IR汚職事件について解説

法務リスク

オリンピックに向け、年が明けてからも様々な話題で連日持ちきりですよね。
そんな中、ある好ましくない事件が起こってしまったことを、みなさんはまだ覚えているでしょうか?
そう、”IR汚職事件”です。
この事件には一体どのような問題点があるのか、また、その背景には何があったのかを、今回の記事で解説したいと思います。

IR汚職事件が問題視されている理由とは?

年末に、大きなIR関係の事件が発生しました。
現在進行形の大きな施設に関わっている事件になりますから、大まかな概要をニュースで見かけたという人も多いかと思います。
まずは、そもそもどのような事件であったのかをおさらいしましょう。

・IRを進めている衆議院議員が逮捕された

事件の大まかな概要は、IR関係の政策や調整を進めている、秋元司衆議院議員が賄賂を受け取っていたということです。
賄賂を受け取るのは、犯罪になりますよね。
ところで、今回の話とは関係ありませんが、国会議員には、国会の会期中には不逮捕特権があるという話を聞いたことがありませんか?
日本で国会議員が逮捕されたというのは、久方ぶりの出来事ですから、多くのメディアで取り上げられたでしょう。

そして、どのような形で賄賂を受け取ったのかは、ご存知の方もいると思います。
例え国会議員であっても、プライベートな旅行の際は、自分のお金でその費用を賄いますよね。
しかし、そのお金を、ある企業からの賄賂で賄っていたのです。
その企業とは、「500ドットコム」という中国企業になります。

ここでなぜ、中国企業が?と思う人もいるでしょう。
そして、賄賂を受け取ったのは、これだけで済みません。
講演料やそのほかの目的で、高額な賄賂を数回も受け取っていましたので、かなり根深い関係になっていたことが伺えますよね。

かなり高額なお金の動きがあったとなると、国会議員としての信用も当然、落ちてしまいます。
しかし逮捕後も秋元議員は「受け取っていない」と、賄賂の事実があったことを否定しているという、事件の根底に関わる発言をしています。
とはいえ、金額が金額ですから、全く証拠がないとも言い切れず、中々これといった進展が見られない状況になっていますよね。

このやり取りが本当かどうか、私たちが判断するには情報が少なすぎますが、一議員の不祥事にがっかりしたという方もいるかと思います。
また、IRという観点から見ると、単純な汚職事件だとは言い切れない事情があることを知っていますか?

・IR関係の企業との繋がり自体が大きな問題

そもそも、賄賂という行為以上に、今回はそこに関わっている企業も大きな問題となりました。
先程述べた中国企業は、企業名だけではどのような事業を行っているのか分かりませんよね。
実は、IR関係の事業を行っている企業なのです。
この事実を知ると、ある思惑が見えてきませんか?

それは、IRに中心的に関わっている議員に接触し、賄賂を渡すことで、IR誘致の際に便宜を図ってもらおうということです。
賄賂を事前にもらっているならば、その見返りとして、受け取り側も何かをしなければなりませんよね。
今回の場合は、IR誘致の際に優遇してもらうということを、念頭においていたかもしれないでしょう。

ここでみなさんの中には、関連企業と関わりを持ってはいけないの?と、思う人もいるかもしれません。
候補として知っておくくらいならば、別に良いと思ってしまいますよね。
ですが、どのような企業にお願いするかは、あくまで公平な立場で考えなければなりません。

例えば、どのような施設を作ることができるか、という観点だけでも、企業によって違いますよね。
しかし、ここで賄賂を貰っていたら、どうでしょうか?
お金をくれたし、知っている企業だから、内容はともかく任せようということになってしまうかもしれません。
これでは、公平な判断で選ばれた、とは言えませんよね。

このような問題点も相まって、大きな事件としてIR汚職事件は報道されていたのです。
そのため、単純な汚職事件と比べると、その問題のスケールが違うことが分かるでしょう。

日本のIRを取り巻く環境や今後はどうなるの?

ところで、なぜ中国企業が関連してきているのか、そんなにIRってすごい施設なのと思う人もいるかもしれません。
ここでは、海外から見る日本のIRを取り巻く環境について、ご説明したいと思います。

・IRは大きな収益が見込める施設

IRは、カジノを含めた複合型の施設になります。
そのため、カジノ等を設けている国では、その利用者から大きな収益が見込めますので、大きな利益の生み場所になっているでしょう。
日本でも、観光客の誘致に一役買うということで、今後の動きに注目がされていますよね。

しかし、日本でもギャンブルはありますが、カジノは合法ではありません。
ですので、このような施設を作るにあたり、国内・国外問わず、どこが建設するのかは注目の的になっていると言っても過言ではありません。
例えば、建築を依頼された企業には、大きな利益が落ちてくることが容易に予想できるでしょう。

そのため、様々な企業が計画に関わりたいと、声がかかるのを待ち望んでいる状態だと思って下さい。
最近までの状況だと、現在施設の誘致予定地なると自治体に、各企業が多様なアピールをしていることを知っていますか?
今後の動きは未定な部分が多いですが、早いうちに行動した方が企業的には得ですよね。
あの手この手で動いている企業も多いですから、競争は激化していると言ってもいいでしょう。

大きなビジネスチャンスを逃したくないのは、どこの企業も同じですよね。
その最中に、今回の事件が起きたのです。
つまり、企業側にとっては、重要なポジションにいる議員に、抜け駆けして企業が近づいたということになりますよね。
この事実が明らかにならなかった場合、どの企業が選ばれるのかは明確ですし、出来レースになっていたことでしょう。

現在の競争状況を知ると、より今回の事件は重大であることが理解できると思います。

・事件のその後は…?

事件が発覚してから、次々と新たな不正疑惑が明らかになりました。
簡単に言うと、関与していたのは秋元議員だけでなく、複数の議員も関わっていた疑惑が出てきましたから、より大きな問題になりますよね。
後から発覚した議員たちは、全員が関与したとは認めていませんから、まだまだ不明な点が多いのも事実です。

複数人関わっているとなると、今回の事件は1人だけの問題とは言えませんよね。
もしかすると、今後、他の議員でも起こり得る可能性だって、否定できません。
それを防ぐためには、IR関係の事業者との疑わしい関係を無くすことが求められますよね。
ですので、接触ルールを設けるような制限をかける、というような動きも、国会では議論されています。

また、カジノの誘致や建設についても、見直した方がいいのでないかという声もありますので、白紙になってしまうという可能性もなくはないでしょう。
どのような経緯で接触したのか、他にも不正がないかどうか、まだまだ調査が進められています。
今回の事件をきっかけに、IRの今後の動きはどうなっていくのか目が離せません。

当初からIRの誘致は難航していることが多かったですが、より一層動きづらくなってしまう状況になるでしょう。
国内だけでなく、海外の動きにも注目したいですね。

参考URL 
NHK解説委員室
(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/418067.html)
時事ドットコムニュース
(https://www.jiji.com/jc/v7?id=20191225ir)

まとめ

IR施設の建設が成功すると、誘致した自治体・企業には大きな利益が生まれることが約束されていると言っても過言ではありません。
特に、オリンピックの開催は集客力の大きなポイントになりますから、誰しも注目してしまいますよね。
今回の事件の発覚により、よりIRに対しては厳しい目で見られることが多くなるでしょう。
明らかになっていない疑惑、不正に関しては、しっかりと追及して公正な形で進めてもらいたいものです。