環境変化などにより現れる新たな危険、エマージング・リスクとは?

事業リスク

近年、想定外の事象によって起こるエマージング・リスクが注目されています。
エマージング・リスクの原因は様々で、環境変化も大きな原因となっているのです。
近年は異常気象も頻繁に起こっていますが、原因となる環境変化には、どのようなものがあるのでしょうか?
エマージング・リスクの原因となる環境変化について、解説します。

エマージング・リスクとは?

社会の在り方は、近年特に目まぐるしく変化しています。
特に注目されているAIの他、医療技術の進歩や生活の変化、さらには環境変化なども起こり、社会も今まで通りの形では成り立たなくなっているのです。

様々な変化から新たに生まれるリスクのことを、エマージング・リスクといいます。
また、元からあった技術などが進歩してリスクが増大した場合も、エマージング・リスクに含まれます。

今までもあったもので、リスクが認識されていなかったものの、新たに認識されたというケースもエマージング・リスクの1つです。
例えば、科学的知見の進歩によって新たに分かったこと、社会の認識が変化したため分かったこと、生活スタイルの変化によるものなどがあります。

エマージング・リスクは、現時点ではあまり気にならないようなリスクでも、将来的には重大なリスクになってしまう可能性があります。
新たに生じたリスクなので、将来どうなるのかを正確に予想するのは難しいのです。

また、エマージング・リスクだけではあまり重大なリスクとは感じられない場合でも、他のリスクと同時に起こった時に重大なリスクへと変化する可能性があります。
リスク管理の意思決定も、リスクに関する評価がまだ定まっていない段階で行う必要があるのです。

想定されているリスクよりも重大なリスクが生じてしまい、被害も大きくなるようなことも十分にあり得るのです。
被害を抑えるためには、早期の対応が必要となるでしょう。

統計的に予測することができるリスクだけではなく、現在は小さいものの将来的には大きくなってしまう可能性があるリスクを、大きくなる前に発見します。
将来トレンドについても予測して、事前に対策しておく必要もあるでしょう。

まだリスクの内容がわからないため、具体的な対策を決めず先送りにするという方法を選ぶことも、意思決定の1つとして考えられます。
リスクが不明瞭な段階ではあらゆることに対策を練らなくてはならないため、費用対効果の面で対策が難しいこともあるのです。

はっきりとした意思決定をするには、リスクの具体的な内容を早期に発見する方法に加え、リスクについて分析する必要があります。
また、意思決定についてルールを定めておく必要もあるでしょう。

エマージング・リスク以外は、過去にも発生した例があります。
しかし、初めて発生した時はエマージング・リスクに含まれていたかもしれません。
過去に様々なデータを得ることができているリスクは、対策などもすでに立てられているでしょう。

前例がないエマージング・リスクは、被害の規模や影響の大きさなどが予測しづらいので、時に深刻な被害をもたらすこともあります。
発生すると予測するのが難しいリスクですが、できるだけ正確に予測して対策を練っておきましょう。

エマージング・リスクが起こる環境変化

環境変化によってエマージング・リスクが現れることはありますが、環境変化があればすべてのケースで現れるというわけではありません。
エマージング・リスクが起こる環境変化には、どのようなものがあるのでしょうか?

企業を取り巻く環境は、マクロ環境とミクロ環境(業界環境)、内部環境の3つに分けられます。
大きな枠としてマクロ環境があり、内部にミクロ環境が含まれていて、ミクロ環境の内側に内部環境があります。

マクロ環境に含まれるのは、法規制や政治、景気や国際問題、経営、金利などの経済、人口動向や社会トレンド、環境問題、価値観などの社会、情報技術、生産技術、技術革新などが含まれる技術の4つの項目です。

マクロ環境は、大きな方向性を示すものです。
社会全体で同じ方向性を向くことになるため、企業を経営する上では方向性を見誤らないよう対策していくことが大切です。

ミクロ環境には、市場規模や技術革新の動向、収益性、成長性、コスト構造などの市場、顧客セグメント、顧客ニーズ、顧客の動向などを含む顧客、競合ポジションや新規参入、競争要因の変化などの競合という3つが含まれています。

ミクロ環境は、マクロ環境に沿っているかどうかを第一に考えます。
マクロ環境とは方向性が異なるようであれば、長期的なスパンでマクロ環境に収斂していくこととなるでしょう。

内部環境は自社経営資源とも呼ばれ、技術開発力や生産技術力、製造力などが含まれる開発生産力、経営能力や競争力、業態変革力などの経営力、営業力、企画提案力、顧客サポート力などの販売力の3つが該当します。

自社の持つ経営資源に関係する項目で、失敗する要因は外部要因によるものより、内部の弱みや行動などの要因であることが多いとされています。
マクロ環境はミクロ環境に影響を及ぼし、ミクロ環境は内部環境に影響するのです。

特に気にするべき環境変化には、マクロ環境の政治では米中対立の激化や補助金制度、
行政支援策などが挙げられています。
経済では、エネルギーや原材料の高騰、金利や為替などの変化があります。

社会においては、以前からある少子高齢化、並びに人材不足があります。
コロナ禍を経て変化したライフスタイルについても、対応する必要があるでしょう。
企業では、従業員の働き方の変化なども起こっています。

また、気候変動や災害リスクの高まりもあります。
全国各地で大雨や地震などの災害が起こっているため、備えておく必要があるでしょう。
また、カーボンニュートラルによる脱炭素の動きは、生活にも大きく影響を与えます。

技術の面では、AIが特に注目されています。
また、ロボットの発達や自動運転の普及なども大きく影響するでしょう。
多くの企業で進められているDXについても、無視できない流れです。

まとめ

現在注目されているエマージング・リスクは、環境の変化によっても起こりうるものです。
環境の変化というのは、企業を取り巻く様々な要因の変化をいいます。
環境が変化したことで現れる新たなリスク、今までの技術が発達したことで顕在化するリスクなどがあり、企業は早期に対応しなければ大きな損害を被るかも知れません。
分野ごとの注意したい環境変化について、自社への影響と対応策を検討しておきましょう。