トランプがWHOを脱退した理由

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アメリカの新たな大統領となったドナルド・トランプ氏は、今までの伝統などを見直し、新たな道を進む姿勢を見せています。

動向が注目される中、1月20日にはWHO(世界保健機関)からアメリカが脱退することを発表したのです。

トランプ大統領は、なぜWHOからの脱退を決めたのでしょうか?

トランプ大統領の動き

トランプ大統領は、2017年に第45代大統領を務めていて、一度退いたものの第47代大統領として再び当選しました。

前回の大統領就任時は「アメリカ・ファースト」という主義を掲げ、アメリカの国力を高めるための政策を数多く打ち出したのです。

日本を含む各国に対して強硬姿勢を前面に押し出した外交を行い、輸入制限なども実施して今までの関係性を変えていこうという考えも多々ありました。

また、アメリカが防衛している国に対して経費の一部しか負担していないのは不公正だとして、防衛費の負担額に関する批判も見られたのです。

今回脱退が発表されたWHOに関しても、前回から脱退の動きはあったのですが、脱退が決まる前に政権交代となり、脱退の話は立ち消えとなっていました。

しかし、今回トランプ氏が再選となったことで再びWHO脱退に向けて転嫁されてしまい、今回発表されたのです。

WHOは国際連合の専門機関の1つであり、健康であることを基本的人権の1つとして考え、達成することを目的として設立されました。

1907年に前身となる国際公衆衛生事務局が設立され、当初はヨーロッパだけを対象として12か国が調印して発足したのです。

第一次世界大戦の前には60か国が参加するほど大きくなり、第一次世界大戦後は国際連盟が発足して国際連盟保健機関も設立されました。

しかし、当時は国際連盟にアメリカ合衆国が不参加だったため、アメリカと関係が深い国際公衆衛生事務局も別組織のままで存続することとなったのです。

第二次世界大戦後の1946年に世界保健機関の検証が採択されたことで、前身となる2つの機関は解散となり1948年に世界保健機関(WHO)が設立されることとなりました。

日本は1956年に国際連合へと加盟したのですが、WHOには先立って1951年から参加していたのです。

WHOの働き

WHOの働きとして記憶に新しいのが、2020年から猛威を振るったCOVID-19、通称新型コロナウイルス感染症です。

緊急事態を宣言し、各国に感染が広まらないよう様々な対策などを呼びかけるなどの働きがあったのですが、一方で対応が不十分だったとも言われています。

WHOでは、新型コロナウイルス感染症に関して制御が可能である、もしくは封じ込めて早期解決ができると考えていたのではないか、という意見もあるのです。

実際に、初動は遅くパンデミックの宣言にも遅れがあり、ウイルスの発生源とみられる中国との交渉もしっかりと行っていなかったとみられます。

しかし、一方でかつてのWHOは致死率が非常に高い天然痘の撲滅に成功しており、ポリオなどの感染症の撲滅計画も進められているのです。

今回の対応が避けることのできる問題を抱えていたとしても、WHOは世界中の感染症の対策を担う機関であり、なくなってはいけない組織といえます。

しかし、今回トランプ大統領がアメリカのWHO脱退を決めたことで、WHOはかなりの苦境に立たされることになるでしょう。

なぜかといえば、WHOは各国の分担金と寄付金によって運営されているのですが、アメリカ合衆国は最大の出資者となっています。

アメリカは2番目に多い日本の2倍以上の分担金を支払っており、寄付金額もアメリカが分担金の2倍以上を寄付しているのです。

また、寄付金で2位を占めるビル&メリンダ・ゲイツ財団もアメリカにあるため、アメリカの脱退を受けて寄付金が減額となる可能性もあります。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は出資額が2位で全体の10%近くを占めているため、アメリカの脱退とともに寄付をやめた場合は全体の4分の1の財源が失われるのです。

なぜWHOを脱退することになったのか

そもそも、トランプ大統領はなぜWHOを脱退することになったのかというと、WHOのCOVID-19への対応に対する不満が根底にあります。

COVID-19が流行した当初、WHOは台湾から人同士の感染が起こった可能性があるという報告があったのにも関わらず情報を公開しませんでした。

WHOがパンデミック宣言を出したのは翌年になってからで、宣言が出された時点ですでに3分の2の国家で感染が広がっていました。

患者は合計で11万人を超え、早期の段階で抑え込むというタイミングはすでに過ぎ去っていたのです。

WHOの対応が遅れたことで世界各国に膨大な被害がもたらされたという意見は、国を問わず出されています。

トランプ大統領は、WHOの対応を失敗だと評価し、さらにアメリカからの膨大な出資を受けているのに中国中心主義であることも批判したのです。

2020年の時点でWHOへの年間4億5千万ドルの拠出金は他の国際組織に振り分けてWHOとは断絶することを発表していました。

翌年にジョー・バイデン前大統領が脱退を撤回することを決め、WHOとの協調路線に進むことを決めたのですが、再びの政権交代によって脱退が決定したのです。

日本でも3千万人以上が感染し、7万人余りが亡くなっていますが、アメリカは感染者数が1億人超、死者は117万人超と世界で最も多くなっています。

第二次世界大戦時を超えるほどの死者が出ているアメリカにおいては、COVID-19への対応が遅れたWHOが死者の増える原因の一端を担っているように思えるのでしょう。

しかし、アメリカがWHOから脱退してしまうと今後のWHOは資金不足に陥ることとなるため、拠出金が2位の日本には拠出金の増額を求められるかもしれません。

現在、日本国内でも経済に大きな乱れがあり、国民の中には生活が安定しているとは言い難い人も少なくないでしょう。

現在の状況で、WHOからの負担増を求められて国民の生活に反映されるようなことがあれば、日本の経済には氷河期が訪れるかもしれません。

まとめ

トランプ大統領が再び大統領に返り咲いたことで、以前立ち消えとなっていたWHOからの脱退が改めて発表されました。

アメリカはWHOへの拠出金と寄付金が世界で最も多く、アメリカの財団も世界2位となる寄付金を拠出しているのです。

アメリカの脱退は、WHOの屋台骨を揺るがすことになるかもしれないのですが、もしアメリカ脱退に変わる拠出金の負担を日本に求められた場合は、日本の経済が大ダメージを受ける可能性もあります。