経営に関するリスク/プライバシー侵害

私生活上の事柄に対して、みだりに公開されない法的な権利と保障を「プライバシー権」といいます。
プライバシー権は人格権の1つであり、法的に保護されているため社会的評価の低下に関係なく、侵害した場合には民法上の不法行為として損害賠償などの対象です。


労働者のプライバシー保護の重要性
企業の使用者が労働者のプライバシーを保護することも重要で、労務遂行にかかわりのない私的領域にまで干渉すること、私生活に関係することをみだりに第三者に開示するといったことはプライバシー侵害行為となります。

・私的領域への干渉とは?
具体的には労働者の私生活においての行動まで不当に介入や制約することなどです。
過去の判例では会社の取引先だった家主と賃借人の立場だった従業員間でのトラブルについて、従業員に家主と和解するように上司が強要したケースが違法と判断されています。
また、思想調査のための尾行や監視なども該当します。
プライバシーとして保護されるもの
個人情報の中でも一般人を基準としており、通常他人に知られたくないと感じるものが保護の対象となります。
情報通信技術が発展し、個人のプライバシーを重視する意識の高まりなどを背景に、雇用関係においてのプライバシー保護が重要な課題と言えるでしょう。
個人情報保護法が適用される事業主の場合には、労働者の個人情報についても同法の規制に従って管理する必要があります。
プライバシー保護の法的な位置は?
プライバシーの保護について法的な位置づけがどこになるかが問題です。使用者による労働者のプライバシーの侵害行為は、民法上の不法行為法となるので損害賠償責任を負うことになります。
さらに使用者は労働契約上の付随義務として、労働者のプライバシー保護の義務を負います。
会社には不法行為責任ではなく債務不履行責任が生じるとも考えられ、どちらにせよ使用者は損害賠償責任を負うでしょう。
どこまでがプライバシー侵害?
労務遂行やその過程の中で使用者が権利を行使すること、人事管理を行う上での措置などでプライバシー侵害行為となるものなどにも注意が必要です。
例えば私物調査や身体検査などは、業務を行う上の必要がある行為だとしても労働者のプライバシーの侵害にならない方法で行う必要があります。
使用者の行う所持品検査なども合理的な理由に基づいて、一般に妥当とされる方法と程度で実施されることが重要になるでしょう。
また、性同一性障害の労働者が就労する際に異性の容姿だったことを服務命令違反とされ懲戒解雇された過去の判例では、異性の容姿をした労働者を就労させることが業務遂行に著しい支障をきたすことや企業秩序を乱すことにはならないとして無効になったケースもあります。
労働者のプライバシーを侵害しないこと
企業としては知らない間に労働者のプライバシーを侵害していたということのないように、どこからどこまでが侵害に該当するのか把握しておく必要があります。
線引きが難しいという場合は過去の判例などを参考にし、損害賠償責任などを負うことのないように努めることが重要です。