経営者は後継者準備を早めに考える必要が

その他のリスク

日本の中小企業の課題として圧倒的に多いのは、後継者問題。
問題の解決のために、早めに考えることが大切だと言われますが、中々見つからないという事情を抱えている経営者もいるでしょう。
ですが、その重要性はよく理解していますよね。
今回は、なぜ後継者準備を早めに始めるべきなのか、その理由について迫ります。

後継者準備が早期に求められる2つの理由

早い段階での後継者準備が求められる理由の根本は、企業の存続にかかっていると言っても過言ではありません。
そもそも老舗のお店が何代も続いているのは、後継者がきちんと見つかったり、教育が行えていたりするからですよね。
「老舗」の動きを参考に見てみると、業種の違う中小企業であっても見習うべき部分がたくさんあるのです。

今回の記事では、そのポイントとなる2点をご紹介しましょう。

①先代と後継者候補の意思のすり合わせができているか
②知的資産の引き継ぎを行うこと

これらは、単純に後継者候補が見つかったからといって、容易にできる内容でないことをみなさんは理解できるはずです。
どれも大切なポイントですから、一緒に確認していきましょう。

①先代と後継者候補の意思のすり合わせができているか

1つ目のポイントは、現在の経営者との意思疎通ができているかどうかになります。
このことは、仕事をしているのだから、多少のズレはあっても大丈夫だと思っている人もいるでしょう。
しかし、「意思疎通」は、会話ができているかという最低限の側面では足りません。
職場で働くという意味では、上記の内容でも対応できるでしょう。

ですが、後々経営者になることを考えると、前経営者の意思や企業の思い、理念といった部分を理解しなければなりませんよね。
中には、経営者が交代するタイミングで、新しい事業にチャレンジすることを考えている場合もあるでしょう。
そうなると、単に後継者がいるからゆっくりやっていけば良いというのでは、間に合いませんよね。
何より、お互いの意思疎通ができていませんから、スムーズな交代が困難になってしまう恐れがあるのです。

現経営者が、「まだ自分は元気だから候補者だけ決めておく」という場合もあります。
しかし、決めておくだけでは、後継者候補が今後何を学ぶべきか、行動すべきかが全く分からない状態になりますよね。
後継者準備の一つとして、意思疎通、「対話」をするというのは、何よりも重要だと考えて下さい。

②知的資産の引き継ぎを行うこと

2つ目のポイントは、中小企業で確保している資産状況に関係することです。
会社の資産と聞くと、例えば、現在保有している金銭的な資産や、設備的な資産が挙げられますよね。
その中に、「知的資産」と呼ばれる内容があるのです。

知的資産とは、中小企業で言うと、事業に対する人の依存度を示します。
例えば、ある商品を作る際に、工程の中にはそれぞれ職人さんがいる場合をイメージしてみて下さい。
近年は、専用の機械を利用して生産していることもありますが、手作業がメインになる商品だと、人の手が重要になりますよね。
このように、人に依存して生み出される資産を、「知的資産」と言うのです。

そして、これは中小企業で働いている従業員に限りません。
中小企業の中には、少数精鋭で運営しているため、経営者も自ら職人として活躍していることがありますよね。
この場合だと、経営者にも知的資産が発生していることになるのです。
そのため、後継者準備の中には、候補者にも技術面の引き継ぎが欠かせないことになるでしょう。

この部分の引き継ぎで重視されているのは、1年や2年程度で引き継ぎができないことにあります。
例えば、現在の経営者や従業員が一人前の作業ができるようになるまでに、最低でも5年かかるような技術が必須だったとしましょう。
これをマスターして経営者になるためには、最低でも5年かかることになりますよね。
このことに触れずに、後継者は後からでも探すことができると考えていると、いざという時に引き継ぎが困難になってしまいます。

これでは、企業自体の存続にも直結します。
仕事の中には、人に依存せず、スムーズに引き継ぎが行えるような業種も、確かにありますよね。
ですが、職人的なスキルの継承が必要になる職種ほど、候補者の準備や育成が必須になると考えて下さい。
そう考えると、のんびり構えていてはいけないことがよく分かってくるはずです。

現経営者がぶつかる「引き継ぎの壁」とは?

ところで、先程の2つのポイントは、案外経営者は理解しています。
ですが、実践となると中々上手くできないという事例が多いのです。
なぜ、頭では理解していても、実際の準備や教育には活かされていないのでしょうか?
これには、経営者自身が抱えている「引き継ぎの壁」が関係しています。

引き継ぎの壁には、2つの項目が挙げられます。

①準備で求めるレベルが高すぎる
②多方面での調整が必須になる

これらは、現経営者に対して求められる行動になりますから、自分の行動を振り返りながら読み進めてみて下さい。

①準備で求めるレベルが高すぎる

一つは、後継者準備として様々な教育を行う際に、自分の求めているレベルに到達させようとしてしまうことです。
これは、「経営者」という立場を経験されている人には、共感できる内容になるでしょう。
「自分はこうやって頑張ってきた」「こういう方法で困難を乗り越えた」ということは、経験者としての強みになりますよね。
何より、実体験は自信にも繋がります。

それを後継者候補にも求めてしまうという経営者が多いのです。
要するに、自分と候補者が独立した個人でなく、結びつきを強めて考えてしまっているのでしょう。
当然ですが、自分の理想に叶った人材というのに遭遇できるのは、かなりレアなケースですよね。

準備に強い思いがあるというのは大切ですが、強すぎるのも問題です。
準備には時間がかかることを今一度確認し、どこまで関わるのかを明確化しておくべきでしょう。

②多方面での調整が必須になる

もう一つの壁は、現経営者が候補者に対してスムーズに仕事ができるように、事前に調整を図らなければならないことです。
この負担は、中小企業の経営状態に左右されるでしょう。
しかし、あまり経営が芳しくない場合には、金融機関等との調整が求められることになりますから、負担が大きくなりますよね。

状況によっては、金融機関だけでなく、現在の従業員や役員、関連する企業等に対して調整をしなければなりません。
何代も引き継いで企業を経営している人からすると、過去の自分にも同じような形を前経営者が行っていたかもしれません。
ですが、いざ自分が当事者となると、結構大変ですよね。

この多方面での調整をする場合は、1日2日で終わりません。
自社との関わりの範囲内で考えた時に、複数の人や企業にも連絡を取らないといけない場合には、年単位の時間がかかるでしょう。
そのため、後継者候補の準備と同じくらい、この項目も時間がかかると思って下さい。
改めて2つの壁をクリアしようとすると、短期間で何とかなると思っていては見通しが甘いですよね。

これから後継者準備を進めていく、始めようと考えている経営者のみなさんは、思った以上に時間や手間がかかることを再認識しておきましょう。
その上で、後継者がデビューできる時期を判断すると良いかもしれませんね。

まとめ

後継者準備は早い方が良いというのは、本当のことです。
現役経営者のみなさんは、自分の仕事をこなしながら準備をしていくことになりますので、時間がかかるのは当然のことでしょう。
また、専門のスキル等、定着に時間がかかる内容がある中小企業ほど、早めに動き始めた方が今後のためになります。
基本的には時間がかかることですから、本格的な行動までいかなくても、「対話」のみでも進めていきましょう。