメリットには、医療現場における大きな課題となっている人材不足を解消するためのアプローチが可能になるという点があります。
医療現場では稼働が増えて人材が不足してしまうため、現状を打開するための働き方改革の推進によって担当人材を確保する必要があるのです。
マイナ保険証を導入してオンライン資格確認等システムや電子カルテなども扱い始めることで、医療現場は大きく変化します。
さらにITの積極的な導入や利活用による業務効率化も推進していくことで、利用現場の働き方改革を後押ししていくことができるでしょう。
医療現場のDX化は従来の業務内容からの変化による一時的な効率の低下を嫌がる人もいますが、順次切り替えていくことで効率の低下は最小限に抑えられます。
導入前には講習による変更点の周知徹底やマニュアルの用意などが必要になりますが、現状の問題点を放置しないためにも医療DXは必要となるのです。
まとめ
従来の保険証からマイナ保険証に切り替わることで戸惑う人も多いのですが、マイナ保険証への切り替えは医療DXの推進のために必要となります。
医療DXは医療データのデジタル化による資格情報のオンライン確認や各医療機関でのデータ共有、電子カルテの共有などが可能となるシステムです。
医療DXが推進されればかかりつけ以外の病院でも待たされることなく診察を受けられ、過去の処方についても保管されます。


