ガーシーにも適用⁉︎不逮捕特権について

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2022年7月に参議院議員選挙で当選したガーシーこと東谷義和議員ですが、その後ドバイに滞在して一度も国会には登院していません。
それは逮捕を恐れているからと言われているものの、2023年3月には帰国して出席するとコメントしています。
国会議員の不逮捕特権は、ガーシーにも適用されるのでしょうか?

不逮捕特権とは?

国会議員には、衆議院と参議院を問わず国会の会期中は逮捕されないという不逮捕特権があるということは、多くの人が知っているでしょう。
しかし、具体的にはどのようなことなのかはご存じでしょうか?

国会議員の不逮捕特権は、日本国憲法第50条に定められているものです。
憲法なので、法律よりも優先的に適用されるのです。
そのため、いくら法律違反を犯していても、逮捕されることはありません。

また、この不逮捕特権にはすでに逮捕されているケースも含まれ、国会議員は原則として国会の会期中は逮捕されないというだけではなく、逮捕されたのが会期前であっても議員の要求を受けた場合は、一時的に釈放しなくてはならない、とも定められています。

また、ここでの逮捕というのは刑事訴訟法で定義されている逮捕よりも更に広い意味で使われていて、行政措置上身柄の拘束が必要となった場合も含まれます。
そしてこの特権の趣旨は、国会議員の活動や両議院の自律性を保障することです。

歴史上、君主が議会において自身の反対派に回った議員を逮捕したり、政府が権力によって議員の職務執行を妨害するために逮捕したりといった例は、枚挙にいとまがありません。
そういった反省から、特権が認められるようになったのです。

これは大日本帝国憲法下でも認められており、議会が開会している間に議員を逮捕する場合は特別な勅令が必要だったのですが、適用されたことはないものの内乱罪と外患罪は例外で、現行犯ではなく議員の許可や勅令がない場合でも逮捕することができました。

この特権が効果を発揮するのは国会の会期中に限られ、継続審査については会期中に含まれないので逮捕されることはあります。
ただし参議院の緊急集会は会期ではないものの、会期中に準じるものとして不逮捕特権が及ぶことは憲法第100条に定められています。

例外に関しては、憲法第50条では法律で定められている状況を除いて、国会法33条では院外における現行犯罪を例外としています。
院外での現行犯罪の場合は、犯罪事実が明白で不当逮捕の恐れがないため、逮捕が可能とされています。

しかし、院内での現行犯罪に関しては議員の自律性に基づいて国会法114条で規定されている通りに、議長が持つ議員警察権に従うこととなるため、各議院の自主的措置に委ねられて決定されます。

かつて、日本の国会議員では1952年に林衆議院議員が器物損壊罪、1964年に楢崎衆議院議員が公務執行妨害罪、2005年に中西衆議院議員が強制わいせつ罪でそれぞれ現行犯逮捕されたという例があります。

議院を逮捕するためにそれぞれの院の許諾を得るためには、所轄裁判所や裁判官が令状を発する前に内閣が提出された要求書を処理して速やかにその写しを添え、要求する必要があります。

提出された要求書は議院運営委員会に付託された後、審査を経て議院における採決がされるというのが先例です。
その判断については、逮捕が正当な理由によるものであれば許諾を与えるべきという学説と、国会活動を重視して許諾するべきではないという学説に分かれています。

ガーシーには適用されるのか

現在注目されているのが、その不逮捕特権が東谷参議院議員、ガーシーに適用されるのかという点です。
東谷議員はガーシーとして、YouTubeチャンネルを開設して動画配信で芸能人の裏話などを流布してきました。

その前には詐欺行為などもあったと言われているのですが、2023年1月に受理された複数の著名人からの告訴では常習的脅迫による暴力行為等処罰法違反や名誉棄損などの疑いとなっており、それに伴って数か所の関係先で家宅捜索が行われています。

また、それに加えて会社事業から撤退するよう求める言動もあったとされ、威力業務妨害や強要などの疑いもかけられています。
それについて、東谷議員はインスタグラムの動画配信で3月に開催される通常国会に登院するため3月上旬には帰国して、警察の事情聴取にも応じると明言しています。

しかし、今まで国会を欠席し続けていた東谷議員は、国会議員と認められるのかという声もあり、今更帰ってくるとしても登院する前に逮捕することができるのでは?と考える人もいるようです。

しかし、たとえ欠席して会議には出席していなかったとしても、身分上は国会議員であり正当な理由なく除名することはできないので、東谷議員は今も参議院議員です。
そのため、会期中は不逮捕特権により逮捕することができないのです。

今回の告訴の内容では常習的脅迫があり、1回だけなら起訴猶予や罰金刑となる可能性が高いものの、複数回行っているという証拠が固まった場合は悪質と判断される可能性が高いでしょう。

また、動画配信を通じて収入を得ている構図が明らかになった場合は利得性からみてかなり悪質とみなされるため、その内容次第では大きな犯罪につながる絵図を描いていた可能性も考えられます。

国会会期中に参議院議員を逮捕するには参議院議長に認められなくてはならないのですが、罪名は国会で許諾されるものではないため、まず逮捕されることは考えられません。
しかし、不安視されているのが国会の閉会前にドバイへと戻ってしまうことです。

ドバイへと逃亡されると、事情聴取もできず捜査は行き詰ってしまいます。
確実に逮捕するためには、国会会期中に議長の許諾を得て逮捕するか、院外での現行犯逮捕をするために四六時中張り付いている必要があるでしょう。

とはいえ、イレギュラーな形になることは確かなので、望むべくは東谷議員が国会の会期中日本に留まり、明言したとおりに事情聴取に応じることでしょう。
参議院議員として、真実を明らかにしてくれることを望みます。

まとめ

ガーシーこと東谷議員は、参議院議員として当選しながらも国会に出席せず外国に滞在するという、かなりイレギュラーな議員となっています。
しかし、議員当選前に犯したと言われる犯罪等で現在告訴を受けており、それについては帰国して事情聴取を受けると明言しているため、3月に予定されている帰国を待っての動きとなるでしょう。
特権を盾に再び逃亡せず、事実が明らかになることを望みます。