パワハラにおける雇用トラブル対策は?

その他のリスク

企業がその対応を求められる問題の一つに、パワハラによって生じる雇用トラブルの対策があります。
この問題は以前から生じてはいたものの、近年では特に問題となりやすく、企業評価にもつながってくる問題なので、早急な対策が求められているのです。
果たしてそれには、どう対策していくべきなのでしょうか?

パワハラはなぜ起こるのか?

パワハラは、正確にはパワーハラスメントといいます。
組織の中での地位、あるいは権限などを利用して、下のものに嫌がらせなどをすることをいいます。

職場においては、主に上司が部下に対して行うもので、業務上適正ではない行為によって、心身への苦痛を与えることや、職場環境へと悪影響を与えることが当てはまります。他にも、先輩が後輩に対して行う場合や、同僚同士でも当てはまる場合があります。また、場合によっては部下が上司に対して行う場合でもパワハラに該当することがあります。その場合は、PCスキルに優れた部下が、PCを操作できない上司をバカにする行為などが当てはまります。
最近増えているのが、正社員による非正規労働者、契約社員やパート、派遣社員に対してのパワハラです。
また、他社との取引で立場が下の相手に対しての行為も、パワハラに該当することがあります。
要するに、立場の違いがある中で、その立場を利用した行為や言動によって、相手が嫌がるようなことをした場合は、パワハラとなるのです。
そして、加害者の多くはそれを意識しているのではなく、当たり前のように考えているのです。
パワハラは、その内容によって6種類に分けられています。
これは、過去の裁判例などに基づいた典型例とされているのですが、全てのパワハラ案件がこれに当てはまるという訳ではありません。
パワハラの分類は、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過少な要求、個の侵害の6種類に分類されています。それぞれの分類について、簡単に説明していきます。
身体的な攻撃というのは、単純に暴力などをふるうことです。
物を投げつけたりすることも、この分類に含まれます。最もわかりやすいといえるパワハラで、年輩の方に多い傾向があります。
精神的な攻撃は、単なる叱責ではなく行き過ぎた叱責、もしくは暴言などが当てはまります。
どこまでが指導の範疇になり、どこから行き過ぎとなるのかを判断するのが難しい場合もあります。

人間関係からの切り離しは、学校のいじめが始まるときのように、無視をしたり人間関係から意図的に除外したりすることです。
職場の人間が自分以外は和気あいあいとしている中で仕事をするのは、精神的な苦痛を生むことになるでしょう。

過大な要求というのは、まず無理と思えることを当たり前のように要求したり、仕事を妨害したりすることです。
また、特に不要と思えることを命じるのもこれに当てはまります。

反対に、過小な要求というのはその人の持つ能力や経験を考えると、合理性がないと思われる簡単な仕事を命じることです。
極端になると、そもそも仕事を全くさせないということもあります。

個の侵害は、プライバシーの問題です。
仕事とは関係ない、プライベートな部分へと無遠慮に踏み込んで詮索したりすることが当てはまります。

パワハラはこのように分類されるのですが、それではさらに具体的な例をいくつか見てみましょう。

具体的なパワハラの例

具体的なパワハラの例として、労災認定がされたものや本人が自殺に追い込まれた事件などがあります。
そのような例をいくつか紹介していきます。

とある水道局では、そこに勤務していた男性がパワハラによって自殺しました。
内容としては、その男性に女性経験がないことや容姿について直接の上司である主査が嘲笑し、それに係長や課長も同調していました。
さらに、男性に対して果物ナイフを向けて振り回し、脅すような言動を頻繁に発していたそうです。

直属の上司から暴言を受けたことで精神障害を発症し、自殺後に裁判で労災と認定された事件もあります。
存在が目障り、お願いだから消えてしまえ、給料泥棒、病気じゃないのかといった暴言を受けたことが原因と認められたということです。

当たり前の権利である、産休を申請したことがきっかけとなった事件もあります。
とある学院で、クラス担任をしていた女性教諭が産休をきっかけに担当学科とクラス担任から外され、およそ4年以上も別室に隔離されてしまいます。
さらにその後は、7年間も自宅研修を命じられたことから、不法ということで裁判となりました。

金属加工会社の従業員男性が、暴行を受けた末に自殺した事件もあります。
仕事上のミスを会社役員から実用に攻められ、恫喝や棒鋼などを受けたうえでその損害賠償を求められ、家族に請求すると脅迫されたうえで退職願を書くことも強要されました。
その結果、耐えきれずに自殺することとなったのです。

パワハラとして事件になった例は他にもたくさんあります。
特に昔からある会社などは、以前からこうして指導しているなどの理由からパワハラが当たり前に思われていることもありますが、実際にこのような事件なども起こっている以上は是正していくべきでしょう。

パワハラでの訴訟が起こると、企業としても大きなダメージを受けることとなります。
次の章では、パワハラを防ぐ方法について考えてみましょう。

パワハラを防ぐには?

さて、パワハラの対策として私たちは、どのようなことをするべきでしょうか?
早速、その対策方法を考えてみましょう。

まず、パワハラを予防するためには会社としてパワハラを断固許容しないという姿勢を見せましょう。
シンプルではありますが、社長などのトップからメッセージとしてパワハラの撲滅を訴え、何かあったら相談するよう呼びかけるのが効果的です。

実際にパワハラが起こっていないかを把握するために、社内アンケートを行うのも有効です。
中にはパワハラ予備軍もいるかもしれませんし、定期的にアンケートが行われると思えばうかつな行動にも出にくくなるでしょう。

どこからがパワハラとなるのか、ピンとこない人もいるでしょう。
パワハラがどのようなものか、周知徹底するために研修会などを開催することも考えたほうがいいでしょう。

就業規定には、関係規則としてパワハラの懲戒規定なども定めて、パワハラに対する罰則を明確にしておきましょう。
実際にパワハラが起こった際には、罰則を与える根拠にもなります。

パワハラは、本来なら相談するべき相手である直属の上司から受けることが多いため、誰にも相談できなくなることがあります。
いつでも気軽に相談できるように、相談窓口を設けておき、秘密裏に相談できるような体制を整えておくことで、早期発見につながるでしょう。

どの職場でも、人間関係がある以上はパワハラが起こる可能性を否定できません。
これまでは良くても、何かしらのきっかけでパワハラが始まることもあり得るのです。
自分の会社は大丈夫、と油断せずに、今後もパワハラが起こらないように備えておきましょう。

まとめ

職場で起こるパワハラは、決して珍しいものではありません。
お互いの考え方が合わないというだけでも、パワハラに発展してしまうことがあるのです。
パワハラを放置して、自殺や労災、裁判などになってしまうと、企業イメージも悪化して大打撃となる可能性があります。
それを防ぐためには、パワハラが起こらないように備えておき、もし起こっても早期に対処できるような体制を整えておきましょう。