Earth for All(万人のための地球)での提言、5つの「劇的な方向転換」とは。

その他

ローマクラブが2022年に発表した『Earth for All(万人のための地球)』は、2015年に国連サミットで採択された、SDGs(持続可能な開発目標)に対応するよう変革を促す国際イニシアチブです。
レポート内では、特に5つの「劇的な方向転換」について提言しています。
提言の内容について、解説します。

レポートについて

ローマクラブは、1968年に設立された民間シンクタンクで、本部はスイスにあります。
1972年に第1号のレポートとして『The Limits of Growth(成長の限界)』を発表し、世界的ベストセラーを記録しました。

『成長の限界』から50年が経過して、レポート内で提唱されたように人類社会は危機的状況に陥っています。
食料や資源の枯渇、並びに環境汚染による生態系の破壊も人類社会に大きな影響を及ぼしています。

2015年に国連サミットで採択されたSDGsは、先進国を中心として世界中で共有されているのですが、当初の予定である2030年までの目標達成は難しいと考えられています。
採択からすでに半分が過ぎている現在、目標達成率は想定を下回っているのです。

地球温暖化は変わらず進み、生物多様性の喪失にも歯止めはかかっていません。
新型コロナウイルスの感染拡大によって世界経済も落ち込んで、ロシアがウクライナに侵攻したために世界における食料やエネルギーの安全保障が崩壊しかけているのです。

現状を打開するために必要として提唱されているのが、5つの「劇的な方向転換」です。
世界経済と生命維持の関係性を分析して、人類のシナリオを2つ提示した上で、方向転換によって問題を回避できるとレポート内で提言しているのです。

シナリオの1つは、「小出し手遅れ」です。
現状維持を目的として成り行きに任せた結果で、気候変動に対して有効な対策ができず環境への影響が増大して異常事態が基本の状態になってしまいます。

2100年には地球の平均気温が2.5℃以上上昇して、政府は異常事態への対処で手一杯となるため社会的緊張が増大することで、生物の多様性は崩れウェルビーイングは低下して、社会が崩壊するリスクが高いと示されています。

もう1つのシナリオは「大きな飛躍」で、貧困や不平等など5つの分野に関する取り組みを劇的に見直すことを推進して、地球の限界の範囲内でウェルビーイングを最適化することを目指すというものです。

シナリオは2020~2030年、2030~2050年、2050年以降の3つに分けて考察されていて、初期は世界銀行や世界貿易機関が持続可能性や気候、ウェルビーイングを重視したクリーンな投資を支援して、途上国の資金が拡大されると予測しています。

5つの「劇的な方向転換」とは?

2つ目のシナリオの「大きな飛躍」の中では、5つの分野に関して取り組みを劇的に見直す、ということが書かれています。
5つの分野の取り組みを大きく変更することが、「劇的な方向転換」です。

方向転換の内容は、①貧困の解消②重大な不平等への対処③女性のエンバワメント④健全な食糧システムの実現⑤クリーンエネルギーへの移行、です。
上記のうち、「貧困の解消」の内容について解説します。

貧困の解消に関しては、政策における選択肢が少ないという点を問題視しています。
国自体が貧しいと、貧困層を救うこともままならないのです。
貧困を解消するためには、現在の国際金融システムや技術共有、貿易協定の仕組みを改革する必要があります。

世界の大半を占めている低所得国には、資源も技術も不足しています。
地理的な条件でも、気候変動の影響を受けやすいため、早急に行動しなければ経済的な繁栄と脱炭素を並びたたせるようにしましょう。

貧困、不平等、女性のエンパワメント、食料、エネルギーの5つの方向転換が必要な分野への取り組みは、それぞれ別の問題ではなくすべてが絡み合い、関係しているものです。
どれか1つでも欠けてしまうと、明るい未来を描くことはできません。

段階的な5つの分野への対策をすることで、2050年代には富を公平に分配して人口の安定を図り、再生エネルギーを活用して再生型農業も積極的に取り組んだうえで適切な消費を基盤とした社会活動を推進することで、自然資源にかかる負荷は低減できます。

実現した場合歯、温室効果ガスの排出量が2050年代に約90%削減されて、気温上昇も21世紀末には1.5℃程度まで戻すことができると考えられています。
特に強く求められているのが、経済システムの再構築です。

現在の資本主義は、「勝者総取り」のシステムになっています。
現状のシステムから、ウェルビーイングの成長へと移行することを目指しているのです。
現状の自由市場では、お金がお金を生む不労所得経済が台頭することで、何十億もの人々の機械やウェルビーイング、安全を犠牲にしていると強く批判しています。

レポートの原著者には、ローマクラブ共同会長で気候変動や持続可能性などの分野で30年以上主導的な役割を担っているサンドリン・ディクソン・デクレープ氏や、『成長の限界』の共同執筆者であるヨルゲン・ランダース氏、科学者研究チームを主導して「プラネタリーバウンダリー」の枠組みを提唱したヨハン・ロックストローム氏などが名を連ねています。

デクレープ氏は、「持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム」でもオンライン講演を行い、気候変動に対するトランスフォーメーションの必要性や各国が技術や財政を共有する新しい経済モデルを強化して、世界的危機を打破したいと強く語っています。

かつて、ローマクラブが経済成長の限界について警告したレポートから50年が経過し、気候変動の深刻化や生物多様性の喪失、エネルギーや食糧危機などの地球規模で起こる様々な脅威に直面しています。

『万人のための地球』では、持続可能でレジリエントな社会を実現するにはどうすればいいかを具体的に示していて、既存のシステムから1人1人が劇的に変革を意識することで明るい未来を描くことができると示しています。

まとめ

ローマクラブが発表した『万人のための地球』では、現在世界中で起こっている様々な問題に対して、解決策となる具体的な方法を示しています。
特に5つのお互いに密接な関係性がある分野では劇的な方向転換が必要としていて、経済システムの変革の必要性についても述べています。
現在、世界中で取り組んでいるSDGsの目標を実現するためにも、まずは個々の意識から方向転換をして、変化を実現させましょう。