運送業:運送業で多い交通事故や積み降ろし積卸し作業中の労働災害

トラック運転手が行う仕事は、車を運転するというだけでなく荷物の積み降ろす作業もあります。
いずれにしても肉体労働であり、危険を伴うことから運送業者はドライバーの安全のために、事故防止策やリスクマネジメントを講じる必要があります。


労災認定件数は全業種の中で最も高い?
運送業の労災認定の件数は、全業種の中で最も高い状況です。この理由として、長時間労働に対する違反などがあり、36協定を締結していないのに残業を行わせていたという事例が多く見られています。

・36(サブロク)協定とは?
36協定は、時間外や休日労働に関する届け出のことで、労働基準法の第36条に規定されています。
労働者に法定労働時間を超えて労働させる場合、もしくは休日に労働させるという場合には、事前に労働組合や労働者の代表と使用者とが書面で協定を結んでおく必要があります。
この協定が36協定で、労働基準監督署に届出書を出すことで残業や休日出勤が可能になります。
36協定を締結していない状態の残業は?
届け出を行わずに時間外労働など残業や休日出勤をさせた場合には、労働基準法違反になります。さらに36協定は労働時間を無限にする協定ではありません。
時間延長にも限度基準が設けられていますので、一定時間を超えることは認められません。
トラック運転手の拘束時は驚くほど長い?
長時間労働により寝不足や疲れが溜まれば、交通事故を誘発することになります。ドライバー5,000人を対象とした実態調査によると、長距離ドライバーの平均拘束時間は16時間を超えているという結果もあるほど、トラック運転手の労働時間はかなり過酷なものになっています。
拘束時間には運転時間以外の荷物の受け渡しや待ち時間、片付けの時間などがサービス残業として含まれ処理されていることは問題です。
未払い残業代が請求されれば、多大な出費が経営を圧迫することにもなりかねません。
事例でみるトラック運転手の労働災害
実際に起こってしまった労働災害は交通事故だけでなく積み降ろし作業中にも多く起こっています。
荷台での作業中に落下物が頭を直撃し、脳機能障害を負うことになったという事例や、荷積用のコンテナを荷下し作業中、コンテナの下敷きになったことで脊髄損傷したという事例などがあります。
このような場合には、安全配慮義務違反に基づいての損害賠償請求を会社が受けることになるでしょう。
運送業者が理解しておくべきドライバーの労災事故
トラックへの荷積み、荷降ろしの時に足を滑らせてしまい、荷台から転落してしまうケース、積荷を運搬している時に転倒してしまうケース、フォークリフトが作業者に追突してしまうケースなど、多く見られる事故です。
このような事故が起こらないように、会社では安全配慮義務を守ると同時に、36協定を締結して残業や休日出勤など、労働時間についても再度検討しておく必要があるでしょう。
未払いになっている残業代があれば、のちにまとめて請求を受けた時に多額の費用が発生する可能性があることも理解しておきましょう。