従業員の健康管理からみる経営戦略

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高齢化社会が進む日本では、生産年齢人口(15歳から~64歳)の減少が進み慢性的な人材不足となっています。厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」によると、2017年6月時点の有効求人倍率は1.51倍となり、43年ぶりの高水準に到達しました。
こうした人材確保が難しい状況の中、従業員の高齢化も着実に進んでいるのではないでしょうか。従業員の高齢化が進むことで懸念されるのは、従業員の病気等の健康リスクにおける生産性の低下です。人材確保が難しい中、従業員の健康維持に積極的に関わっていく事で、安定した経営環境に繋がっていくと考えられます。

「人」の課題
最新の求人倍率からもわかる通り、人材の確保は難しく中小企業の経営者の約半数は、人材が不足していると考えています。人材確保のための手段として一般的なのは採用ですが、採用活動は企業にとってもコストがかかり、人材を確保できても給与・各種社会保険料の費用負担が発生する為、採用は慎重にならざる得ない側面もあります。
新卒採用においては、学生の大手志向に伴い希望通りの人数を確保できている中小企業は全体のごく一部に限られているのではないでしょうか。

どのように人材を確保すべきか?
株式会社ディスコ「2016年度就職活動モニター調査結果」より、
中手企業を受けた学生の理由上位3までみてみると
① やりたい仕事に就ける
② 会社の雰囲気がよい
③ 志望業界の企業だった   となっています。
逆に、中小企業を受けていない理由上位3をみると
① 給与・待遇が良くない
② 安定性に欠ける
③ 福利厚生が不十分 となっています。
中小企業の職場環境にマイナスのイメージをもっている学生が多いのかもしれません。
これらの不安を払しょくし、従業員が働きやすい環境を整えている会社という事が伝われば、多くの学生を集められるかもしれませんので、人材を確保するためには、自社の魅力を社外に発信していくことも重要なのかもしれません。

中小企業の強みとは?
人材確保のためには自社の魅力を社外に発信することも重要。と考えた時、中小企業の魅力や強みはどこにあるのでしょうか?
中小企業庁「中小企業白書2009年版」によると上位3位が
① 経営者と社員・部門間の一体感・連帯感・・・・24%
② 個別ニーズにきめ細かく応じる柔軟な対応力・・22%
③ 経営における迅速かつ大胆な意思決定能力・・・18%  となっています。
全国には様々な分野で活躍する中小企業が多く存在します。中小企業の特徴は、経営者の事業への熱い想いや少数精鋭の人材であり、組織の一体感が事業を維持・成長させるにあたっての重要とも考えられます。大手企業が参入しない分野にサービスや商品を集中することで、中小企業の強みを追求することも重要な選択肢のようです。

少数精鋭が故の課題
総務省統計局「労働力調査」によると、労働力人口の平均年齢は1970年が38.4歳だったのが2015年では45.8歳となっています。
従業員の高齢化が進むことで心配されるのは、従業員の健康状態ではないでしょうか。
平成25年の厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査の概況」の年代別通院者率によると、
40代27.3%、50代41.9%、60代57.7%と、年代が高くなるにつれ通院者も多くなっている事がわかります。
慢性的な人材不足に加え大手企業と比較すると、中小企業の従業員の業務範囲は広いため、病気等で長期休暇を余儀なくされることは、企業にとって大きな損失とにつながります。
経営者としては人材確保の課題とともに、従業員の健康維持も重要な課題と考えられます。

中小企業特有の健康問題
従業員の健康管理という点では「健康診断の実施」が一般的だと思います。大手企業での一般健康診断の実施率・受診率は概ね100%に近い状況対して、従業員数が100名以下になると徐々に実施率・受診率は減少し、30名以下の企業になると大手企業と10%近い差があります。
本来従業員数が少ない企業にとって、従業員が1人でも欠ける損失は大きいため、積極的に健康管理を促すべきだと思いますが、実際は業務量も多く健康診断を受診する時間がなくなり、ついつい後回しにしてしまうのが実態なのかもしれません。

メンタルヘルス対策の実情
近年では、うつ病などのストレスを抱える従業員が社会問題となっています。
厚生労働省は、会社におけるメンタルヘルスケアの検討を進め、2014年6月に「労働安全衛生法」を改正し、従業員のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐために、2015年12月からのストレスチェック制度の実施が、会社に義務づけられました。
対象は、従業員(労働者)が 50人以上で、50人未満の会社は努力義務となっています。従業員300名以上の企業の場合、7割がメンタルヘルスに対する社内教育を実施しているのに対し、20~300名規模では2割程度にとどまり、20人以下の中小企業においては、ほとんど対策が行われていないのが実情です。
50名以下の企業は努力義務のため、実施については任意ではありますが、長時間労働を理由にうつ病を発症したという理由で、労災認定を受けた上で企業に賠償責任を訴えるケースもあります。メンタルヘルスの対策を企業で実施していれば、企業としても弁解の余地もありますが何も対策を講じていない場合、不利な状況になるのは容易に想像できます。中小企業にとって損害賠償リスクの準備をしていない場合、倒産の危機に追い込まれることも考えられますので注意が必要です。

健康経営への取り組み
こういった背景から経済産業省や商工会議所を中心に啓蒙している「健康経営」への取り組みに関心が集まっています。現在は主に大手企業、特に上場企業を中心に健康経営の認知度は高く、健康経営の取り組みの評価によっては融資条件が特別に設定されるなど
政策・法制度による後押しも進んでいます。
経済産業省では、ある一定の条件をクリアした大規模・中小規模法人には「健康経営優良法人」として認定・公表する制度をスタートしています。
認定を受ける事でホームページや名刺に記載することができるようになり、国から認定されたホワイト企業として対外的に発信することが可能になります。
健康経営を積極的に取り組みということは、従業員にとっては働きやすい環境が整備されることになりますので「ホワイト企業」として認知され、採用が有利になると考えられています。

中小企業こそ健康維持増進を
少数精鋭の人材が大切な資源である中小企業において、従業員の健康維持増進は重要です。従業員が不健康な状態で働いたり、病気や怪我で長期の休暇を取らざる得ない状況になると、周りの従業員の負担が増えたり、新たな人員の確保が必要になります。
結果、生産性の低下やコスト増加の原因ともなります。
慢性的な人材不足による人材確保が難しいことも考えると、今働いている従業員の健康を維持・増進することは、作業の効率化・生産性向上・社外的評価の向上・休職や離職の防止などの効果が期待できることから、安定した企業活動に貢献できます。
健康経営の正式な認定を取得する為には、コンサルタントなどの有料対応が必要になりますが、生命保険・損保会社などでは従業員の健康維持・増進のモデルケースを無料で紹介してくれるケースもあります。
従業員の健康維持・増進することを経営者が率先してメッセージをだしていくことは、従業員にとってもポジティブに受け止められるだけではなく、従業員が健康で仕事ができるということは、長期に渡った経営戦略が描けることに繋がります。
目先の利潤追求だけではなく長期的な視点で経営戦略を考えることも必要だと言えるでしょう。

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