経営者が認知症になった場合の会社の悲劇

経営者が高齢化してくると、心配になってくるのが経営者の健康です。
特に、経営者が認知症となってしまった場合は、一見するとわかりにくいこともあって会社にとって悲劇的なことが起こる可能性もあります。
経営者が認知症になってしまった場合、どのような悲劇が生じるのでしょうか?

会社に起こる悲劇とは

それでは、経営者が認知症となった場合に、会社に起こりうる悲劇とはどのようなものでしょうか?
具体例を交えて考えてみましょう。

まず、認知症の初期症状として最も起こりやすい症状は、記憶障害です。
記憶障害が起こるということは、忘れっぽくなるということです。
それが会社の経営者であれば、仕事にも支障が出るようになるでしょう。

例えば、経営者から仕事の指示を受けた社員が、その通りに仕事をして報告しに行くと、そんなことを頼んでいない、と叱責されてしまうかもしれません。
いわれたことをやったのに、叱責される羽目になった社員も納得がいかないでしょう。
しかし、経営者は頼んだことをすっかりと忘れているため、自分が理不尽なことを言っているとは自覚できないのです。

また、認知症となった経営者がそのままの地位にいると、それを利用しようとする人も現れるかもしれません。
例えば、どう考えても会社に不利益となるような契約書を持ち込み、口頭で騙しながら契約させようとする、ということが考えられます。

経営者が認知症となった時、特に問題となるのが、自覚症状がない場合です。
認知症は、最初のうちは忘れっぽくなったという自覚があることが多いのですが、症状が進むにつれて不自然さを判断する能力もなくなってくるので、自覚症状が徐々に失われていきます。

自覚症状がないのに、認知症だから経営を退くよう周囲から言われても、言いがかりをつけられているような気になって認めない事も増えてきます。
しかし、それでは経営が成り立たなくなる一方です。

認知症となったまま、会社のトップであり続けた場合は、取引先からの信用も失われていきます。
仕事を依頼しても忘れられることが増え、徐々に仕事の依頼も減っていくこととなるでしょう。

また、銀行も経営者が認知症であれば、融資を新たに行うという事はしなくなります。
場合によっては、返済能力に疑いがあるという事で現在の融資についても早期返済を求められる可能性もあるでしょう。

経営者が認知症となった場合は、こうして会社の経営に多くの問題が生じてしまい、どうしようもならなくなる可能性が高くなります。
そうならないように、経営者が心掛けておくべきことがあります。

経営者が常に心掛けておくべきこと

経営者として心掛けておくべきこととしては、まず自分に何かあった場合でも、会社に影響を与えないようにする事です。
自分が倒れたら、そのまま会社も倒れてしまうというのは望ましくないでしょう。

そのためには、会社の命令系統をしっかりと定め、自分が指示できなくなった際には誰の指示に従えばいいのか、明確にしておく事が必要です。
例えば、社長の下に専務が2人いるばあいなどは、どちらが代わりに支持を出すのかを文書などで明確にしておく必要があるでしょう。

また、自分が持っている株式などの権利については、自分が経営者としての務めを果たせなくなった時は誰かに委託できるようにしておく必要もあるでしょう。
その際に有効な方法としては、家族に託すための家族信託や、だれか後見人となる人を決めてその人に委託する任意後見制度などがあります。

そして何よりも大切なのは、違和感を覚えた時にはすぐに病院へと行くことです。
昔からの経営者の中には、自分が健康であるということを誇りにして病院へ行くことを恥と考える人もいるのですが、病気によっては発見が早ければ対処しやすいものもあります。

特に、認知症の場合はその前段階として軽度認知障害というものがあります。
これは、認知症ではないもののそれに近い症状が現れるものであり、軽度認知障害となった場合は数年以内に認知症となることが多いのです。
そのため、認知症に対しての備えをする覚悟ができるでしょう。

こうした備えをしたうえで、事業の承継者についてもしっかりと決めておきましょう。
事業を承継する人がいない場合は、何かあった時はM&Aを申し込むようにという指示を残しておいてもいいかもしれません。
自分の健康によって、従業員が苦労しないように用意しておいた方がいいでしょう。

認知症となった時の対策は

認知所となった時に備えるのであれば、家族信託によって家族へと自分が持つ会社の株式を委託するようにしておくといいでしょう。
また、家族に経営などを委託できる相手がいない場合は、専門家や直属の部下などを後見人として、その扱いを任せる任意後見制度の契約をしておきましょう。

家族信託でも、任意後見制度でも、契約したらすぐに有効とは限りません。
契約内容に、自分が判断能力を失ったら有効とする、という決まりを加えておけば、認知症などで判断力が失われた時にはすぐにその契約が有効となります。

また、家族信託などで委託する相手を定めたとしても、その株式によって得られる利益を受け取れる人や、死亡時に相続する人などは別途定めることが可能です。
経営については弟に委託したいが、株式の相続は孫にしたいという場合でも、問題なく指定できるのです。

ただし、注意点としては家族信託と任意後見制度は、すでに認知症となってしまった場合には契約することができません。
あくまでも、自分で判断できる能力がある、と診断される状態でなければ、契約はできないのです。

すでに認知症となってしまった場合は、成年後見制度を利用しましょう。
これは、本人ではなく家族などが手続きをしてもいいのですが、家庭裁判所へと申し出て後見人を選定してもらい、その後見人が財産の管理などを行うというものです。

成年後見制度の場合は、後見人を自分で選ぶことができません。
あくまで裁判所が選任しますが、その際は身内などから選ばれることはなく、弁護士や社会福祉士などの専門家が選ばれることとなります。
そのため、経営の代行は難しいでしょう。

任せる相手を自分で選びたい場合は、認知症となる前に手続きをしておく必要があります。
また、認知症となってしまった後でも、まだ判断能力を喪失していないと医師から診断された場合は、任意後見制度の契約などが可能な場合もあります。

ポイントとなるのは、判断力の有無です。
認知症となってしまっても、初期段階ではまだ判断力があるかもしれないので、その点でもやはり病院には早めに行くべきでしょう。

認知症というのは、どれだけ健康に気を付けていて、誰がいつなるかわからないものです。
経営者が高齢化してきた場合は、いずれ認知症となることを覚悟しておく必要があるでしょう。
そのための備えについては、あらかじめしっかりと行っておくべきです。

まとめ

中小企業などでは、後継者不足に悩む経営者が高齢化しつつあります。
そうなるとやはり、認知症などの心配も出てきます。
経営者が認知症となったことで、会社を悲劇が襲うということも珍しくありません。
経営者の健康状態によって、会社の経営も危なくなるようなことがないように、日頃から認知症となった時の備えをしておくように心がけましょう。
また、事業を承継する人がいない場合は、M&Aも視野に入れた方がいいかも知れません。

 

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