法人の税務調査に入られる確率は

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法人にとって、税務調査を受けるというのはあまり望ましくありません。
たとえやましいところがなくても、疑われるというのは気分が良いものではないからです。
また、単純に時間が取られてしまうのが嫌、というのもあるでしょう。
そんな税務調査に入られる確率がどのくらいなのか、解説します。

税務調査の確率は?

税務調査は、会社の経営者にとってはそれ程珍しいものではありません。
しかし、一般の方からすると縁遠いものであり、昔の映画の「マルサの女」のような脱税を摘発する物をイメージする人も多いでしょう。

しかし、実際には正しく納税されているかどうか、確認するために調査することも多いのです。
そのため、税務調査がイコール脱税の疑い、というわけではありません。

しかし、税務調査については巷でかなりの誤情報が出回っています。
特に確率や調査件数等は、絶対にありえない内容のものも見受けられるのです。
実際には、どれほどの確率で税務調査に入られるのでしょうか?

実は、税務調査については国税庁から、調査を行った件数やその中で誤りがあった件数、不正があった件数などが公表されています。
これは、国税庁のホームページで見ることができます。

平成元年のレポートでは、調査の対象となる法人数に対して調査が行われた件数は、およそ8.5%でした。
法人100に対して、8~9件ほどに税務調査が入っていたのです。

それに対して、令和2年の税務調査はかなり少なくなり、対象法人数約294万に対して調査が行われた件数は約7.6万件と、おおよそ2.6%の確率で税務調査に入られています。
平成元年と比較すると、確率は約3分の1になっています。

また、個人事業主の場合は549万に対して調査が行われた件数は約5.9万件で、おおよそ1%の割合でした。
平成元年では2.3%なので、半分以下になっています。

2.6%ということは、約38年に1回の割合で税務調査が入ることになります。
ちなみに、税務調査に入られた法人のうち、申告漏れなどがあり修正が必要となる割合は、約80%です。
これは、以前から変わりありません。

また、税務調査を受けて脱税と判断された場合、重加算税が課されることになります。
その割合は約20%で、これも以前から変化していません。
税務調査に入られて、申告漏れや脱税などがない法人は、ごくわずかなのです。

税務調査は決まったタイミングで来るわけではない

単純に計算すると、税務調査が入るのは約38年に1度です。
しかし、38年おきに来るというわけではありません。
税務調査は、様々な点から判断して入っているのです。

その基準の1つが、法人の規模です。
例えば、年間売り上げが10億円の法人と1000万円の法人であれば、売上が大きい方に税務調査が入りやすいのです。

なぜかと言えば、売上が大きい方がミスも多くなり、また脱税などの不正を働くことも増えるからです。
また、売上が大きいほど修正や重加算税によって得られる成果も大きくなります。

ただし、これには例外があります。
それは、過去に重加算税を課されているケースです。
その場合、おおよそ3年周期で税務調査が入ることが多いのです。

反対に、一切の不正や間違いがなく申告をしているような法人であれば、優良とみなされて基本的に税務調査の対象から外されます。
例え規模が大きくても、他の企業の半分以下の頻度でしか税務調査が入らない、ということもあるでしょう。

税務調査では、法人税や消費税、源泉所得税、印紙税などが調査対象となっています。
このうち、メインとして調べるのは法人税です。
しかし、それに間違いや不正がない場合は、消費税や印紙税なども細かくチェックしていくのです。

最近では、特に消費税を厳しく調べることが増えています。
制度を乱用していないかどうか、チェックが厳しくなっているのです。
以前行われていた節税などの方法も、乱用として扱われるようになっているので注意しましょう。

税務調査は、提出された確定申告書に対する確認作業として行われるものです。
法人で提出する確定申告書は、帳簿書類などを基に作成された成果物に過ぎません。
税務調査ではその書類を確認し、必要に応じて金融機関や取引先の記録なども調べてその申告が正しいかをチェックするのです。

税務署や国税局では、納税者に対して質問検査権を有しています。
その権限を行使して、詳しく調べていくのです。
本来であればすべての法人を毎年調査したいところですが、その妨げとなるのが行政コストです。

税務調査には、多くの作業工数が必要となります。
税務署や国税局の予算やスタッフも限りがあるので、毎年全てを調査するというのは不可能です。
そのため、優先順位が高いところから重点的にチェックしていくことになるのです。

国税通則法が平成25年に改正されたことで、税務調査についても変化が現れました。
それによって、時間がかかる現地調査はあまり行うことができなくなりました。
その代わり、簡易調査を行うことが増えています。

また、以前であれば税務署などでは情報漏洩を防ぐためにパソコンの導入に消極的だったため、税務調査官はパソコンに不慣れなことが多かったのですが、最近ではサイバーチームが設置されるなどパソコンに強い税務調査官が増えています。

税務調査でも、パソコン内のデータやメールもチェックされるようになり、たとえデータを消去していてもファイル復元ソフトを使用して復旧するケースもあります。
税務調査でもパソコンをチェックされるようになったため、証拠はとことん探されるものと思っておきましょう。

税務調査が入る確率は決して高くありませんが、調査がその確率通りにしか入らないというわけではありません。
また、自分では間違いや不正がないと思っていても、税務調査が入ることはあるのです。
その点を覚悟して、常に備えておきましょう。

まとめ

税務調査は、法人にとって喜ばしいものではありません。
税務調査が入る確率はごくわずかではあるのですが、重点的に調査するべき対象と判断された場合は数年に1度の割合で調査が入る可能性はあります。
調査に入った法人は、そのほとんどが修正されるか重加算税を課されることになるため、日頃から申告などは間違いがない様に行っておく必要があります。