ミッションやビジョンが経営に必要、という言葉はあらゆる場面で聞くようになりました。おそらくこの記事をお読みの方も聞いたことがあるという方が多いでしょう。
しかし、これを自分ごととして捉えられている経営者の方はそれほど多くないよう傾向にあるようです。特に中小企業の経営者の方にとってはミッションやビジョンは二の次になってしまうケースが多いようです。
そこで今回は、中小企業にこそミッションやビジョンが必要である理由について解説をさせて頂きます。
ミッション・ビジョンとは何か?
ミッションやビジョンはよく耳にする言葉ではあありますが、実際意味を正確に把握できている方は少ないようです。
そこでまずは、ミッションやビジョンとは何かを解説させていただきます。
ミッションは直訳すると使命や重要な任務という意味で、ビジョンは将来の構想や展望という意味です。
つまり、会社経営をどんな使命(ミッション)をもって行い、それを実現するための構想(ビジョン)は何かを明確にすることが重要と言われているのです。
例えば、いまや外国人の訪日旅行の定番にもなっているドンキホーテホールディングスのミッションとビジョンは次のようなものです。
「ミッション」
顧客最優先主義
「ビジョン」
第一条 高い志とモラルに裏づけられた、無私で真正直な商売に徹する
第二条 いつの時代も、ワクワク・ドキドキする、驚安商品がある買い場を構築する
第三条 現場に大胆な権限委譲をはかり、常に適材適所を見直す
第四条 変化対応と創造的破壊を是とし、安定志向と予定調和を排する
第五条 果敢な挑戦の手を緩めず、かつ現実を直視した速やかな撤退を恐れない
第六条 浮利を追わず、中核となる得意事業をとことん突き詰める
いかがでしょう?ドンキホーテらしさを感じるミッション・ビジョンですね。
このように使命実現のために会社が向かう方法を定義して置くことで、一貫した意思決定が可能になり、このミッションやビジョンを読んだことがない顧客に対しても、会社のスタンスは伝わり共感が生まれるのです。
中小企業にとってミッションが後回しになってしまう理由とは?
中小企業の経営者の方がミッションやビジョンの構築を後回しにしてしまう要因はいくつかあります。
中でも大きな理由としてあるのは、経営者自身がトップ営業マンであることが多いからでしょう。
つまり、現場に立ちすぎていることから、どうしても視野が今日や明日までしか見えず、意思決定が短期的なものになってしまいます。
しかし、この状況ではついつい目の前の利益に走りがちな状況のため、意思決定に統一性を出しにくく、結果的に顧客の共感を得にくいというデメリットがあります。
これを回避するためには、日々の業務の中で時間を創出することは難しいと思いますから、年末や年度末などにまとまった時間を確保してミッションやビジョンを構築する時間を作ることがいいでしょう。
その際、経営者一人で考えるよりも、役員や将来を期待している社員などと共に考えることがおすすめです。
そうすることで、より多くの従業員の理解を得ることができ、会社全体に浸透しやすいメリットがあります。
また、これらの構築を後回しにしてしまう他の理由として、経営者自身がミッションやビジョンを構築するメリットを理解していないことがあります。
しかし、中小企業だからこそミッションやビジョンは必要なのです。
ミッション経営がもたらすメリットとは?
中小企業にとってミッションやビジョンを構築することは多くのメリットを生み出します。
現在あらゆる商品やサービスが均一化し価格競争に陥っている状況です。
価格競争で大企業に勝つことは非常に至難の技です。
つまり、中小企業は価格以外の部分で顧客に選ばれる必要があるのです。
QPSという言葉をご存知でしょうか?
QはQuality(品質)、PはPrice(価格)、SはService(サービス)を意味しています。顧客が購買行動を起こす際に、無意識のうちにQPSで比べていると言われています。
このQPSのうち価格での競争は中小企業にとって不利ですから、品質やサービスで勝負をする必要があるということになります。
そしてこの時にミッションやビジョンがあることが大きなメリットになるのです。
現在の顧客はある意味非常に目が肥えている顧客とも言えます。
単純なサービスや品質だけで判断はせず、その背景にあるストーリーまで読み取ろうとします。ここ最近「もの売り」から「コト売り」へと言われているのはこのためです。
つまり、商品のバックエンドを語る上でミッションやビジョンが明確にあれば、より顧客の共感を得やすいというコトです。
そしてこの共感はリピートにもつながります。人口減少の現在で顧客のリピートは企業の存続に必要不可欠な要因です。
また、ミッションやビジョンは会社全体の意思決定スピードを上げてくれます。
これまで経営者でなければできていなかった意思決定も、ミッションやビジョンという軸があることで現場に意思決定を任せられる機会が増え、積極的な権限譲渡が可能になるのです。
変化の激しい現代で意思決定スピードの速さもまた、企業を存続させるためには必要な条件といえるでしょう。
このように中小企業ほど大企業にたちむかうためや時代に淘汰されないためには、ミッションやビジョンが経営に必須となるのです。
是非この機会にまとまった時間を取って頂き、構築していただければ幸いです。