弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの士業と呼ばれる職業は、難関国家資格を持つ専門職です。
有資格だけが行うことのできる独占業務なので利益は十分に確保できるように思えるかもしれませんが、実は相次いで倒産しているのです。
士業はなぜ倒産することが多いのか、解説します。
士業はなぜ相次いで倒産しているのか
士業と呼ばれる弁護士、司法書士、税理士といった職業は、難関の国家試験に合格して資格を取得する必要があるのです。
士業は有資格者のみの独占業務を行っているため、倒産するようなことはないように思えるかもしれません。
しかし、実は2024年度と2025年度に士業は過去最多となる18件が負債総額1000万円以上となって倒産しているのです。
士業は資格のない人が業務を行うことが法律で禁止されているため、強力な参入障壁があり資格を持っていれば一生安泰と思っている人もいます。
しかし、1990年度から始まった調査では2010年度までの間毎年10件未満だった士業の倒産が、2011年度に11件となり2019年度には15件となったのです。
2024年度、2025年度はさらに増えて18件が倒産したのですが、いったいなぜ倒産する士業が増えているのでしょうか?
2025年度の士業の倒産原因は10件が売り上げ不振で、次に多いのがその他に分類された5件で代表者の死亡が大半を占めています。
また、コンプライアンス違反によって倒産したのが2024年度は4件、2025年度は2件あったのです。
安泰だと思われている士業の倒産が増えている背景には競争の激化や高齢化、コンプライアンスいう士業を取り巻く構造の変化があります。
士業は以前であれば個人事務所が多かったのですが、近年では法人化による大規模事務所が台頭してきたのです。
数十人以上、多いところでは数百人規模の士業法人が増えていて、資金力と豊富な人員を武器として価格競争を仕掛けてきました。
一方で個人事務所は中小企業を主な顧客としていますが、相次いで廃業して売り上げが激減するケースが増えているのです。
また、過払い金や任意整理、自己破産などの個人向け債務整理に関しては、大手の宣伝力に対抗することができません。
大手との価格競争では個人事務所に勝ち目がないため、売上不振による倒産へと追い込まれる事務所が増えているのです。
また、経営者の高齢化と後継者不足も士業の倒産に深く関わっていて、キーマンが高齢化して死去、あるいは体調不良で事業の継続ができなくなると倒産リスクも高まります。
士業には免許が必要ですが、定年のように年齢の上限がないため一度免許を取得すればいつまでも効力を発揮するのです。
実際に、個人事務所の経営者には70代以上の人も多いため、体調を崩してしまうことも珍しくありません。
体力が厳しいと感じるようになった頃に病気が見つかり、顧客の中小企業も廃業が増えて売り上げが落ち、子どもは資格がないため事業を引き継げないケースも多いのです。
結局、売上が下がったことで負債を抱えるようになり、改善されないまま事務所をたたむという選択をする人も少なくありません。
一般企業とは違って士業の場合は後継者も同じ資格を持っていなくてはならないため、後継者は限られてしまうのです。
まだ経営者が健康な段階で事業承継をしようと思っても、後継者が資格試験に合格できなければ承継することができません。
士業には必須となる資格が参入への障壁となり、事業承継を難しいものとしているのです。
近年ではコンプライアンス違反で信用を失ってしまい、倒産に追い込まれる事例というのも増えています。
士業は高度な倫理義務を負う職業なので、信頼を損なうような行為は事業継続を一気に不可能としてしまうのです。
実際に、以前コロナ禍における持続化給付金の不正受給を都内の税理士法人の代表が指南した容疑で逮捕されたことで倒産したという事例があります。
士業を営む上で法令違反は信用を失墜させて顧客が離れてしまい、倒産へと追い込まれる致命的な問題となるのです。
士業の事務所が生き残るポイント
士業を営む個人事務所は今後厳しい状況の中に立たされることとなるため、生き残るためには戦略が必要となります。
まず、大規模事務所は豊富な資金力によって広告宣伝と最新のITツールの導入に力を入れることで、優位性は今後も揺るぐことはないでしょう。
価格競争になってしまうと、動く経済の規模が大きい大規模事務所が個人事務所より圧倒的に有利な状況となります。
特に厳しい立場になるのは中規模の事務所で、個人事務所ほど専門性で差別化を図ることができるほどの強みはなく価格競争では大規模事務所にかなわないでしょう。
今後、真っ先に淘汰されていくのは個人事務所ではなく、中規模の事務所となると予想されます。
高齢化問題もますます深刻になっていき、団塊世代の士業経営者は引退を考える時期となるものの後継者不在であれば廃業するしかないのです。
生き残ることのできる事務所には3つの条件があり、まずは専門性を高めて他との差別化を図ることが重要となります。
大規模事務所との価格競争では資本力に負ける個人事務所が負けてしまうので、特定分野に特化することで専門性を確立するべきです。
現在専門性の高い士業といえば、「ITスタートアップ専門の税理士」「外国人労働者問題に強い社労士」「建築紛争に特化した弁護士」などがあります。
どのような分野でも対応するのではなく、ニッチな分野で圧倒的な強みを持つことで価格競争に巻き込まれないようにするのです。
また、事業承継の準備を早めに初めて置き、経営者が60代になった時点で後継者をどうするかを考えましょう。
子どもが資格を取得するというのが最も望ましいのですが、外部から有資格者を採用したりM&Aで事務所を売却したりするという選択肢もあるのです。
3つ目の条件はコンプライアンスを徹底して信頼を守ることで、法令をきちんと守って倫理観を高める取り組みが必要となります。
コンプライアンスに違反してしまうと、長年培ってきた信頼が一瞬で失われてしまうため、生き残るためには遵守することが必須条件となるのです。
士業を取り巻く世界の変化はピンチだけではなく、今後成長していくためのチャンスでもあります。
士業の資格があれば将来は安泰という神話はすでに崩れてしまったのですが、士業の価値がなくなったわけではないのです。
今後残ることができる士業は顧客から本当に必要とされている士業だけという、健全な時代が始まることになります。
まとめ
士業は近年倒産件数が増えていて、2024年度と2025年度はそれぞれ18件が倒産しているのですが、最も多い倒産理由は大規模事務所が増えた影響を受けた経営不振です。
また、高齢化に伴う後継者の不在やコンプライアンス違反なども倒産理由となっていて、特にコンプライアンス違反に関しては逮捕されたケースもあります。
今後個人事務所が生き残っていくためには、専門化や事業承継を早いうちに準備することなどが必要となるでしょう。

