DX時代に中小企業が取り組むべき自社ブランディング

経営戦略

近年、様々な分野や業種でDXへの取り組みが進められています。
DX時代と言われる現在、中小企業が取り組むべきなのは自社ブランディングです。
DX時代における自社ブランディングは、どのように行えばいいのでしょうか?
中小企業におけるブランディングの必要性と、ブランディングのための経営戦略について解説します。

ブランディングはなぜ必要か

企業の経営において、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進められ、企業の経営戦略は大きな変化を見せています。
しかし、中小企業が大企業と同じ取り組みをしていては、到底かなわないでしょう。

中小企業にブランディングが必要な理由として、まずは差別化が必要という点が挙げられます。
ブランディングによって差別化は実現できますが、それには2つの方向性があります。

1つ目の方向性は競合他社に追いつき、差を埋めるためのものです。
これは、他社と同レベルになることを目指すということで、Point of Parity、POPと呼ばれるものです。

しかし、これは単に先を行く他者に追いついて同じ土俵に上がるというだけのものであり、先んじている他社に利があるため同レベルで競い合うのは並大抵のものではなく、うまくいっても他社とターゲットを分け合うことにしかならないでしょう。

また、POPで先行している大企業の他社に追いつこうとすれば、かなりの資金力が必要となります。
大企業に開発力や知名度、資本力などで対抗するのはかなり難しいでしょう。

そこで目指すべきはもう1つの方向性、自社の独自性を伸ばして他社を追い越していくPoints of Difference、PODと呼ばれるブランディングです。
そのためにはまず、自社の柱となるものを決めてそれに力を入れ、その一点では他社に負けないという点を伸ばしていくことが必要です。

例えば、お茶であれば特定保健食品(トクホ)の認定を得たり、水や茶葉などをその名前だけで興味を惹かれるようなブランド力のあるものにしたりした特徴のある製品、特別な製品といったものが考えられます。

PODでは、他社との差別化をすることでブランドを確立する、自社にしかないものを突き詰めたブランディングです。
この方法であれば、他社に負けているところではなく他社にはないものだけを強調するため、資金力などの勝負ではなくなります。

また、スピードで他社を上回るためにもブランディングは必要です。
マーケティングは時代の変化に伴って重要となるのですが、それ以上に重要となるのがトライアルです。

プロダクトに対する評価はその時代や人々の好み、運などで大きく異なり、ヒット商品や新たな価値の創生には考える時間も必要となるでしょう。
しかし、従来の様にマーケティングを丁寧に行ってからリリースするという方法では、競合他社に出遅れてしまう可能性が高くなるのです。

ビジネスにおいては、時間が非常に重要であり、慎重を期して時間をかけるよりも素早く動くことが求められることも多々あります。
そして、意思決定の素早さという点においては、中小企業が大企業に勝っているのです。

そして、ブランディングに取り組むことで企業として目指す方向性が明確になり、その強みであるスピードがさらに上がることとなります。
社員の意思統一もなされて、無駄も省かれるでしょう。

そして、従業員や社内において自社の強みを自覚して、全体で育てていくという意思統一が出来るというのもブランディングのメリットです。
そういった内部、インナーでのエンゲージメントを高めていくインナーブランディングも、注目が高まっています。

社内にブランディングが浸透していくと、従業員もそれぞれが働くことに誇りをもって働く意欲も高まります。
そして従業員の満足度も高まり、同じ方向を向いてそれぞれが目標を持ち、仕事に取り組んでいくことが出来るようになります。

中小企業が勝ち残るための経営戦略

企業にとって、ブランディングというのは企業が目指すべき理想像を明確にすることが本質です。
企業としてどうなりたいのかを明確にしたのが、ブランディングです。

事業を立ち上げてしっかりと売り上げがあり、経営を続けていくことが出来ているのであれば、少なくともある程度魅力がある事業やプロダクトなどがあり、継続していくという経営者の思いがあるでしょう。

そういった思いは、ブランドの芽といえるものであり、その芽を社内外の誰もが企業の柱として認識できるようにしていく施策こそが、ブランディングなのです。
ブランディングは単に広告宣伝を行って知名度を上げていく事ではなく、企業としての価値を磨いて価値を高めていくことで、売れ続ける力を獲得するためのものです。

そして、適切なターゲットに自社のプロダクトの価値を認めてもらい、膨大な種類がある商品の中からユーザーに選ばれるために必要なブランド力を得て、それを高めていくための経営戦略がブランディングと言われる施策です。

ブランディングに成功した例を紹介すると、まずシャンプーにおいて徹底した植物由来の原料にこだわった商品を発売し、キャッチコピーでもそれを伝えることでヘアケアブランドとしての地位を獲得したものがあります。

ヘアケア商品には大企業がいくつもあるのですが、それらの大企業とは別の方向性でこだわりを持ったブランディングを行うことで、中小企業が地位を築き上げたのです。
広告宣伝ではなくSNSやWebでのPRを行い、若者を中心として支持が広がっています。

また、アメリカの新興企業のアウトドアブランドも、一定の地位を築き上げています。
アメリカには老舗のメジャーなアウトドアブランドがあり、新興企業が入り込む余地はないように思われるのですが、その中で若者を中心として熱心なファンを獲得することに成功したのです。

その企業では、アウトドア用品を作って販売することで、貧困に苦しむ人を助けるというブランドプロミスを掲げました。
人気商品のバックパックはフィリピンの工場で手づくりによって製造されているもので、カラーバターンやデザインなどを任せてフィリピンを経済的に支援し、働く人々のプライドを醸成することにも繋げたのです。

フィリピンに限らず、世界の貧困に苦しむ国の産品や労働力を積極的に起用することで、商品にストーリーという付加価値を付けることに成功したのです。
そして、それに共感した若者たちが熱狂的なファンとなっています。

まとめ

日本の企業のブランディングとしては、他社には真似できない技術力や低価格などが重視されることが多いのですが、ブランディングはそういった物ばかりではなく、中小企業でも可能な付加価値の創生や、コンセプトの統一によるスピード、そして他社に勝る一点を用意することなども重要です。
ブランディングによって、社内の意思を統一し一丸となって取り組んでいくことで、企業の価値も高めることができるでしょう。