違法な長時間労働における企業名公表リスク

日本の労働行政は、長時間労働が違法な状況で実施されることにより、労働者の健康被害などが多発している事態を重く見ています。そのためブラック企業に対して「企業名公表」を行う構えであることを十分に理解しておきましょう。


過重労働を撲滅するために
厚生労働省は長時間労働対策を推進していくにあたり、平成26年9月には「長時間労働削減推進本部」を新設して「過重労働等撲滅チーム」の編成により過重労働を撲滅するための取り組みを行ってきました。その中の1つとして挙げられる取り組みが「企業名公表」です。

・企業名公表とは?
送検事案でなくても行政指導段階で即時公表される可能性があり、長時間労働に係る労働基準法違反の防止を徹底すること、さらに企業が自主的に改善していくことが目的です。
法違反企業として企業名を公表されることは社会的に大きな影響力を及ぼすため、企業としては避けたいと考えることが通常です。
企業名公表により、マスコミ各社が取り上げることになれば企業が受けるダメージはかなり大きいと言えるでしょう。

・企業名公表をされないために
企業名が公表されないためには、長時間労働をなくして労働時間、休日、割増賃金など、様々な労働基準法を遵守する体制の構築が必要です。
労働時間の具体的な管理方法は?
長時間労働の実態が確認できていなければ安全配慮義務は履行できません。そのため始業や終業時刻を適正な方法で記録することが必要です。
時間外労働や休日労働のための労使の取り決めとして36協定がありますが、企業と労働者の間で締結されていることや労働基準監督署への届出は最低限必要です。
管理職や社員に36協定の内容を周知した上で、時間外労働は36協定の範囲内であることを意識させることも必要です。
限度時間を超えないためにも、一定時間に到達した時点で警告するといったことも必要になります。
割増賃金の支払体制の整備は十分?
年俸制の場合には残業代の支払いがないといった割増賃金に対しての勘違いなどにより、気が付かないうちに法令違反になっているケースもあります。
年俸制であっても、労働基準法で定める労働時間を超えた労働の際には、時間外労働として割増賃金を支払う必要がありますので注意しましょう。
労務課題について再度確認を
中小企業は「企業名公表」の対象からは除外されていますが、大企業と同じように労働者の働く環境を守ることは必要です。労働者の働く環境を守ることは、企業を守ることにも繋がります。
長時間労働によって企業が抱えるリスクや労務課題は様々です。現状をしっかりと把握した上で、違法な長時間労働によるリスクを大きくしてしまわないように、企業は労働環境を整備していきましょう。