教育業界:教材の著作権に関する問題は教育機関の大きなリスクに

現在教育分野では情報通信技術を活用する方法が多く取り入れられるようになっています。しかしここで問題となるのが教材の著作権に関しての問題で、著作権を侵害していると気がついていないケースもあるため注意が必要です。

 


著作権処理が不要な著作物
著作物でも権利の目的にならない著作物や、著作権(保護期間)が切れた著作物に関しては、許諾を得る必要はありません。

・権利の目的にならない著作物とは?
著作権法第十三条で権利の目的とならない著作物として例示されています。
例えば法令、告示、訓令、通達などで、判例等も広く周知されるべきで保護の必要はないでしょう。
その中でも報告書などで高度な学術的要素を持つものに関しては、一般の通達などとは区別して考えられますので保護の対象です。

・著作物の保護期間とは?
原則、著作権者の死後50年(法人著作物は公表後50年、映画の著作物は公表後70年)です。
引用という行為は著作権侵害?
著作権者の許諾を得ず利用する方法もあります。それが「引用」です。
引用か利用かの判断は、利用者と権利者で解釈に隔たりが大きい場合があります。基準としては、著作権法第三十二条で規定された引用として利用する方法があり、次の条件を満たすことが必要です。
・著作物が公表された物であること
・自分の論説が主であり、自分の論説を実証(もしくは補強)するための従が引用であること
・自分の文章との明瞭な区分けを行うこと(段落の変更や括弧で括るなど)
・ 必要最小限度の使用であり、出典が明記されていること
これらが守られていない場合には引用ではなく利用になります。逆に守られていれば、著作者から勝手に引用しないでと言われても引用は勝手にやってよいことになっています。
改行がされていなかったり、出典が明記されていなかったり著作権侵害になりますので注意しましょう。
eラーニングは著作権侵害になる?
教育現場で著作権侵害が増える背景として、著作権法第三十五条の存在が関係しています。
ここでは、教員や学生が授業で利用するなら他人の著作物を許可なく複製して利用しても良いという例外措置が認められています。書籍や新聞などをコピーして授業に利用することができるのです。
しかしeラーニングなどは著作物を公衆送信することに該当しますので、著作権法第二十三条で規定のある公衆送信権を侵害しないように著作権者から了解を得ることが必要です。
しかし第三十五条があるからと他人の著作物を授業で使用されることがあり、知らない間に著作権侵害という行為に至っているのです。
eラーニングで著作権侵害になるケースとは?
例えば教室に同時にいない学生でも別の場所で受講できること、後日終了した講義を視聴できるオンデマンドなど、さらに教室で開講されていない講義でも視聴できるといったことです。
これらが著作権の侵害になれば、eラーニングの意味がないと感じるかもしれませんが、eラーニング教材の中に第三者の著作物を利用していなければ問題ありません。
教育現場の中で、知らない間に著作権を侵害していないか、今一度確認することが必要になるでしょう。