日本には多くの中国人観光客が訪れていましたが、11月14日に中国外務省は中国国民に対して、日本への渡航を控えるよう呼びかけました。
中国人の安全にリスクが生じていると主張しているのですが、本当に安全が脅かされているのでしょうか?
中国が日本への渡航を自粛させる理由について、解説します。
なぜ中国は日本への渡航を自粛させるのか
日本には近年多くの中国人観光客が訪れているのですが、中国外務省は11月14日に日本への渡航を自粛するよう国民に呼びかけたのです。
呼びかけの理由としては、日本の治安が不安定になって中国人を狙った犯罪が多発しているというものですが、根拠は示されていません。
実際になぜ中国政府が日本への渡航の自粛を呼びかけたのかというと、高市首相の発言に対する抗議の意図があるといわれています。
高市首相は11月7日の衆議院予算委員会において、中国が台湾を海上封鎖したケースについて言及したのです。
海上封鎖が武力行使を伴うものだった場合は、存立危機事態になりうると答弁したのですが、内容については最悪のケースを想定したと説明しました。
中国では高市首相の発言に対して、日本が台湾海峡情勢に武力介入した場合は侵略行為となると述べ、答弁の撤回を求めたのです。
国民に対する日本への渡航自粛の呼びかけは実質的な報復措置とみられ、日本に経済的打撃を与えたことを広くアピールしています。
中国の国営メディア英字紙では、高市首相の発言を誤った発言と断じて、渡航自粛の呼びかけによって日本経済に打撃を与えたと報じているのです。
また、同氏には北京国際研究大学の教授の予測も記載されており、観光が日本にとって自動車輸出に次ぐ第2の外貨収入源だと指摘しています。
中国人旅行者が大幅に減少することで宿泊や飲食、小売、娯楽など幅広い分野の雇用に大きな影響が出ることになり、日本経済への打撃となるという予測を述べたのです。
また、訪日観光客の多くを占めているのが中国で、全観光客支出のうち中国の観光客が21.3%を占めていると強調しました。
しかし、そもそも中国が渡航の自粛を呼びかけた理由となっているのは、中国人への攻撃や犯罪の増加です。
日本が危険だと訴えているのですが、日本の治安がいいということは世界的にも高く評価されており、中国の主張は一般的な認識とは異なります。
日本政府では中国側の主張を否定しており、アメリカのメディアでも同様に否定されているのです。
日本は世界で最も安全な国2026という調査で世界9位にランクインしており、中でも暴力犯罪に関しては世界で最も安全といわれています。
渡航自粛を呼びかける理由がすでに破綻しているのですが、中国メディアは変わらず日本たたきの記事を出し続けているのです。
中国の国内・国際ニュースを発信しているメディアでは、北京の旅行予約サイトのデータを引用して、11月17日までにソウルの検索数が日本の都市を抜いたと伝えました。
中国国営タブロイド紙英字版のグローバル・タイムズは、12月の中国発日本行き5548便のうち、16%に当たる900便以上が欠航になったと強調しているのです。
原因は『中国の台湾』に関する誤った発言だとして、政治問題が続く限り大半の中国人観光客は単純に他の目的地を選ぶとも述べています。
記事の中には「日中関係の回復は結局、日本政府の選択にかかっている」とも書かれており、日本に発言を撤回するよう迫っているのです。
12月8日に青森県で震度6強の地震が起こったことで、中国政府は再び渡航の自粛を呼びかけ始めています。
地震が相次いで起こり多くの負傷者が出ているため、政府は中国国民の安全と健康を守るためにも注意喚起をすることが責務だと主張しているのです。
渡航自粛による影響
中国からの訪日客が減少してしまうと、日本の観光協会が一定の影響を受けることになるのは間違いありません。
しかし、日本よりも最も大きく影響を受けているのは、中国本土や日本で生きている中国国民でしょう。
東京で働く中国人ツアーガイドは、自身でツアー事業を立ち上げて毎月1000~2000人の訪日中国人をガイドしていました。
しかし、中国政府の渡航自粛の呼びかけによって一部の予約がキャンセルとなってしまったのです。
ただし短期的には問題なく90%以上の顧客は予約取り消しをしていないのですが、理由はキャンセル料にあると考えています。
ホテルや交通機関の予約は直前のキャンセルだと高額なキャンセル料を請求されてしまうため、損失が大きいことでツアーの予約も取り消されていないのでしょう。
しかし来年のツアーについては大きな影響を受けると予測しているように、中長期的には打撃を受けてしまうと思われます。
上海の旅行代理店でも団体旅行の予約が大きな影響を受けており、日本旅行を計画していた顧客の90%からツアーを中止して代金を返金するよう求められているのです。
日本で観光業に携わっている中国系の人々も、予約の取り消しなどが相次いでいる現状に不安を抱いています。
中国政府の発言も個人の旅行客には影響がないと思われていたのですが、実際には政府の発言を絶対と信じる人が多いのでしょう。
特に政府系企業で働く人々は政府の方針に逆らうことで職を失う可能性もあると考えており、既に支払った費用が無駄になるという人もいます。
政府が自粛を呼び掛けているとはいってもキャンセル料は自分で負担する必要があるため、航空券とホテルの予約をしているとキャンセル料がかかるのです。
1.5ヶ月分の給与相当の額を支払っている人もいて、国営病院の看護師として働いているため上司に渡航を止められてしまったといいます。
中国系の航空会社はキャンセル料を免除すると発表していますが、男性は海外の旅行予約サイトを利用したため払い戻し不可となったのです。
払い戻しできるのは復路のチケットだけで、往路とホテル代は最低でも1週間前にキャンセルしなければ返金されません。
いきなりの大きな損失に納得できない男性は、許可なしで旅行に行くことも検討しているのですが、国営病院で働いている以上上司に知られたときのリスクは大きいでしょう。
国営研究所で働く職員も、研究所が年次休暇の承認手続きを保留にしており、良くなという無言のプレッシャーを受けて翌月に予定していた日本旅行の中止を迫られています。
一方で日本では、今回の事態を冷静に受け止めており好機として中国依存からの脱却も考えているのです。
どちらかといえば中国人の方が大きなダメージを受けているように思える今回の渡航自粛ですが、高市政権が続く限りは改善されないかもしれません。
まとめ
中国政府が日本への渡航の自粛を呼びかけたことで、訪日を予定していた一部の中国国民は予定を変更することを迫られる事態となっているのです。
また、日本の観光業界で働く多くの中国人もいきなりの政府の方針変更に振り回されて混乱が生じているのですが、むしろ日本人はあまり影響を受けていません。
既に呼びかけの根拠となっていた安全性の問題もほぼ問題ないことが分かっているのですが、いつまで続けるのでしょうか?

