ソウル雑踏事故から学ぶ群衆雪崩とは?

事故・災害リスク

2022年10月29日に、韓国の首都ソウルで群衆雪崩が起こり、多くの死者や負傷者を出しました。
群衆雪崩は、どのような原因で起こるのでしょうか?
また、それが起こりうる状態になった時に、身を守る方法はあるのでしょうか?
ソウル雑踏事故から、群衆雪崩について学びましょう。

ソウルで起こった群衆雪崩とは?

2022年のハロウィン間近の10月29日、ソウルの梨泰院に多くの人が集まっていたところで、雑踏事故が起こりました。
狭い道に多くの人が集まっていたところで、群衆雪崩が起こったのです。

群衆雪崩というのは、無秩序な集団によって発生してしまう事故のことです。
将棋倒しやドミノ倒し、群衆事故とも呼ばれる、多くの人が密集している時に起こり得るものです。

現場となった梨泰院は飲食店やバー、クラブなどが多いところで、日本人観光客に人気のあるエリアから地下鉄駅に繋がる、幅約3メートル、奥行き約40メートルの狭い下り坂です。

その狭い空間に、数百人以上の人がいました。
密度は1平方メートルあたり、5人から10人以上になっていたと思われます。
そこで起こったのが、群衆雪崩です。

将棋倒しやドミノ倒しの場合、発生した一点から一方向、あるいはそこから広がる形で連続して倒れていくことが多いのですが、群衆雪崩の場合は若干異なります。
群衆雪崩は、中心部から起こることが多いのです。

満員電車に乗ったことがある人ならわかるかもしれませんが、人が押し合いへし合いしている状態では全方向から圧力を受けてしまうことがあります。
少しでもスペースを空けようとすれば、真ん中によって行くことになるため、中心部にいる人には大きな負担がかかるでしょう。

周囲から圧力がかかると、中心部の人は息をするのも難しくなり気絶してしまうこともあります。
そうして、一瞬圧力が緩んだ際に転倒してしまうのです。
転倒した人の周りで圧力をかけていた人は、支えを失ってしまいその隙間に倒れこんでいきます。

それが連鎖していくのが、群衆雪崩です。
雪崩は高い所から低い所に流れていきますが、群衆雪崩の場合は中心部に流れ込んでいくような状態になります。

今回、ソウルで起こった雑踏事故では、日本人女性2人を含めて156人が死亡し、76人が負傷しました。
単なる人混みと侮っていると、大惨事になることがあるのです。

過去に起こった類似の事故

過去に、群衆雪崩のような事故が起こった例はいくつもあります。
実は、日本でも何度か起こっているのです。
過去に起こった類似の事故を紹介します。

日本で起こったものを紹介すると、1934年に京都駅で海軍の入団者を見送るために集まった人々が将棋倒しとなったことがあります。
この時は、死者77人、重軽症者74人の被害が生じました。

1937年に起こった事故は若干違いがありますが、横浜駅を出発する軍用列車が出発する際、見送りの人が高島通に殺到して一部の人が線路内に押し出されてしまいます。
そこに急行列車が進入してきて100人以上が跳ね飛ばされ、子どもを含めて26人の死者が出てしまいました。

1954年には、皇居の一般参賀に訪れた人で将棋倒しが発生し、死者16人、重軽症者77人を出しています。
1956年には、新潟県の彌彦神社に初詣客が殺到し、124人の死者と77人の重軽傷者が出ています。

1960年には、横浜で行われたラジオの歌番組の公開録音が行われた際に観覧希望の人が殺到したことで事故が起こっています。
収容人数を超える聴衆が来たことで中に入れなかった人が猛抗議をしていて、門が開いた際に並んでいる列に割り込んだのです。

そのせいで混乱をきたし、将棋倒しとなって12人が死亡、14人が負傷しました。
この事故によって当該のイベントは開催が中止され、事故が起こったラジオ関東では当日夜の放送予定の番組をすべて休止しました。

2001年、明石の花火大会が終了した後、帰路に就く人々が歩道橋に集中して混雑したことで事故が起こったこともあります。
この時は、死者11人、重軽症者247人の被害が生じています。

ソウルでは、以前にも群衆事故が発生しています。
1960年、ソウル駅に旧正月で帰省する乗客によって混雑し、将棋倒しが起こったことで31人が死亡しています。

香港でも、1993年にランカイフォン(蘭桂坊)で新年を迎える人々が集まって混雑した時、徳己立街との境界地点で将棋倒しになってしまい、日本人1人を含む21人の死者と62人の重軽傷者が出ました。

上海でも、2014年の年末に外灘で新年のカウントダウンを行うために人が集まっていた時、将棋倒しが発生しています。
この事故では、36人の死者と47人の負傷者が出ています。

アジア以外でも、類似の事故がいくつか起こっています。
その中でも有名なものはヒルズボロの悲劇と呼ばれる、イングランド・シェフィールドのヒルズボロ・スタジアムで起こった事故です。

1989年にサッカーの試合で、ゴール裏の立見席に収容能力を超えるサポーターが押し寄せたことで、96人の死者と766人の重軽傷者が出ました。
これは、イギリスのスポーツ史上最悪の事故と言われています。

群衆雪崩を防ぐための方法

群衆雪崩による被害を防ぐためには、どのような方法が有効なのでしょうか?
まず、密集状態になった時に有効な方法は、自分の胸の前で腕を組むことです。
こうすることで、体の前方に隙間ができるのでクッションになってくれます。

集団雪崩を防ぐには、倒れないことが最も大切です。
そのため、混雑することが予想される場所に行くときは、ヒールが高い靴を避けるようにしましょう。
ヒールが高い靴はバランスを崩しやすいので、倒れる可能性が高くなります。

また、飲酒をしていると足元がおぼつかなくなることがあるので、避けるようにしてください。
飲酒後は、ある程度酔いが醒めるまで混雑している所にはいかず、座って休憩しましょう。
かばんや服装なども、引っかからないようなものを選びましょう。

もし転倒してしまった場合は、あおむけにならずうつ伏せの状態で体を丸め、頭とお腹を守りましょう。
密度は急に高まるのではなく徐々に増えていくので、密度が高まってきた時は抜け出すことをおすすめします。

まとめ

ソウルで起こった集団雪崩による雑踏事故は、過去にも何度か類似する事故が起こっているものです。
それを防ぐには混雑する中にいないようにすることが大切ですが、どうしてもイベントなどでは想定外の人数が集まることもあり、完全に対策することは難しいでしょう。
もし雑踏の中に入ってしまった時はどうしたらいいのか、倒れないようにするには何に気を付けるべきか、倒れてしまったらどうしたらいいのかを覚えておきましょう。