JAが民営化されてしまうとどうなってしまうのか??

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近年、米価格の高騰に伴ってJAに対する批判も増えており、JAが民営化されるのでは?という声も増えているのです。
しかし、実際にJAが民営化されるようなことがあれば、いったい何が変化するのかわからない人も多いでしょう。
JAが民営化されるとどうなってしまうのか、解説します。

JAは民営化されるのか?

新たに農林水産大臣に就任した小泉進次郎氏は、農協版の総合商社と呼ばれている全農の株式会社化を推進しているという記事が以前出されている人物です。

全農はJA全農とも呼ばれる全国農業協同組合連合会のことで、JAは農業協同組合で地域に根差した組織なのに対し全農は全国のJAの統括という違いがあります。

小泉進次郎氏はこれまで農業改革について取り組んでおり、郵政民営化と同じことをJAでもやろうとしているのではないかといわれているのです。

小泉進次郎氏の父親は郵政民営化に取り組んだ元総理大臣の小泉純一郎氏であることはよく知られているため、同じことをやるのではないかと考えられています。

JAの民営化は現時点で計画されていませんが、もし実現すれば銀行業務や共済事業は民間企業へ移管され、農業関連事業は縮小・廃止されるのではないでしょうか。

農産物の集出荷、購買事業、営農指導などの機能が失われ、農業者へのサポートが弱まることで、農業の持続可能性や地域経済に悪影響を与える可能性があります。

JAが展開している事業は複数あるのですが、事業ごとに民営化を考えた場合に民営化される可能性が高いのはどの事業でしょうか?

まずは金融事業があり、民営化した場合の影響としては民間銀行と同様のサービスになり、金利や手数料が上昇する可能性があります。

JAは金融事業で得た利益を農業関連事業の赤字補填に充てているのですが、民営化されれば補填機能が失われるため、農業関連事業の継続が困難になります。

JA共済も民営化が予想される事業で、JA共済の契約はJAがJA共済連と共同で引き受けているため、JAが破綻しても保障は継続されるでしょう。

しかし、JAの民営化によってより民間保険に近いサービスとなり、保障内容が変化する可能性があります。

JA共済は農業者への保障を中心に提供していますが、民間企業に民営化されてしまえば利益追求型の民間保険に変化してしまう可能性もあるでしょう。

農業関連事業も民営化の可能性が高い事業で、民営化すると農産物の集出荷、購買事業、営農指導などの機能が失われ、農業者へのサポートが弱まります。

しかし現状では赤字を抱えている事業なので、民営化によって事業継続が困難になる可能性は高いでしょう。

生活関連事業は、民営化となった場合ガソリンスタンド、スーパーマーケット、葬祭事業などの生活関連事業が影響をうけることになります。

売上の状況次第では民間企業に売却されるか、事業が縮小・廃止されることとなるでしょう。

現状でも赤字を抱えているため、民営化となれば事業の継続性が失われてしまう可能性があります。

JAが民営化したら成功する?

しかし、実際にJAが民営化することとなった場合、果たして成功することはできるのでしょうか?

まず、JAが民営化した場合の影響について考えてみると、農業に対しては当然最も大きな影響を与えます。

現在JAが担っている集出荷施設としての役割が失われる可能性があり、購買施設へのアクセスも悪化してしまう可能性があるでしょう。

また、農業資材も個別に購入することになってしまえば、購入コストも上昇してしまう可能性があります。

営農指導を受けることもできなくなるため、担い手の育成や技術継承といった面でも困難になってしまうかもしれないのです。

地域経済も影響を受けることとなり、農業関連事業が縮小されたり廃止されたりした場合は地域の雇用を失うこととなり、農業従事者の所得も減少してしまいます。

地域経済も全体的に悪影響を受けてしまう可能性があるため、JA民営化が歓迎されるとはいいがたいでしょう。

また、JA民営化がどうなるのかは、かつて行われた郵政民営化が現在どうなっているかを見ることで推し量ることができます。

郵政民営化は2004年に決定されて2005年に法案が可決となり、2007年に日本郵政公社が廃止されて完全に民営化されたのです。

当時は世界的に郵便の需要が減少していくことが分かっていたため、慢性的な赤字が膨らんでいく郵便事業の合理化、近代化を目指すために民営化されました。

しかし、民主党の反対もあって民営化は形骸化してしまい、様々な改革案が棚上げとなって現状維持となった点も多いのです。

特に、2009年に起こった政権交代によって郵政民営化は実質2年で途絶えてしまうこととなりました。

郵政民営化が大きく後退しており、郵便事業は慢性的な赤字体質から脱却できていないため、本来事業ごとに完全分離する予定だったものの分離できない状態が続いたのです。

郵政民営化関連の法律では日本郵政グループを5つの組織に分けており、まず日本郵便株式会社の発行済み株式をすべて保有、管理する日本郵政株式会社がトップとなります。

2012年に郵便局株式会社が郵便事業株式会社を吸収合併して誕生した日本郵便株式会社は、郵便事業と郵便局の運営を行う役割を持つのです。

郵便貯金を郵政公社から継承した株式会社ゆうちょ銀行、生命保険業務を行う株式会社かんぽ生命保険も日本郵政グループに含まれます。

また、独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構は従来の通常郵便貯金などを除く郵便貯金契約、簡易生命保険契約を承継・管理する組織です。

政府は日本郵政グループに対して民営化から一定期間は100%出資し、以降は株式を段階的に処分していくものの2017年以降も3分の1超を保有する予定となっています。

日本郵政は日本郵便に対して民営化の後も100%出資を継続しているものの、ゆうちょ銀行、かんぽ生命に対しては一定期間だけ100%出資していたのです。

以降は株式を段階的に処分していき、2017年9月末までにすべての株式を処分する予定だったという点が、日本郵便とは異なります。

結局、2012年に処分期日が撤廃されて2015年の一部上場においても当面50%程度しか売却されず、完全処分までのスケジュールは未定となっているのです。

郵政民営化も結局お艇通り進まず尻すぼみとなってしまったことを考えると、JA民営化に取り組んだとしてもやはり反対にあい中途半端に終わってしまうと予想されます。

まとめ

現在苦境に立たされているJAは今後民営化となるのではないかといわれており、小泉進次郎農林水産大臣もかつて民営化することを主張していたのです。
しかし、民営化となると最も影響を受けるのは農業であり、地域経済にも様々な悪影響が及ぶこととなってしまうことは想像に難くありません。
かつて小泉純一郎元総理が実施した郵政民営化も中途半端にしか進まなかったことを考えると、JA民営化もやはり難しいでしょう。