福祉・医療事業:院内感染対策の不備か経営に与える影響

病院は安全・安心が前提に経営をされることが必要ですが、院内感染など医療事故と隣り合わせで厳しい環境にある状況です。
日本で院内感染による死亡は推測年間約1
6,500件だと言われており、患者や家族に苦痛を与えるだけでなく病院の信頼を損なうことにもなるため十分に対策を講じておく必要があります。


必要になる院内感染対策とは?
院内感染は建築的な対応の中で防止することができないと感じるかもしれません。しかし建築的対策の手法には様々なものがあり、建築計画の初期からの十分に検討と調整、合意形成といった段階を踏むことが必要です。
院内感染の対策で最も考慮すべきことは感染経路の遮断です。免疫力が低下している患者が感染しないようにするためには、感染源からの隔離と感受性体の保護が大切です。

・感染経路を遮断
接触、飛沫、空気といった感染経路を遮断するために、そして拡大を防いで封じ込めるためには、汚染エリアの区画、汚染物の搬送や集積ルート、動線の交錯を避けた計画が必要です。また、手洗い設備を適切に配置する計画も重要です。

・感染源の隔離
感染源は感染症患者から発生しますので隔離し封じ込めることが危険因子の拡大を防止することになります。消毒、滅菌、汚染物の保管廃棄処理諸室、医療廃棄物庫などの計画が必要です。

・患者の保護
隔離診察室や隔離病室、クリーンルームを設置するなど、感染患者を安全に隔離することが必要です。換気回数、空気清浄度、気密性といった性能の設定をどのように行うかも重要になります。
建築的な部分で行う対策
清掃性や防汚性の高い仕上げ材や、埃だまりになりにくいカーテンレールを選ぶことが必要です。
床面が清潔に保てるような配管処理や、コンセントの位置などにも注意して電気コードが床を這い回らないようにする配慮も必要です。
飛沫感染を防ぐには距離が重要ですので、病室や透析ベッドなどの間隔も2m以上は確保することが必要です。
また、通常とは別の出入口を確保することや、トリアージ対応ができるスペースの確保といったことも必要になるでしょう。
コストがかかっても必要?
対策を講じれば建築費は高くなるでしょうが、院内感染が起きてしまった時のコストと比較した場合には必要な対策として考えましょう。
エアコン設備が感染を拡大させることも?
病院だけでなく老人ホームなどでも、冷暖房器具としてエアコンが使用されることが多く見られます。
色々な種類の製品があるため、部屋に合わせて設置することもできますし、後づけや交換なども容易なため選ばれることが多いでしょう。
しかしエアコンは対流式になっていますので、室温にむらが生じやすく空気を乾燥させます。のどの痛みや肌荒れだけでなく、ウイルスなどによる院内感染の危険性が高まります。
なぜエアコンが院内感染に影響する?
院内感染の感染経路のうち、空気感染は空調の影響を受けやすいという特徴があります。空気感染は直径5μm以下の粒子に、ウイルスや菌が付着して浮遊することで感染を起こします。
対流式の暖房は飛沫核を空気中に拡散させますので感染しやすい環境を自然と作ることになります。このようなことも踏まえて、冷暖房器具についても検討する必要があると言えるでしょう。
院内感染の不備で経営に影響を与えないために
院内感染が起きてしまわないように、建築設備等も踏まえて対策していく必要があります。もしも院内感染が起きれば、患者に負担をかけるだけでなく病院は信用を失い、経営にも大きな打撃となります。そのことを踏まえて十分に対策を講じるようにしましょう。