食品の製造販売業における食品加工作業のリスクアセスメント

食品を製造するにあたって、食品加工作業は必要不可欠な作業です。職場における労働者の健康と安全を確保するために、平成17 年には労働安全衛生法が改正となり、安全管理者を選任しなければならない業種の事業場に対する危険性もしくは有害性等の調査の実施と、その結果に基づいての措置を講ずることが規定されています。

食品製造業の労災事故の状況
平成22年のデータによると、休業4日以上の労働災害における死傷者数は116,733人。この中で製造業が最も多く占めており、24.5%(28,643人)でした。
さらに製造業のうち、食料品製造業は29.2%(8,369人)で、食品を調理・提供する飲食店でも4,021人の死傷者が出ています。
小売店業であるスーパーなども食品加工作業がある中で災害が発生していることが想定されます。食品加工作業での労働災害の特徴は、転倒、機械への巻き込まれやはさまれ、包丁や器具での切れやこすれなどがあげられます。
労災事故の例
起因物:包丁
事故の型:こすれ、切れ
災害状況:かぼちゃを切るため、包丁を上から入れて体重をかけたところ、かぼちゃを押さえていた左手が滑り刃先で指を切る
起因物:成型機
事故の型:はさまれ、巻き込まれ
災害の状況:おにぎり成型機の稼働中、円盤の中で具材が詰まってしまったため、急いで取り出そうと安全カバーを慌てて外したところ指を入れてしまい切断した
起因物:階段
事故の型:転倒
災害の状況:ウインナー充填職場で充填作業中、足元に落ちていた脂片で滑り転倒して負傷した
起因物:フライヤー
事故の型:火傷
災害状況:フライヤーの清掃の油を抜きの際に、カス受けのアミを落としてしまい油の跳ねで火傷をした
有害性のリスクアセスメントとは?
リスクアセスメントとは、作業現場に潜む危険性や有害性を特定し、そのリスクによって発生する労働災害の重篤度と発生の可能性を組み合わせたリスクの見積りと、リスク低減措置の検討結果を記録するといった流れによる安全衛生管理手法です。
労働災害を防止するため先取り型の手段で、既に発生した労働災害を教訓として発生後に行う対策とは異なった取り組みを実施します。
自主的な安全衛生対策を
これまでも労働者の安全や健康問題が起きないための事業者が行うべき措置義務が法令では定められています。この法令は過去の災害を教訓に作られた最低基準であるといえるため、被害が実際に発生しなければ規制は実施することができないといった問題がありました。
措置義務を守るだけでは対策は後手にまわってしまい、作業工程が多様化すること、さらには設備や原材料、化学物質などの多様化によって安全衛生対策が万全なものではないことがわかってきました。
このためそれぞれの事業場での作業の実態や特性を的確にとらえ、安全衛生対策を自主的に実施することが求められています。