政府が備蓄米を放出して全国各地のスーパーで販売されていますが、米の値上がりは留まらず米不足が続いているでしょう。
そんな中で注目されているのが、昨年8月に開始した米指数先物という新たな取引ですが、実は米の高騰の原因ともいわれているのです。
日本の米先物とは何か、解説します。
米の価格はどのように決まるのか
米がスーパーから消え、価格が例年の2倍前後になってから1年以上が過ぎ、いまだ価格は下がらないままです。
毎年猛暑となっていることで、新潟や東北などで栽培されている一等米は常々不足気味で、新米との入れ替わりの時期に品薄となったことがニュースで騒がれました。
買い占めも起こり、さらに気象庁が出した南海トラフ地震臨時情報がダメ押しとなり、残り僅かな米が買い占められて売り切れが続いたのです。
米の需要が高まっていると明らかになったことで価格も上がり、生産者が出荷する際にJAから支払われる生産者概算金はだんだんと吊り上がっています。
米の価格はどのように決まっているのかというと実は手探りで、夏の雰囲気に左右されるうえに政治が介入することもあるのです。
生産者概算金が値上がりしたことについても、どのようにして上げ幅が決まったのかは誰も正確に説明できません。
米の集荷率が全国平均で54%にもなるJAが価格を決めているといわれていますが、価格の決め方については昔から不透明だと指摘されているのです。
米価の乱高下が起こるたびに問題視されている点として、米の価格には指標がないという点で、相場すらもはっきりしていません。
概算金については公表されていますが、JA以外の卸売業者、集荷業者との取引価格については不明なままなのです。
そもそも、JAから卸売業者や小売業者に売却している価格についても公表されていません。
青果や花卉については自由に取引される市場があるのですが、国産米については当てはまる市場がないのです。
取引のほとんどは集荷業者やJA全農と卸売業者との相対取引が占めているため、相場は概算金や米穀業界紙が業者に取材して作っている相場情報のコーナーなどになります。
農水省がJAや出荷業者などに聞き取って公表している相対取引価格もあるのですが、公表されるのはリアルタイムではなく、半月以上遅れてからです。
2024年7月に公表されている相対取引価格は1万5,626円で、現状2万円近くなっている米価の異常さがはっきりとわかります。
米の相場を大きく映し出すような指標が国内にはないせいで、農家や業界関係者は相対取引における米価を把握することに頭を悩ませてきたのです。
しかし、2024年8月に米の先物取引が始まったことで、米価の把握がしやすくなったといえます。
日本の米先物とは?
先物取引というのは、一定以上先の期日で定められた商品をあらかじめ決めた価格で取引するというものです。
現時点での取引価格とは関係なく価格を決めることができるため、値上がりや値下がりとは関係なく取引できるという特徴があります。
例えば、現在1万円で取引されている商品を2か月後に1万2000円で購入すると契約すれば、取引時に1万5000円になっていたとしても1万2000円で購入できるのです。
ただし、取引時に値下がりして5000円になっていたとしても、1万2000円で購入する必要があります。
江戸時代から1939年まで米の先物取引は大阪で行われており、いったん廃止されたものの再び大阪で2011年から試験的に行われていました。
当時は取引が低調だったため2023年に再び廃止となったのですが、改めて市場を開設するための国の認可を受けて2024年8月20日から本格的にスタートしたのです。
取引を行う堂島取引所の有我渉社長は、日々値段がわかるようになるため生産者だけではなく消費者にも役立つと考えています。
取引所の名前を冠して堂島コメ平均と呼ばれ、活発に取引が行われるほど不透明だった米の価格が明らかになっていくでしょう。
取引の際は現物の米を取引するのではなく、平均価格から算出した指数を対象として取引されることとなります。
今回は、他の品目の先物取引を行っている業者以外にもネット証券大手のSBI証券が取引に参加することとなったのです。
現状の主な米の取引は相対取引で価格がどのように決まるかが明らかではないため、不透明だと指摘されています。
近年は猛暑が続いて米の育成が不十分となって供給が需要に追い付かなくなっているため、米の価格が上昇して先物取引も活発になっているのです。
堂島取引所の大株主で、傘下のSBI証券が取引に参加するSBIホールディングスの北尾吉孝社長も、堂島コメ平均についてコメントしています。
堂島コメ平均は今まで不透明だった取引価格のベンチマークとして活用できるので、透明性に資するという考えを述べたのです。
また、今後さらに取引が活性化することに期待したいとも述べているため、SBI証券ではかなり注目していることがわかります。
しかし、先物取引においては価格が高騰しやすいという特徴もあるため、現在の米価格の高騰にも影響しているのではないかと思われているのです。
米の価格が高騰しているのはJAに責任があると考えられているのですが、実は米先物が原因という可能性もあります。
先物取引は事前に将来的な取引価格が把握できるため、生産者としては収入を事前に把握でき安定した経営につながるでしょう。
消費者にとっても、買い占めや不当な価格での取引への抑止力となることが期待されています。
数年間の猛暑の影響で供給が減ったことなどを背景に米の価格が上昇しているため、先物取引であれば価格変動リスクを避けることができるというメリットもあるのです。
特に、外食産業や弁当の製造販売を行う小売業などにとっては、仕入れ値が大きく変動しなくなるため安定した経営にもつながります。
まとめ
2024年8月から、大阪の堂島取引所ではコメ先物という、米の価格を対象とした先物取引が始まっているのです。
米の先物取引自体は江戸時代からあり、一度取引は廃止となったのですが2011年から2023年まで復活させており、2024年からは本格的に再開することとなりました。
米の相場について明確になるうえ、米の仕入れ価格についても安定したものとなるのですが、米価格が高騰した原因になっているともいわれているのです。