軽減税率について考える

消費税が増税され、これまでの8%から10%となるのに伴って、軽減税率制度も同時に実施されることになっています。
一部の品物にかかる消費税が軽減されるという制度なのですが、具体的にはどういうことかわからない、という人もいるでしょう。
この制度について、改めて考えてみましょう。

どんな制度なのか

そもそも、軽減税率というのはどういう制度なのでしょうか?
この制度の概要と、その対象となる商品はどれになるのか、あらかじめ知っておきましょう。

軽減税率というのは、消費増税の後でも、一部の商品に対する消費税は8%のままにするという制度のことです。
これまでの増税は、すべての品目に対して同一の税率で移行してきたため、少し戸惑うことになるかもしれません。

消費税の増税は、財源を確保することを目的として行われます。
しかし、低所得者と高額所得者に同じだけの負担を増やしてしまうと、高額所得者は余裕があるので問題ないかもしれませんが、低所得者の場合は生活に大きな影響を受けてしまいます。

目的としては、低所得者の負担があまり増えないようにすることです。
そのため、生活に必要なものの中でも必要最低限と思われるものに対してはこの制度が適用され、贅沢品については通常の税率が適用されることになります。

8%の据え置きとなるものには、飲食料品、および飲食料品の譲渡、新聞の譲渡があります。
しかし、これがすべて無条件に適用されるわけではないというのが、この制度を複雑にしています。

飲食料品のうち、この制度が適用されるものとしては、まず精米や野菜、精肉、鮮魚、乳製品、パン類、菓子類などが当てはまります。
また、食用の氷やミネラルウォーターも対象となります。

しかし、家畜用の動物や鑑賞用の魚、保冷を目的とした氷やドライアイス、水道水については適用されず、10%になってしまうのです。
この品目は、飲食料品とはみなされないからです。

酒類にも違いがあり、甘酒やアルコール分1%未満のみりん風調味料、ノンアルコールビールは8%のままですが、ビールやワイン、日本酒、みりん、調理酒などのアルコール類は10%となってしまうのです。
特に、みりん風調味料とみりんの違いが混乱するかもしれません。

飲食料品の譲渡も、区別が難しいところがあります。
8%のままになるのが、テイクアウトや出前、学校の給食や有料老人ホームで提供されている食事、ホテル、旅館などの宿泊施設の客室にある冷蔵庫内の飲料、果物狩りで収穫した果物を購入する場合です。

対象とならないのが、レストランでの食事、および出張料理や屋台で購入する食事、社員食堂や学生食堂などでの食事、ホテルなどの宿泊施設でのルームサービスです。
果物狩りでは、収穫して購入し、持ち帰る場合はこの制度が適用されますが、園内でそのまま飲食する場合は対象となりません。

新聞は、週2回以上発行されている定期購読の新聞はこの制度の対象となりますが、電子版の新聞やコンビニなどで販売されている新聞は該当しないのです。
このように、似たようなものであっても対象となるもの、ならないものがあります。

また、飲食店の中にはファストフード店を始めとして、テイクアウトとイートインを選べるお店もあるでしょう。
この場合、イートインとテイクアウトのどちらを選ぶかで税率が異なることになります。

また、お店によっては一緒にアルコールを頼めるところもあります。
この場合、店内で飲食するのであればすべて10%の税率となりますが、持ち帰る場合は料理が8%、アルコールは持ち帰る場合でも10%となります。

果物狩りを提供している果樹園では、入園料に飲食分や持ち帰り分が含まれていることがあります。
この場合、入園料の一部とみなされるので、果物を持ち帰った場合も園内で飲食した場合も税率は10%になります、

しかし、収穫した果物の持ち帰り料金は別途となっている場合に限り、この制度の8%が適用されることになるのです。
これは、通常の飲食料品と同様に見なされるからです。

この内容を聞いて、すぐに理解できる人は少ないでしょう。
導入してからしばらくの間は、色々と混乱することが考えられます。

スーパーなどでも対策が必要

スーパーなどの小売店は、この軽減税率の影響を最も受けることになります。
店内に、対象となる商品とならない商品が混在しているからです。
その区別をするために、POSシステムを更新する必要もあります。

そして、顧客が混乱しないように、値段の表示にも工夫が必要となるでしょう。
これまでは、単に商品の本体価格と課税後の価格を提示しているだけでした。
しかし今後は、さらにこの制度の対象となる品物とならない品物で、表示方法を変更するなどの工夫が必要となります。

また、これまではお酒のコーナーに通常のビールとノンアルコールビールが並んでおかれていたり、調味料のコーナーにみりんとみりん風調味料が並んでいたりしましたが、こういった陳列も変更しなくてはいけないかもしれません。

とにかく、顧客にとってわかりやすいようにしなければ、この制度が適用される品物がわからない人は混乱してしまいます。
税率が違うということをわかりやすくするために、工夫していかなくてはいけません。

スーパーには、おまけがついたお菓子も売られています。
これは、この制度が適用されるものとされないものに分かれてしまい、1万円以下で食料品の部分が価格の3分の2以上を占めている場合のみ適用されます。

サプリメントについては、栄養機能食品や特定保健用食品であればこの制度が適用されますが、医薬部外品及び医薬品は適用されません。
この区別も、はっきりとさせる必要があります。

外食産業でも、混乱が起こることは間違いないでしょう。
例えば、ハンバーガーショップではイートインとテイクアウトの税率が異なるので、レジを打ち間違えることも増えてしまうでしょう。

また、顧客が注文してからテイクアウトを選択したのに、やっぱり食べていきますと言い出した場合はレジを打ちなおさなくてはいけなくなります。
また、テイクアウトといったのに店内で袋を開けて食べ始めた場合はどうするか、という対策も考えなくてはいけません。

これまでは、同じ価格なのでそんなことを気にしなくてもよかったのですが、テイクアウトのほうがイートインよりも安くなるのであれば、おそらくテイクアウトといって店内で食べる人も現れるでしょう。
それを咎めなくてはいけないのか、それとも見て見ぬふりをするのか、というお店側の姿勢も問われることになります。

この制度が適用されると、店員側にも研修が必要かもしれません。
とにかく最初は混乱することも多くなるので、トラブルに備えておく必要があるでしょう。
この制度は一時的な措置と考えられているものの、対応はきちんとしておく必要があります。

まとめ

消費税の増税により軽減税率も始まる予定となっていますが、同じような物であっても税率が異なるなど、とにかく複雑な部分があるので、特に販売する側は注意しなくてはいけません。
価格の提示についても、税率が異なる商品がわかりやすくなるように、工夫していく必要があるでしょう。
将来的にはすべて10%になる予定ですが、その時期は未定なのでそれまでの間トラブルとならないように、対策はしっかりと行いましょう。