若年層を圧迫する高い社会保障負担

社会保険制度(年金/医療/雇用/労災/介護)

日本における国民負担を、租税と社会保障に分けて考えた場合、負担が大きいのは社会保障です。

特に若年層の負担は大きくなっていて、再分配所得で見ると高齢者より厳しくなっているのです。

今後、社会保障を維持できるか不安がある現状から、どう脱出するべきでしょうか?

行き詰りつつある社会保障制度

日本の経済の成長において、ネックとなっているのが少子高齢化、人材不足です。

対応が急務となっている今、政府でも対策を打ち出しているものの、財源に関して社会保険料を引き上げるという点に反対意見が出ており、議論はなかなか決着しません。

少子化の一因には、若年層の所得減少による非婚化もあるとされているのですが、社会保険料を引き上げるという方針は少子化対策の効果を減殺してしまうでしょう。

高齢者の比率が高まる中で、現役世代の社会保険料負担を拠り所としている現行の社会保障は持続できないでしょう。

社会保険料収入に頼りきりとなっている現行の社会保障制度を続けていては、日本の経済は閉塞感に覆われた現状から抜け出すことができないでしょう。

租税負担と社会保障負担の現状を確認し、マイナス影響を明らかにする必要があります。

国民負担の現状

国民所得に対する素材負担と社会保障負担を示す国民負担率は、2021年度に過去最高の割合となる48.1%を記録しました。

2019年度は44.3%でしたが、コロナ禍になった2020年度は47.1%と急上昇し、2021年度はさらに上昇したのです。

ただし、対GDP比でみると2020年は日本が13.4%と、主要先進国の中では低い割合を示しているのですが、社会保障負担だけを見ると最も高い割合となるのです。

なぜ、日本の社会保障負担は大きいのでしょうか?

社会保障負担への依存が高まっているのは、高齢化の進展が最も大きな原因です。

社会保障費の主要な受給者は高齢者なので、高齢者が増えれば社会保障給付額も増加していくのです。

現役世代が主に制度を支えているのですが、日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少しているため、保険料率は高齢化を上回るペースで引き揚げる必要があります。

また、バブル崩壊に伴う景気の低迷も、社会保障への依存を高める原因となりました。

社会保障費が増大する中でも、景気のテコ入れのために所得減税や法人税の引き下げが実施されたのです。

社会保障財政がひっ迫しても安定した財源を十分確保できなかったことが、社会保障負担の著しい増大をもたらした原因となりました。

しかし、国民負担は小さければいいというわけではありません。

アメリカは国民負担率が小さいことで経済活力を生み出しているのですが、代わりにセーフティネットが限られているため、経済弱者には厳しい社会です。

一方、北欧諸国は国民負担率が大きい代わりにセーフティネットが手厚いため、再チャレンジしやすい社会を形成しており、高負担に対する強い不満というのはほとんど出てこないのです。

国民負担率の大きさは、国民が望む社会に合わせて変わっていくべきです。

しかし、どのような負担割合になった場合でも、一部の分野に偏ってしまえば経済や社会にゆがみを生み出すことになります。

日本では、社会保障負担に大きく依存していることで負担を担う企業と現役世代に大きな負担となっています。

企業の負担が国際的に見ても大きいことが、国際競争力を損なう原因となっているのです。

特に問題なのが年金制度で、現役世代が治める保険料を高齢者に給付するという運営方法になっているため、少子高齢化が進む中では現役世代が支払う社会保障費が増加してしまいます。

少子高齢化が急速に進行すると高齢者にとっては生活するための保険という機能が低下し、現役世代は年金を信じられなくなるのです

また、若年層では貧困化や格差拡大が進んでいることで非婚化が進み、さらに少子化を招いています。

少子化がさらに進むと、社会保障制度の持続可能性も揺るがされることとなるでしょう。

少子高齢化の現状での課題

若年層にかかる過剰な負担が、少子化という形で日本の経済を脅かすこととなっている現代では、現行の制度や構造を早急に見直す必要があります。

具体的には、どのような点を見直すべきでしょうか?

まず、少子高齢化がさらに進むと、年金保険が現状の枠組みからはみ出してしまう構造的問題が表面化するでしょう。

現在の年金の構造自体も見直して、必要に応じて国庫が負担する構造へと切り替えなくてはいけません。

また、もし制度変更まではいかなくても、社会保障に関する構造的な赤字を解消するため、社会保障経費に充当するための消費増税を行うべきでしょう。

現在、社会保障費に投入している国費の約半分は、国債の発行で賄っているのです。

現状は構造上長く続けることができないのですが、消費増税は経済活動を抑制する可能性が高いため、タイミングをよく見て実施する必要があります。

しかし、デフレから脱却するめどが立った時は、現行の制度から少しずつ税率を上げていく必要があるでしょう。

高齢者にも、能力に応じた負担が求められるのですが、今後はさらに強化する必要があるでしょう。

社会保険料から消費税へと財源を移すとしても、高齢者の負担は大きくなります。

しかし、高齢になればなるほど、豊かさはフローの所得だけでは測れなくなります。

世帯主年齢階級別金融資産残高をみると、高齢になればなるほどストックとしての金融資産は増加していき、金融資産残高の平均値と中央値の差も大きくなっていき、高齢層の資産格差が大きくなっているのです。

後期高齢者医療制度で窓口負担が2割になるのは、所得が多い人です。

所得が少なくても高額の資産を持っている人は除外されているので、2割負担の対象を資産額にも広めることで、消費税増税の割合は抑制できるでしょう。

まとめ

現在、社会保障を必要とする主な層は高齢層ですが、社会保障費を負担しているのは若年層を含む現役世代です。

若年層は特に経済格差が広がっているため、社会保障費の負担が苦しくなっている人も増えています。

現在の社会保障の構造を見直し、少子高齢化が進む現代に適した構造へと変更する必要があるのではないでしょうか?

高齢者の負担を増やすことも考慮に入れて、適した構造を考えるべきです。