地震で被災した地域の企業のリスク対応とは?

東日本大震災から5年が過ぎ、九州や沖縄でも南海トラフ地震の危険に注目が集まっている状況です。

インフラ耐震化が進展している中で、地震のリスクから遠いと言われる福岡や沖縄に拠点を移す企業例も増えています。被災リスクが低く、業務継続体制を整備するためには有効だと判断されてのことでしょう。

自治体や企業の取り組み

九州や沖縄の各自治体では、住宅や施設の耐震化を強化しており、福岡県は震災後に木造戸建て住宅の耐震改修を支援する市町村に対して1件30万円の助成を行うことを始めています。

福岡市は2005年に発生した福岡県西方沖地震の際に設定した住宅改修に対する助成制度を刷新し、補助上限額や補助率を引き上げて、その利用件数は震災前の2倍規模にまで増えている状況です。

各県とも住宅耐震化率が向上している状況で、JR九州でも新幹線の線路への脱線防止ガードの設置、駅の柱や橋梁の耐震化などインフラの強度が高まっています。

電力会社への打撃も

震災後には各地の原子力発電所が停止しましたが、九州電力の供給力は綱渡りの水準で企業や家庭は節電という状況になりました。

低コストの原発が停止したことで経営危機を迎えた九州電力は、13年春には電気料金を引き上げました。

鹿児島県の川内原発が再稼働していますが、供給力に余裕は出たもののエネルギーコストが上昇した爪痕は残ったままの状態です。

熊本地震発生時の企業の対応は?

東日本大震災で影響はなかった九州も、大きな影響を受ける地震が2016年4月に熊本で発生しました。

地震の被災地となった九州ですが、被災地では地震発生後は人命安全確保を目的としてほとんどの企業が建物への立ち入り制限を徹底していました。

二次災害を防止することが重要

これは地震発生後の早い段階で実施し、二次災害を防止するという観点から行われたものです。その間、建物内の設備稼働確認はできませんので復旧の前提である現状把握まで時間がかかります。

しかし人命安全を最優先するという初動対応方針が浸透しているからできる対応で、時間をかけて専門家による耐震診断を実施した企業も数社ありました。

地震による事業継続計画を整備するために

被災地に所在している事業所は操業に影響を与えた物的被害が発生しましたが、長期間の稼働停止を想定した地震による事業継続計画を整備には、震度6弱という揺れの大きさを基準に検討して行く必要があります。

さらに被災地域以外の事業所でも、被災地に所在する企業や事業所から部品などの調達ができなくなったことで1週間以上の稼働停止に追い込まれたという事実もあります。

地震の被災地に該当するか否かだけでなく、それによる影響で稼働できなくなるということについても検討しておく必要があるでしょう。