なぜ熊の被害が急増しているのか⁇

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2025年の秋は、例年になく熊の動きが活発になっており、毎日のように熊の出没情報や被害などが報道されているのです。
熊による死亡事故は11月4日の時点で12件にも及んでいるのですが、なぜ熊の被害が急増しているのでしょうか?
2025年に熊の被害が急増している原因について、解説します。

日本各地の熊の被害

日本では、北海道にヒグマ、本州にはツキノワグマという2種類の熊が生息しており、毎年秋になると各地で熊の出没や被害などが報じられているでしょう。
2006年から熊による被害の統計を開始しているのですが、2025年度の被害は11月初旬の時点で、統計開始以来最多となる死亡者数を更新しています。

群馬県では、警察から地域住民に対して外出を控えて戸締りをしっかりとするよう呼び掛けるなど、一種の自然災害のようになっているのです。
熊の被害については食糧問題があるといわれることが多く、山に自生する植物の木の実などが凶作になると人里に降りてくるといわれています。

しかし、今回異例といえるほど被害が増えている最大の原因としては、そもそも熊の頭数が急増していることがあるのです。
熊の餌となるドングリやブナなどの豊作、凶作もあまり関係がなくなってくるほど増えてきていて、山を下りてきています。

猟師が多くいる時代であれば、熊は人間と出会うことが危険だと学ぶ機会も多かったのですが、近年では猟師が減っているためで合わない熊も増えているのです。
年齢の若い熊ほど人間の危険性を知らず、怖がることがなくなっているため、近年では熊鈴の効果もなくなってきています。

また、市街化調整区域等の制定によって乱開発を防ぐようになった結果、都市と山の間には人の手が入りにくくなったことも原因の1つでしょう。
農家を除く一般の方が市街化調整区域に家を建てることが事実上不可能となり、土地の価値が下がって放置されるようになりました。

緩衝エリアがほとんどなくなったため、法改正やクマを捕獲する頭数が大きく増えない限りは、市街地に熊が出る被害は今後も増えていくでしょう。
よく、人が熊の生息するエリアを減らしたため熊被害にあうようになったといわれているのですが、実際には緩衝エリアがなくなったことが原因といえます。

人の生息域が後退したことで、緩衝エリアが失われて熊がいきなり出没するようになったことが、熊被害の増加につながっているのです。
かつて法律が制定された時代とは環境が異なっているため、法律自体が別の制約を与えて意図せぬ環境の変化を促進することになっています。

熊が増えているのに、猟銃免許を持っている人は1980年から比べて半分以下と、大幅に減少しているため、人間が熊にとって脅威ではなくなっているのです。
熊は生き延びれば来年以降も同じ場所に生息しており、生態系のトップなので自然に減るのも期待できません。

また、メガソーラーによる大規模な自然開発が原因といわれることも多いのですが、熊の中でも強く賢い個体であればきちんと山奥にえさ場や寝床を確保しているのです。
たとえ一部の木の実が凶作になった年でも、他に食べるものは色々とあるため、わざわざ人間のところに降りてくる必要はありません。

熊は雑食性なので、特定の期の実しか食べないということはなく他の木の実でも食べられますし、川に鮭などがいればとって食べることもできるのです。
電気柵を設置してもヒグマなら平気で乗り越えてきますし、ドングリを撒いてしまうと餌付けされた熊が近づいてきて一巻の終わりになってしまいます。

都市計画法に人と熊との共存の道がある

人と熊が共存できるかどうかは都市計画法が重要な鍵となるのですが、都市計画法が制定されたのは1968年と今から50年以上前のことです。
都市計画法が制定されたことで山間部からは人が消えて、さらに高齢化が大幅に進んだことで猟師の人数も激減しました。

結果として、人里と山との境界線があいまいになってしまった場所が増えて、熊が山の本来許容できる頭数を超えて増えてしまったのです。
増えた熊はハンターに出会わず、人間に対しても恐怖心を抱かず、木の実よりも高カロリーで簡単に得られる農作物や家屋内の食料を求めて人里に侵入してきました。

人の生活圏である農地や市街地に侵入してきたことで、現在の深刻な熊被害を引き起こしているのです。
都市計画法も50年以上前の基準のままではなく、市街化調整区域等の建築要件を緩和するなどの変化が必要とされます。

現在のコンパクトシティを掲げる方針は、農村部や郊外などを見捨ててしまうことにもつながりかねないのです。

また、北海道積丹町で起こったようにハンターに対する理解を持たない人が増えていることもあるため、ハンター人口の増加に努める必要もあります。
熊被害を避けるため、一般人でも持ち歩きやすいのがクマ避けスプレーですが、日本には規格をまとめる法律がないため、危険なスプレーも多いといわれているのです。

アメリカでは許可されないような、噴射距離の短さ、容量の少なさ、濃度の低さや指標の間違いなどに当てはまるスプレーが日本では多いといわれています。
また、速射性も重要とされているのですが、やはり日本で販売されているスプレーには速射性が悪いものも多いのです。

間違った商品、本来必要な基準を満たしていない商品は、人命を守るという点で役に立たないだけではなくかえって危険になることもあります。
海外の基準を基にした目安としては、噴射距離は8メートル以上、連続で6秒以上噴射可能、215g以上の容量、カプサイシンなどの成分は1~2%などが必要でしょう。

アメリカの基準を満たしている熊スプレーなら、データもそろっていて使用者の生存率はかなり高まり、怪我を避ける確率も高くなります。
熊の頭数や生息環境、行動パターンなどが変化しているため、かつてのような安全性は通用しなくなっているのです。

制定されてから時間が経ちすぎている都市計画法を見直し、人命を守るためのクマよけスプレーの安全基準の制定やハンター増加の施策などが求められます。

まとめ

熊の市街地への出没件数や人的被害などが増えている原因としては、山の木の実などの豊作、凶作以前に熊の頭数が増えすぎているという点が挙げられるでしょう。
ハンターの人数が減り、都市計画法によって人が住んでいない地域が増えたことで、熊は人の危険性を知らないまま市街地へと出てくるようになりました。
人命を守るために必要なクマよけスプレーも法律による基準などがないため、法制定が求められるでしょう。