株主至上主義からステークホルダー資本主義へ見直しとは?

経営戦略

中には、コロナ禍をきっかけに、成長した企業もあります。
それには社会貢献を経営に取り入れたことが関係しています。
こうした変化は、企業にどのような影響を与えているのでしょうか?
今回は、企業経営がステークホルダー資本主義への見直しが行われている理由を、解説します。

株主至上主義とステークホルダー資本主義

企業の経済活動は、利益を追求するものだと考えるのが主流でした。
しかし、コロナ禍の発生により、単なる利益追求では生き残れない時代が到来したのです。
その際に注目を集めたのが、ステークホルダー資本主義になります。

まずは、従来から存在していた株主至上主義の基本知識と踏まえて、2つの在り方を確認しましょう。

・株主の利益をメインに考える株主至上主義
・利害関係者との関係を重視するステークホルダー資本主義
・日本で注目された理由

自社経営の方向性を見直す考え方の1つになりますから、その違いをよく理解するようにして下さい。

株主の利益をメインに考える株主至上主義

株主至上主義とは、企業経営の目的が株主の利益を確保することにある考え方になります。
利益追求のための行動は、商品やサービスの積極的な提供だけではありません。
利益追求は、企業内でも突き詰めることができるのです。

例えば、人員削減を行ったり、市場への規制緩和を働かせたりすることが挙げられます。
このように利益追求がしやすいような環境調整を行うことが、この考え方では肯定されるのです。
これは、アメリカで主流とされており、国家よりも大きな企業が登場する要因になっています。

しかし、この考え方の根底には、企業経営に関わる従業員や取引先を犠牲にする形で成果を上げるシステムが潜んでいます。
そのため、企業全体で利益を享受するというよりは、株主のような一部の人だけが得するシステムになっていると言わざるを得ません。
以上のような経緯から、長期的な企業の発展を妨げてしまうリスクがあると言われていたのです。

これでは、企業が成長したとしても、常に息切れしている状態で経営しているようなものです。
より良い形で、企業の成長を望む方法だと言えません。

利害関係者との関係を重視するステークホルダー資本主義

そこで注目されたのが、企業の利害関係者(ステークホルダー)との関係性を重視して企業経営を行う考え方です。
確かに、資本主義の根本には利益追求が欠かせませんが、それが実現できるのは企業の力だけではありません。
そこで働く従業員や、取引先、地域といった様々な人との関わりがあるのです。

このようなステークホルダーなしに、経済活動が成り立っているとは言えません。
それらの人々に貢献することが、経済活動をしていく上で重視されるのです。
単純に利益を追求すると考えても、従業員や企業の関係者にプラス要素があるのとないのでは、企業イメージに違いが出てきます。

こちらの考え方で経営している企業ほど、人や地域を大切にしていると考えられるのは当然のことでしょう。

日本で注目された理由

ところで、日本でステークホルダー資本主義が注目されているのは、日本人の商売人気質が関係しています。
多くの企業では、利益追求を主とするだけでなく、お客様に喜んでもらうことを第一に考えて経営を行っています。
これは、企業の規模を問いません。

日本で昔から尊重していた考え方は、ステークホルダー資本主義と合致する点が多いのです。
そのため、経営理念として受け入れやすく、積極的に取り入れていると言えるでしょう。
また、経営理念の共感性の高さだけが、注目された理由になりません。

近年は、SDGsを組み込む企業が増えており、利益追求だけでなく社会問題や課題への解決も企業の役割として認識されています。
単に利益を追い求めているだけでは、社会的な立ち位置を確立できない時代になったのです。
この動きは、世界中で見られており、経営の舵取りの変更を行った経営者も少なくありません。

日本でも、同様の動きが見られているのです。
そう考えると、いつまでも利益ばかりに注目している経営は、時代遅れであることが分かります。
これが、見直しされている最大の理由になるのです。

ステークホルダー資本主義への見直しで変わること

ステークホルダー資本主義へ見直しをすることで、企業には社会的な変化が見られます。
社会問題へのアプローチをすることは、企業のイメージアップに繋がります。
さらに、現在の社会問題の解決を促すことになりますから、社会全体を通してメリットになるのです。

そして、見直しで変わることはもう一つあります。
それは、働きやすい環境が実現できることです。
社内環境の調整は、どの企業であっても重要課題になります。

経営理念の変化によって、簡単に変化するものなのかと疑問に思われるのは当然です。
ですが、ここでステークホルダー資本主義の考え方をおさらいしてみましょう。
この考え方は、従業員等の企業に関わる利害関係者と良好な関係を築くことで、企業経営を行っていきます。

その際に、誰かを酷使したり、蔑ろにしたりしてはいけません。
従業員の待遇や働き方の改善も、立派な理念の一つになるのです。
そもそも、この考え方は企業に関わる人たちと良好な関係があることが前提になります。
関係が悪化していると、いくら努力しても経営自体に成果が出ません。

このように考えるのは、資本主義における格差問題の解消にあります。
資本主義は、利益を出せる人は成功する反面、資本家と労働者の間で賃金格差が生じてしまうデメリットがあります。
この問題は、現在に至っても中々解消されることがありません。
そして従来通りの資本主義では、安定した企業経営が実現できません。

そのためにも、良好な関係作りの一つとして、働きやすい環境への調整が行われているのです。
企業の成功は、経営者一人だけで成り立ちません。

地道に業務に努めている従業員や取引先、その他大勢の人のおかげでもあるのです。
単に働き方を変えなければならないより、意味のある変化を考えるようにしましょう。

まとめ

日本企業は、ステークホルダー資本主義の下、変わりつつあります。
従来型である株主にとっての利益を追求する考え方では、企業に関わる全ての人たちがついてきてはくれません。
また企業の生き残りだけでなく、新しいビジネスチャンスに気付かせてくれる考え方でもありますから、是非見直しをすべきです。
今企業が変われるかどうかは、コロナ禍以降の生き残りにも関わりますので、見直しをする良いタイミングだと考えましょう。