企業のリスク分析と対策が必要な時代

事故・災害リスク

企業の経営は、単に起こったことに対処すればいいというわけではありません。
今は、起こりうるリスクについて分析し、あらかじめ対策を講じる必要がある時代なのです。
しかし、リスク分析のやり方や対策について、知らないという方も多いでしょう。
リスク分析の方法と、対策の考え方について解説します。

企業に起こるリスクの分析方法

企業経営において、リスクが起こるのは避けられないものです。
どれだけリスクを避けようとしても、思わぬリスクが生じる可能性はゼロにはなりません。
それよりも、思いつく限りのリスクを想定し、それに素早く対処できるよう備えておくことが重要となるのです。

こうしたプロセスを、リスクマネジメントといいます。
あらかじめ備えておけば、そのリスクは想定外のものではなく、管理下に置かれるリスクとなるのです。

リスクに対処できるよう、適切な備えをするにはまず、リスクを評価しなくてはいけません。
そのためには、3つのプロセスがあります。

最初に行うべきプロセスは、リスクの内容について把握することです。
リスクには、大きく分けてハザードリスク、オペレーショナルリスク、戦略リスク、財務・金融リスクの4つがあります。

ハザードリスクは、自然災害やテロ、訴訟、労災、汚染などの外的要因をはじめとした、予想が難しい事象を原因として損害が生じるリスクです。
発生頻度に関して、コントロールすることはできません。

オペレーショナルリスクは、社員の健康と安全の損失や製品品質の低下、コンプライアンス違反、人材の流出などのリスクをいいます。
こうしたリスクの多くは、発生頻度や影響度をある程度コントロールすることが可能です。

戦略リスクには、マーケティングや社会的信用の喪失、業界の嗜好の変化、法律の改正などのリスクがあります。
会社全体での経営判断が必要なリスクで、コントロールはオペレーショナルリスクより困難です。

財務・金融リスクは、キャッシュフローや資産価値、株価や金利の変動、流動性悪化などに関するリスクです。
金融市場の変化によって生じるリスクであり、その損害の大きさは資産や負債の大きさで異なります。

これらのリスクの事象を見極めたら、それぞれ生じる原因を、内的要因か外的要因かで分け、判断します。
そうすることで、より適切に素早く対応できるようになります。

このようなリスクのうち、自社に起こりうるものを把握したら、次にリスク分析を行います。
リスク分析では、生じる可能性のあるリスクの詳しい内容と、その定量的評価を行います。

そうしたら、何のリスクから処理するべきかを決定します。
リスクの対処する順番については、発生可能性と影響度を見て決定します。
その2つが大きければ大きいほど、優先的に処理しなくてはいけないリスクということになるのです。

リスクへの対策を考える

リスクに関して優先順位が決まったら、それぞれの対策を考えましょう。
リスク対策には、大きく分けて4つの方法があります。
その4つのうち、どの対策をするべきかを考えて、より具体的な内容を決定するのです。

リスク対策の1つ目は、リスク回避です。
そもそもリスクが生じないように、その原因となることに対策をしておく方法です。
例えば、事故などが起こるリスクに対して、未然に防げるようその原因に対策をしておく場合などです。

また、これにはリスクの原因となるものをあらかじめ取り除いておくことも含まれます。
例えば、河川が増水して洪水が起こった時に被害を受けるような地域にある会社の施設、例えば工場などをあらかじめ、川から離れている場所へと移転しておくことなどです。
また、故障により生産性の低下や事故のリスクが高くなっている設備を、壊れる前に交換することなども含まれます

2つ目は、リスク軽減です。
リスクが生じた際に、その損失を最小限にすることを目的とした対策です。
そのためには、リスク管理プロセスをより強化する必要があります。

例えば、想定されるリスクに関して保険に加入し、金銭的な損失が生じた際はそれを補償してもらうという方法です。
大きなイベントでは、中止せざるを得なくなった時に備えて保険に加入していることも多いでしょう。

3つ目は、リスク転嫁です。
自社で対応できるリスクが生じたときなどに、社外へとそのリスクを移すことをいいます。
先ほどリスク軽減として紹介した保険への加入は、リスク転嫁での対策にもなりうるでしょう。

4つ目が、リスク保有です。
これは、リスクが許容範囲内だと判断した場合に、それを自社の財務体力に吸収して、事故によって生じた損失や賠償は自社ですべて支払うことです。

リスク対策には、このような方法で行います。
リスクの内容に応じて、適切に処理をしなければいけません。
個々のリスクで、それぞれベストな対策となるよう検討しましょう。

リスクヘッジや危機管理との違い

リスクの管理や分析、対処などを行うのがリスクマネジメントです。
それと似ているものとして、リスクヘッジや危機管理などがあります。
それらには、違いがあるのでしょうか?

リスクヘッジは、リスクが想定以上に大きくならないように、低減させる方法のことを言います。
投資でいえば、分散投資をして特定の銘柄の株価の上下に損益が依存しないようにすることが目的です。

危機管理は、すでに生じた損失に対して、その被害を最小限に抑えるものです。
リスクマネジメントは損失が生じる前に対策を行うものであり、危機管理はすでに起こった損失への対策です。

この2つは、リスクマネジメントと内容や中身が似ているため、混同しないように注意しましょう。

まとめ

どのような形であれ、企業には様々なリスクが生じる危険性があります。
その対策は、可能な限り多くのケースを検討したうえで行うべきでしょう。
また、対策については分析などを終えたうえで行われます。
そうすることで、対策の方法をより詳しく決定することができるでしょう。
企業の経営では、リスクについて分析し、詳しい内容を基に対策をしなくてはいけません。