ミュゼ破産の裏側について

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女性向け脱毛サロン大手の「ミュゼプラチナム」の運営会社であったMPH株式会社が2025年8月に破産したことは大きなニュースとなりました。
店舗数も多く負債総額も約260億円と脱毛サロンでは過去最大規模の倒産となったのですが、なぜ破産に至ったのでしょうか?
ミュゼ破産の裏側について、解説します。

ミュゼプラチナム経営破綻の裏側

2025年8月18日、脱毛サロン最大手「ミュゼプラチナム」の旧運営会社であるMPH株式会社が、東京地裁から破産手続き開始決定を受けたのです。
負債総額は約262億円で、全国に多数の店舗を構えて会員数460万人以上を誇った美容脱毛の絶対王者が没落することとなりました。

ミュゼプラチナムの倒産は単なるコロナ禍による客数減少や、エステ業界の不況といった言葉だけでは片付けられるものではないでしょう。
倒産の裏側には、創業期から抱え続けた慢性的な歪んだビジネスモデルや手元の現金を確保するために依存した過酷な金融スキームがありました。

さらに、親会社の崩壊に乗じて群がったブローカーたちによるドロ沼の経営権乗っ取り劇も大きな原因となったのです。

エステ業界には前受金ビジネスという特有のビジネスがあるのですが、前受金の存在がミュゼの経営を長年支えると同時に最大の首を絞める原因となりました。
前受金ビジネスでは、顧客が数十万円のコースを契約した際の料金は一括または信販会社のローンで事前に支払われることとなるのです。

会社側には一気に巨額の現金が入りますが、会計上では売上ではなく施術を提供するまでは負債となります。
ミュゼは手元にある前受金を、次の新規顧客を獲得するためにテレビCMや電車内広告など膨大な広告費や新規出店のための家賃・人件費へと即座に投入し続けていたのです。

新しい顧客の金を古い顧客の施術コストとさらに新しい顧客を集める広告費に充てるという構造は、実質として自転車操業になってしまいます。
新規会員が右肩上がりで増え続けている間は回りますが、一気に急ブレーキがかかったことで倒産することになったのです。

ミュゼを一躍有名にした「数百円で両ワキ+Vライン通い放題」といった破格のプランは、新規顧客を呼び込む強力な撒き餌となっていました。
しかし、通い放題プランとは一度契約すれば、サロンに何度通っても会社に1円も売上が入らない仕組みです。

時間の経過とともに、お金を生まず施術スペースと人件費を占有する顧客の割合が増えて既存店舗の収益性を著しく圧迫していきました。

また、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大によって店舗の休業や外出自粛が相次いだことで新規契約がストップし、自転車のペダルが回らなくなったのです。
手元資金がショートし始めた旧運営会社はファクタリングに頼るようになり、債権の早期現金化を乱発していました。

ミュゼの顧客には信販会社を利用してローンを組み、毎月分割払いを行っていた人が多かったのです。
通常、信販会社からの入金には一定の月日がかかりますが、ミュゼは将来入ってくる予定の現金を専門の業者に買い取らせることで即座に現金化しました。

ファクタリングの金利に相当する手数料は極めて高額で、一説には10%〜15%という法外な手数料を支払って現金の前借りをしていたとされているのです。
毎月のようにファクタリングを繰り返した結果、利息分の負担だけで年間50億円以上が流出することとなりました。

売上が上がれば上がるほど手数料で会社の体力が削り取られていくという、文字通りの金融地獄に陥っていたのです。

連鎖破綻の引き金と捕食者たち

自社単独での生き残りが不可能となったミュゼは、何度も親会社が変わる「買収のドミノ」に巻き込まれました。
RSテクノロジーズ、G.7ホールディングスなどを経て2023年に旧運営会社を実質的に買収したのが、東証上場廃止を経て再起を図っていた家電大手の船井電機でした。

しかし、船井電機側も本業のテレビ事業が深刻な不振に陥っていたため、ミュゼのキャッシュを自社の運転資金に流用する目的があったとされています。
結果として共倒れの形となって船井電機グループは2024年10月に破産手続きを開始することとなり、親会社という後ろ盾を失ったミュゼは完全に孤立したのです。

さらに、コロナ禍に国から支払いを猶予されていた多額の社会保険料の滞納が決定的打撃となりました。
親会社の崩壊に伴って社会保険庁による売上入金口座の強制差し押さえが実行され、信販会社から毎月入るはずのキャッシュが1円も手元に入らなくなったのです。

最大10億円規模のキャッシュが失われたことで、従業員への給与未払いや家賃の滞納が免れない状態へと追い込まれました。
2025年2月から3月にかけて、ミュゼの内部では表沙汰にならないドロ沼の経営権争奪戦が勃発することとなったのです。

当時の投資ファンド側と既存の経営陣が激しく対立し、一時は特定の役員や経営陣が本社オフィスへの入館を物理的にブロックされるという異例の事態にまで発展しました。
なぜ瀕死の脱毛サロンが乗っ取りの標的になったのかというと、ミュゼ460万人以上の若い女性のローン債権を保有していたことが理由です。

会社自体は赤字まみれで破綻寸前であっても、過去に顧客が契約した分割払いのローンは毎月数億円単位で確実に信販会社から支払われ続けます。
金融ブローカーや悪質な投資家から見れば、債権は年利換算で36%〜40%の爆発的な利回りを生み出す極めて魅力的な金融商品だったのです。

会社の救済や再建を名目に近づいてきたプレイヤーたちは、信販債権の利権だけを自らの懐に引き込もうと裏で暗躍し、資産を別法人へ移転させるなどの泥仕合を展開しました。
結果として、正常なスポンサー探しや事業再建の道は完全に閉ざされることになってしまったのです。

給与の未払いが数ヶ月に及び店舗の突然の臨時休業が相次ぐ中、経営陣ではなく現場の従業員たちが最終的な引き金を引くこととなりました。
2025年5月に未払い給与の債権を持つ従業員らが東京地裁に対して、旧運営会社の破産手続き開始を申し立てたのです。

地裁による審理を経て、2025年8月18日に正式に破産が決定し、エステ業界における過去最大の倒産劇は幕を閉じました。
しかし、ミュゼプラチナムは別会社が引き継いでいるため、契約が残っている場合は置き換えコースでの施術を受けることができるのです。

まとめ

脱毛サロン業界最大手のミュゼプラチナムの運営会社であるMPH株式会社が2025年に倒産したのですが、背景には歪んだビジネスモデルや過酷な金融スキームがありました。
自転車操業とファクタリングの乱用の中で親会社の倒産による口座の差し押さえ、さらに経営権争奪戦が起こる中、給与が未払いだった従業員が破産を申し立てたのです。
ミュゼプラチナムの運営会社は倒産となりましたが、残った契約は置き換えコースを利用できます。