損害保険の歴史について解説します

事故・災害リスク

保険といえば、生命保険をまず思い浮かべる人は多いでしょう。
しかし、実際には自動車保険や旅行保険、火災保険など幅広く対応している損害保険の方が身近な保険であり、活用されるケースも多いでしょう。
しかし、損害保険というのはいったいいつから存在しているのでしょうか?
その歴史について、考えてみましょう。

意外と古い損害保険の歴史

保険のイメージとしては、近代に発祥したものというイメージが強いと思いますが、損害保険が誕生したのは果たしていつ頃なのでしょうか?
実は、その歴史はかなり古いのです。

損害保険の起源がいつか、というのは諸説あるのですが、一説には紀元前2250年頃にあった隊商の間で交わされた取り決めが、その起源であったと言われています。
その内容は、隊商が資金を借りて出発し、道中で被災したり盗賊の被害に遭ったりした場合、その損害は資金を貸したものが負うことになる、というものです。

その後、古代ギリシャの時代になると海上貿易も盛んになってきたのですが、まだまだ嵐に遭って沈む船も多く、また海賊も横行していたので安全な貿易とは言えませんでした。
そこで、海難事故の被害については、船の持ち主と荷物の持ち主で損害を分担するという習慣が誕生しました。
これが海上保険の始まりで、ここから損害保険が正式に始まったとされています。

その後、14世紀を過ぎると大規模な航海が増えていき、15世紀半ばには大航海時代と呼ばれる時代になりました。
その頃になると、金融業者が間に入って航海を失敗した時は積み荷の代金を金融業者が負担する代わりに、成功した時には手数料をもらうという組織的な形に変化しました。

海上保険から始まった損害保険ですが、ロンドンで1666年に起こった、4日間にわたって火事が続き、市内の家屋の85%が焼失した大火をきっかけとして、地上でも保険の必要性が考えられ、世界初となる火災保険会社が1681年に誕生し、そこから火災保険会社が次々と誕生していきました。

この頃、ロンドン港の近くにあったコーヒーハウスのロイズ・コーヒー・ハウスには多くの船主などが集まって情報交換をしていたため、保険を扱う業者もよく訪れていて取引が行われていました。
その流れで、「ロイズ」という国際的な保険組織が形成されていったのです。

世界的な損害保険の成り立ちは、このような流れで生じていました。
それでは、日本で損害保険が始まったのはいつ頃なのでしょうか?

損害保険が日本で始まったのは?

日本では、古くから相互扶助という考え方が根強くあり、奈良時代や平安朝時代には義倉という、農作物を凶作時に窮民へと分与する制度がありました。
また、室町時代には無尽や頼母子講など、相互に救済し合う制度が色々と存在していたのです。

海上保険が始まったのは、江戸時代に盛んとなった朱印船の頃からといわれています。
その頃は、海難事故の危険性も高かったことから、金融業者が資金を出して航海の成功時には利子を付けて元金を返済し、難破してしまった時はその資金が返済されないというものです。

これが日本における損害保険の始まりとされていますが、現在の保険制度についてはそこから発展したものではなく、明治時代を迎えてから欧米で発達していた保険制度を基にして発展しています。

損害保険を日本人が初めて業としたのは、1869年といわれています。
そのときは税関の保税倉庫内貨物の火災損傷に対する請負だったのですが、その後は日本で初めての海上保険が1879年に誕生し、次いで日本で初めての火災保険会社が1887年に誕生しました。

保険といえば、現在では各社が様々な特色を持たせ、保険料の安さや保障内容の手厚さ、特別な割引サービスなど、色々な宣伝が行われています。
これから保険に加入しようと思っても、どれがいいか悩んでしまう人は多いでしょう。

このように、各社で色々と特色を出せるようになったのは、保険料率の自由化があったからなのですが、実はこの自由化が行われたのは1998年で、今からほんの20年前のことなのです。

それでは、それまでの間の保険はどうしていたのかといえば、損害保険に関しては損害保険料率算出機構によって火災保険や自動車保険の料率が決められていたため、どの会社でも同じ料率で販売しなくてはいけなかったのです。

料率が同じということは、保険商品の価格が決定してしまうことになるので、各社とも特色を出すことができず、同じような商品を売ることしかできなかったのです。
しかし、保険料率が自由化できるようになったことから、保険会社は自社の特色を持たせた損害保険を販売できるようになり、顧客も保険を検討できるようになったのです。

保険の内容も、それ以降様々な形を取ることができるようになりました。
現在の保険の形や、これからの保険の変化について考えてみましょう。

ニーズとともに変化していく保険

損害保険は、損害に対する保険なのでその適用される範囲は幅広く、ニーズによってその内容はどんどんと変化していきます。
現在の特色ある保険としてはどのようなものがあるか、考えてみましょう。

旅行の最中に負ったケガや病気、盗難等に備える旅行保険は有名で、加入する人も多いでしょう。
また、最近ではクレジットカードの契約に付帯していることもあります。

旅行に関する保険としては、それ以外にも天候によって旅行計画が台無しになった時に旅行代金が返金される、お天気保険というものがあります。
また、旅行やイベントのチケットをキャンセルせざるを得なくなった時に、キャンセル料やチケット代を還元してくれる保険もあるのです。

電車などで、痴漢の被害に遭ってしまった人や、痴漢をしていないのに冤罪をかけられてしまったりする人もいるでしょう。
そんな時に備えて、置換冤罪保険というものもあります。

この保険では、痴漢に遭った時や冤罪をかけられた時に、弁護士に依頼できるヘルプコールが付いています。
こうした保険に加入していると、当事者となった時も冷静に対処することができるようになるでしょう。

登山が趣味の人の中には、遭難してしまった時などに備えて山岳保険に加入する人も多いでしょう。
これは、高額となる捜索費用や救援費用を補償してくれる保険で、いざという時でも安心して助けを待つことができます。

最近誕生した保険としては、ドローン保険というものもあります。
ドローンによる事故なども多数報告されていますが、本体の損傷や操作ミスによる賠償などが生じた時に備えた保険です。

ペットを家族のように扱う人も増えたことで、ペット保険なども盛んになってきています。
ペットのケガや病気による治療費などを補償してくれる保険で、健康保険が適用されないために高額となりやすいペットを心置きなく治療できます。

宇宙開発が進む中で、人工衛星を対象とした保険なども登場しています。
また、介護を必要とするようになった時に補償を受けられる介護保険などもあり、その時代に応じたリスクに合わせて新しい保険が登場しています。
今後も、新たなリスクの登場に応じて新しい保険が登場していくことになるでしょう。

まとめ

損害保険というのは古くからあり、今もなお時代に応じてその形を変化させ、ニーズに合わせて新しい保険が生み出されています。
海上保険を中心としていた損害保険が、今では生活やビジネスの中に生じる、あらゆるリスクに対応したものとなりつつあるのです。
これからも、生活やビジネスはどんどんと変化を遂げていくでしょう。
その中で新たに生じるリスクに備えて、損害保険の加入を考えていきましょう。